GJC News Letter

経理実務ニュースレター

NEWS LETTER VOL.7 GST照合フォーム「GSTR-2A」(後編)

グローバル ジャパン コンサルティング ニュースレター
INDEX
  • 第一章 コロナ禍中で とりとめもないですが
  • 第二章 GST照合フォーム「GSTR-2A」について

Chapter.01
第一章 コロナ禍中で とりとめもないですが

世界における首都圏の基準では、東京圏(1都3県)の人口は約37.5百万人で、全世界の首都圏の中でも最多です。2位がインドのデリー圏で約28.5百万人ですから、断然トップというわけです。日本の人口自体はインドの10分の1にも満たないことを考えると、日本の首都圏は、国土の約3.6%にすぎない地域に全人口の約30%が集まっているというとんでもない一極集中状態にあることがわかります。首都圏整備法による日本独自の定義によれば1都7県が首都圏となり、人口は実に国の約40%にのぼります。これでは、インドにいてもスマホ画面に毎日のように飛び込んでくる日本の新コロナ速報が、だいたい「東京都で○○人新規感染・3日連続で▲▲人超え」などという表現になっていることや、それを見た我々が、「おー日本も怖いなあ(東京も、ではなく)」と思ってしまうことも、当然かもしれません。ここで思いを馳せなければならないことは、少子高齢化の深刻化や若年自殺死亡率の高止まりなどの日本の社会問題の多くは、「実は東京圏で起こっている社会問題」なのではないかということです。

先月(2020年7月5日)に東京都知事選が行われましたが、すでに開催の一年延期が発表されている東京五輪が、前代未聞の同一都市2度目の中止(一度目は1940年:日中戦争に起因する自主返上)となってしまうのか、など、今後もいろんな意味で東京は世界の注目の的となるはずです。

東京五輪といえば、今回の招致を開始したのは、前任の石原慎太郎都知事でした。彼は、それこそ東京都を変えることによって日本が変わっていくのだという大仮説の下、数々の都政改革を試みてきました。大学時代に公認会計士を志した時期もあったせいかはわかりませんが、その実績の一つには、東京都財政の会計基準を単式簿記から複式簿記に変えたというものがあります。その頃の彼の発言がとても面白いですね。「じゃあ、国は何で発生主義、複式簿記を採用して、財政を見直さないんだね?いまだに(江戸商人の)大福帳にも及ばない財政管理をやっているのは、先進国では一つもないし、しいて挙げれば北朝鮮かパプアニューギニアくらいのもんだ。」 。。中央官僚を目の敵にしていましたね、この方。

ちなみに、日本国が本当にいわゆる現金主義と複式簿記で国家財政を管理しているかというと、そういうわけではなく、各省庁別財務書類ではしっかり発生主義と複式簿記が採用されており、それらを吸い上げて作成される国家の財務諸表も2005年度から財務省が開示しています。しかしながら、国会で議決される予算書と、提出される決算書がいまだに単式簿記的なので、ことあるごとに国の予算統制の在り方に疑問が投げかけられてしまうのも無理はありません。

それでは、インドはどうでしょう。公表されている中央政府の決算報告は、いわゆる貸借対照表の形にはなってはいないものの、れっきとした複式簿記の結果である年度ごとの資産、負債、税収入と支出の開示が20年以上続けられています。そんなに小難しい表ではなく、眺めていれば「日本に比べて国債の発行が意外に少ないな」とか、「GST導入年後、税収は増えているんだな」などとわかってきて、結構面白いと思います。一方、純粋な疑問も生まれてきます。例えば、インド中央政府が2020年からの5年間で100兆ルピーのインフラ投資を目標に掲げていることは知っていたものの、最新の公表決算報告(2018年度)に載っているインド中央政府の収入(主に税金)が18.1兆ルピーであることを考えると、どうも実現しそうに思えてきませんし、実際は国家保有資産の売却や、PPP(官民連携)によって、多大な不足分を補ってゆく考えがあるようですが、これも2018年度の決算報告をみると、国の保有資産としての公務サービスや教育・社会福祉サービス・そしてインフラ施設の簿価の総額は、約4兆ルピーにすぎず、いくら売却したところでインフラ100兆ルピー捻出の資源になるとは思えません。そこで、じゃあ別の資金源はなんだろう?と興味が湧いてくるわけです(これについては2020年7月時点でも特に公表されていません)。暇つぶしに、みなさんの出身県や興味のある国が公表している決算書を眺めてみると何か新しい発見があるかもしれません。。

Chapter.02
第二章 GST照合フォーム「GSTR-2A」について

前回概要をご紹介したGSTR-2A申告について、今回のニュースレターではフォームの各項目の内容と、実務上で注意すべき点を具体的な事例を基にご紹介します。

GSTR-2A フォームの各項目の内容

■ 1.自社のGST番号(GST Identification Number)

■ 2.自社名、対象年月

■ 3.GST登録事業者との仕入取引(Inward supplies)

殆どの仕入取引は、仕入先が申告したGSTR-1に基づき、この項目に自動的に反映される仕組みになっています。具体的には、仕入先のGST番号、invoice番号、invoiceの日付、価格、GST率、税抜価格、ITC(Input Tax Credit:仕入税額控除)の金額などが表示されています。但し、リバースチャージ方式によりGSTを納税した場合には、この項目には表示されません。

■ 4.リバースチャージ方式でGSTを納税した、GST登録事業者との仕入取引(Inward supplies)

通常の取引では、事業者が顧客からGSTを預かって政府へ納税しますが、事業者がGSTの納税をできない場合(例えば、輸入取引において事業者がインド国外にいる場合など)にはインド国内の顧客側が事業者に代わって政府にGSTを納税するリバースチャージメカニズム(Reverse Charge Mechanism:RCM)という仕組みが採用されています。
リバースチャージ方式でGSTを納税した場合には、項目3ではなく項目4に表示されます。

■ 5.対象会計年度中に受け取ったDebit Note / Credit Note(修正も含む)

この項目では、仕入先から受け取ったDebit NoteやCredit Noteの金額が表示されます。過去のGST申告額に修正が入った場合にも、この項目に表示されます。

■ 6.GSTR-6の申告内容

Input Service DistributorがGSTR-6を申告した場合、この項目に表示されます。Input Service Distributorとは、各支社で購入した商品・サービスに対するinvoiceを一括で支払っている場合の本社を指します。Input Service Distributorの詳細は、NEWS LETTER VOL.7 GST照合ホーム「GSTR-2A」の ”GSTR-6:“Input Service Distributor”による申告”をご参照ください。

■ 7.GSTR-7・GSTR-8の申告内容

政府機関などが申告したGSTR-7、E-commerce事業者が申告したGSTR-8の申告内容がこちらの項目に表示されます。

GSTR-2Aに関する補足

CGST法(Central Goods and Services Tax Rules, 2017)のRule36, sub-rule(4)が2019年10月9日から施行され、仕入先のGSTR-1申告が不完全で「ITC(仕入税額控除)のミスマッチ」が起こっている場合でも一部の金額をITCとして利用することが可能となっています。これを「Provisional Credit」と呼びます。
Provisional Creditの金額は、GSTR-2Aに表示されている金額の最大10%まで(2019年12月31日までは20%でしたが、2020年1月1日に10%へ改定されました)と規定されています。
例えば、仕入先A社に対して118,000ルピー(取引価格100,000ルピー+GST18%)を支払った場合、支払った18%のGST部分18,000ルピーがITCとして帳簿に計上されます。もし、仕入先A社が当該取引の一部である70,000ルピー部分しかGSTR-1にて申告を実施しなかった場合、そのGST部分である12,600ルピー(70,000×18%)しかGSTR-2Aには表示されないこととなります(ITCのミスマッチ)。この場合、GSTR-2Aに表示されている金額の10%にあたる1,260ルピーを上限にProvisional Creditを追加利用することができます。

事例

ここからはGSTR-2Aに関して注意すべき事例と、その予防策をご紹介します。

■ <事例1:取引先が正しくGSTR−1の税額申告を実施してくれないケース>

日系企業A社は、毎月インド地場のサービスプロバイダーB社の定額サービスを利用しており、B社は、GST 法に従って A社に対して毎月 GST インボイスを発行しています。A社からB社への支払額は毎月変わらず定額でしたので、A社はときどきGSTR-2Aを確認していませんでした。

ある月、A社がGSTR-3Bを申告したあとでGSTR-2Aを確認したところ、B社がGSTR-1の申告をしていなかったことに気がつきました。ITCのミスマッチが起こっている状況です。このようなGST申告時の入力税額にミスマッチが発生すると、日系企業A社にとっては仕入税額控除が利用できない(つまり、支払ったGSTがそのままコストになってしまう)状況となり得るため、それを回避するためには定額取引であっても毎月GSTR-3Bの申告時までにGSTR-2Aを通じて申告内容を忘れずに事前に確認し、状況によっては取引先に対して期限までにGSTR−1の申告を正しく実施するよう継続的に要請していく必要があります。

■ <事例2:取引先が誤って間違ったGST番号を申告してしまうケース>

日系企業C社はインド地場の部品メーカーD社から初めてある商品を購入しました。商品の納入後、D社は GST 法に従って日系C社に対してGST インボイスを発行しました。GSTR-1の期限後、C社がGSTR-2Aを確認しましたが、反映されているはずのITCが表示されていませんでした。
改めて確認したところ、D社から発行されたGSTインボイスに記載されたC社のGST番号が誤っていたことが発覚しました。このようなケースは、日系C社が自社のGST番号を取引先に誤って伝え間違えてしまったり、もしくは、正しく伝えたはずのGST番号を取引先が誤って認識・申告してしまうことにより発生します。C社はD社に連絡し、自社のGST番号が誤って申告されてしまっていることを伝え、GSTR-1申告の修正を依頼しました。初めての取引先にはGST番号を忘れずに伝えるようにし、伝えたGST番号が正しく反映されているかをGSTインボイスで確認する必要があります。

以上

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執筆者紹介About the writter

吉盛  真一郎
吉盛 真一郎
慶応義塾大学経済学部卒。日本・香港・スリランカ・インドにて、日系企業の経理・財務・総務業務に約14年従事。スリランカにてCSR業務から派生したソーシャルビジネスの起業実績もあり、経営者として管理業務実績を数多く積んでいる。2019年よりバンガロールを中心とした南アジアに強い会計・税務コンサルタントとして日系企業のインド進出を支援している。
(第一章 担当)
木内  達哉
木内 達哉
東京大学経済学部卒。IT業界での営業職を経て、経営企画室にて予算管理や内部統制整備、法務コンプライアンス業務、また、財務経理部にて海外子会社の経理業務などを含む幅広い経営管理業務に約10年従事。2018年より南インドに移住し、インド会計・税務コンサルタントとして日系企業のインド進出を支援している。
(第二章 担当)