GJC News Letter

経理実務ニュースレター

NEWS LETTER VOL.7 GST照合フォーム「GSTR-2A」(前編)

グローバル ジャパン コンサルティング ニュースレター
INDEX
  • 第一章 先達はとうに知っていた
  • 第二章 GST照合フォーム「GSTR-2A」について

Chapter.01
第一章 先達はとうに知っていた

昨今のスマートフォンは、AI(人工知能)の世界的権威レイ・カーツワイルをしても20-30年前なら一台数十億米ドルに相当する、といわしめるほどの性能をもっているらしいですね。ただし、彼によれば平均的な人間がどうすればそのテクノロジーを生かして生計が立てられるのか、その解答に社会はまだ至っていないのだとか。

昨今のイノベーションによる企業業績の増大と労働者賃金の停滞がもたらす所得格差の深刻な拡大が生じているということは前回お話しましたが、一方で、ノーベル経済学賞受賞者ダニエル・カーネマン教授の言う、「ヒトの収入と感情的幸福の関係は、年収75,000米ドル(現在のレートで約800万円)までは収入と幸福が比例し、それ以上は比例していかない」説を信じるとすれば、賃金だけで判断するとヒトの幸福度を見誤るということでしょうか、うーむ。

首を傾げだしたところで、インドの偉大な先達の言葉を振り返ってみましょう。まずはマハトマ・ガンディさんです。「私たちの祖先はぜいたくや快楽を遠ざけるように諭し、(中略)命を磨り減らす競争のシステムなど持ってはおりませんでした。各人がそれぞれの職業、商売に従事し、妥当な額を得ておりました。 これは、私たちが機械を発明する術を持たなかったからではありません。むしろ私たちの祖先は、いったん私たちがそのようなものを追い求めるようになると、私たちは奴隷に成り下がり、道徳的品性を失ってしまうと見抜いていたからです。そこで熟慮の末、手足を使ってできることだけをやるように定めたのです。私たちの真の幸福と健康は、手足を適切に使うことにあると知っていたのです。」(※『ガンジー・自立の思想』 参照)

そしてサティヤ・サイババさんです。「動物たちは神を必要としない。本来の使命から逸脱して、道に迷うことがないからである。人間だけが、自分たちが生きていくのに必要な量以上の蓄えをしたり、欲により他者と無為の危害を加え合うことで苦しみ、救いを求めるのである。」(※『サイババ 世界を救う言葉』 参照)

まあ、今までの地球の歴史を1年に換算すれば、人類のそれはたった2、3時間前に始まったばかりですから間違いも犯すでしょう。そういうときは道路に信号があるように、コンピューターや機械の進化のし方させ方に新しいルールや罰則をつくればいいだけだと思うのです。これもインドですが、ケララ州のイワシ漁民の携帯電話による市場革命の話や、さらにケニアのガラケー版フィンテック“M-PESA”による経済革命の話など、ガンディさんやサイババさんが泣いて喜びそうなイノベーションだって実際存在するわけですから、度を越さない未来は、ヒトにとってとても明るいはずです。

Chapter.02
第二章 GST照合フォーム「GSTR-2A」について

さて、前回までご説明をしてきましたGSTR-3B(GST申告を完結させるために、そして、納税を実施するために必要となる申告フォーム)に引き続き、今回からは取引先とGST申告額の照合をするためのフォームである「GSTR-2A」について具体的にご紹介をしていきたいと思います。

1.GSTR-2Aとは?

「GSTR-2A」は、取引先がGSTR-1などのフォームで申告した金額が、自社の仕入税額控除(Input Tax Credit : ITC)としてGST portal(GST申告用のポータルサイト)で自動的に表示される仕組みです。対象期間に購入した商品・サービスの情報が、仕入先のGSTR-1の申告内容から取得されます。GSTR-3Bの申告をする前にGSTR-2Aの内容を確認し、内容に誤りがあれば仕入先にGSTR-1の申告内容を修正してもらうよう依頼する必要があります。GSTR-2Aには、GSTR-1の他に下記のようなGSTR-5~GSTR-8の申告内容も反映されます。なお、GSTR-2Aは読み取り専用の書類で、対象月に様々な支払先から発行された全てのtax invoiceが添付されており、それをダウンロードすることができます。

GSTR-5:非居住者による申告

GST登録をしている非居住者(registered non-resident taxable person)が申告をするときにはGSTR-5を申告します。インドに恒久的施設(※Permanent Establishment : PE)を持たない外国法人がインドに短期滞在しビジネスをした場合などに適用されます。
(※ 恒久的施設(PE)とは、非居住者や外国法人の課税関係を決める上での指標となる概念で、事業を行う一定の場所や代理人として重要な役割を担う者を含みます)

GSTR-6:“Input Service Distributor”による申告

各支社で購入した商品・サービスに対するinvoiceを本社が一括して受け取っている場合、この本社を“Input Service Distributor”と呼びます。
例えば、デリーに本社、ムンバイとチェンナイに支社があるABC社が、本社で全支社分のソフトウェア保守料を支払い、ソフトウェア会社からの請求書を受け取った場合、本社のあるデリーでITCを全額利用することはできません。
なぜなら、ソフトウェア保守サービスは各支社でも利用されているためです。本社はITCを各支社に配賦しますが、この場合の本社がInput Service Distributorとなります。
Input Service DistributorがGSTR-6を申告すると、各支社が利用できる仕入税額控除(Input Tax Credit : ITC)の金額がGSTR-2Aに表示されます。

GSTR-7:GSTの源泉控除

以下の1~4に該当する組織は、サプライヤーへの支払をするときにGSTを源泉控除しなければなりません。(※なお、GSTR−7についてはインドに進出している日系企業が直接的に影響をする項目ではないため、読み飛ばしていただいても差し支えありません)

例えば、支払時に10%控除して、90%をサプライヤーに支払うと、控除された10%がサプライヤーのITCとなります。通常、GSTはサプライヤーが納付しクライアントがITCを申告しますが、GSTR-7だけは立場が逆になります。GSTR-7はTDSと似た仕組みですが、TDSのように法人税と相殺するのではなく、将来のGST outputと相殺することになります。

  1. 中央政府・州政府の部門や官庁(A department or establishment of the Central or State Government)
  2. 地方自治体(Local authority)
  3. 政府の代理人(Governmental agencies)
  4. 評議会の推薦によって中央政府か州政府の通知を受けた人々(Persons or category of persons as may be notified, by the
    Central or a State Government on the recommendations of the Council)

GSTを源泉控除した場合にはGSTR-7を申告します。GSTが源泉控除されたサプライヤーは、GSTR-2AでITCの金額を確認することができます。

GSTR-8:E commerce事業者

AmazonやUberなどのE-commerce事業者は、消費者からGSTを徴収して納税する必要があります。E-commerce事業者がGSTR-8で申告したGSTの金額が、支払者のGSTR-2AにITCとして表示されます。

2.GSTR-2Aの閲覧方法

GST portalへログインし、”return filing segment”へアクセスすると、GSTR-1やGSTR-3Bなどの申告フォーマットの間にGSTR-2Aの閲覧ボタンがあります。

3.GSTR-2Aの期限

GSTR-2Aは申告フォームではないため、GSTR-2A自体の期限はありません。しかし、GSTR-3Bを正しく申告するために、GSTの申告期限前には確認し、誤りがある場合には前もって取引先へ修正を依頼しておく必要があります。

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執筆者紹介About the writter

吉盛  真一郎
吉盛 真一郎
慶応義塾大学経済学部卒。日本・香港・スリランカ・インドにて、日系企業の経理・財務・総務業務に約14年従事。スリランカにてCSR業務から派生したソーシャルビジネスの起業実績もあり、経営者として管理業務実績を数多く積んでいる。2019年よりバンガロールを中心とした南アジアに強い会計・税務コンサルタントとして日系企業のインド進出を支援している。
(第一章 担当)
木内  達哉
木内 達哉
東京大学経済学部卒。IT業界での営業職を経て、経営企画室にて予算管理や内部統制整備、法務コンプライアンス業務、また、財務経理部にて海外子会社の経理業務などを含む幅広い経営管理業務に約10年従事。2018年より南インドに移住し、インド会計・税務コンサルタントとして日系企業のインド進出を支援している。
(第二章 担当)