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最新インド税務の注意点

Vol.021 : カルナタカ州高裁判決!インド非居住者への旅費精算は源泉徴収税の対象外

2020年12月、カルナタカ州高等裁判所は、インドへの出向者に発生したホテル代や旅費のインド非居住者への払い戻しは、技術サービスに対する報酬ではなく、源泉税の対象とはならないとの判決を下しました。

一見、当たり前のように思える税務論点ではありますが、だからこそ日系企業にとって落とし穴になり得る論点でもあります。本記事では、税務訴訟に至った経緯と背景、そして最終的な高等裁判所での判断を踏まえた事例を紹介できればと思います。

1.税務訴訟にかかる背景と経緯

 納税者はインド法人(以下インド社)で、英国のグループ会社(以下UK社)を有している。

  • 英国グループ会社 はインド社との間で、特定のサービスやコールセンターの提供を委託する 契約を締結した。この契約に基づき、インド社はUK社およびその関連会社のポジションを支える高品質なサービスを英国の顧客に提供することが求められていた。
  • インド社が高品質のサービスを提供することを保証し、UK社とインド社の間のアウトソーシング契約を円滑に進めるために、UK社はインド社と以下2つの契約をそれぞれ締結した。
  • インド社が提供するサービスに関するコンサルタント契約、及び、UK 社従業員のインド出向に関する出向契約

上記の事実、背景を踏まえた上で、2004年度にインド社はUK社従業員の出向に際して発生した一定の費用を UK 社に支払いましたが、そのうちの一部は源泉所得税の控除を行った上で給与の払い戻しを行いました。

一方で、残りの費用はホテル代と旅費であり、技術サービス提供のための費用としては扱われないという理由で、当時、インド社による源泉徴収は行われていませんでした。

その後、税務調査担当官(AO : Assessing Officer)は、以下の根拠に基づき、源泉徴収税を控除しなかった残額(ホテル代と旅費)は 1961 年インド所得税法(Income Tax Act, 1961)およびインド・イギリス租税条約に基づく「技術サービスに対する報酬(Fees for Technical Service)」にかかる支払いであると以下の2つの根拠を元に判断しました。

根拠①:インドに出向していたUK社の当従業員は高度技術者であり、UK社はインド社の従業員の一部に研修を提供することに合意していた。

根拠②:「UK社と出向者によるサービスの提供との間には関連性がない」というインド社の主張は、当従業員が UK 社の給与帳簿上にあり、UK 社は技術サービスの提供に関与していたため、当局としてはインド社の主張は容認できない。

その後の控訴審では、カルナタカ州高等裁判所へ達しました。

2.カルナタカ州高等裁判所の判決

まず、高等裁判所は以下の事実を指摘しました。

  1. インド社の事業を支援するサービスを確保するためのインド社とUK社との間で出向契約書を締結していた。この出向契約は、出向者のインド社との雇用関係からは独立したサービス契約を構成していた。
  2. 出向者はインド社から指示された場所で働き、インド社の管理、指示、監督の下で、インド社の従業員に適用される方針、規則、ガイドラインに従って業務を遂行しなければならなかった。
  3. インド社の立場である従業員は、インド社の活動を管理・監督しなければならなかった。

以上のことを踏まえて、高等裁判所は以下のように判断しました。

  • インド非居住者たるUK社が負担した費用の払い戻しのために行われた実費精算については、法律上、源泉徴収の義務はない。
  • 出向者によって発生しインド社が払い戻した費用は、技術サービスに対する報酬の範囲外であるため、所得税法 の第 195 条に基づく源泉税の義務はない。

以上のことから、高等裁判所は、インド社がUK社に支払ったホテル代や旅費の払い戻しはインド所得税法やインド・イギリス租税条約上の技術サービスに対する報酬の性質を持たないため、インド社はUK社への支払いにおいて源泉徴収をする義務はないと判断しました。

3.日系企業に与える影響と今後の対応策

非居住者が経費を支払った際の源泉徴収については、これまでも訴訟の対象となってきました。本判決では、出向者が非居住者に支払ったホテル代や旅費の払い戻しは、技術サービスに対する報酬ではないという判例を確認することができます。

インドではこういった税務訴訟は数多くあるため、論点となった「真の雇用主」が誰であるのかを担保する出向契約書の整備を行ったり、請求時には実費精算であることが明確にわかるように請求書上で“Reimbursement(払い戻し)”などと言う表記と合わせて根拠証憑の貼付をしておくなど、適切な文書化をしておくことが税務調査や訴訟対策として重要だと言えます。

参考:https://indiankanoon.org/doc/39940890/