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インドの会計・税務アップデート

仮想デジタル資産にかかる最新の課税関係

2022年6月22日、インド直接税中央委員会(CBDT: Central Board of Direct Taxes) は、2022年7月1日から適用される仮想デジタル資産に関する所得税法194S条に関するガイドラインを発行しました。この記事では、仮想デジタル資産とそのインドでの課税、および最近のCBDT通知によるTDS控除ガイドラインについて説明します。

 

1. 仮想デジタル資産(VDA : Virtual Digital Assets)とは

所得税法第 2 条第 47 項の定義によると、仮想デジタル資産(VDA : Virtual Digital Assets)とは、インド通貨でも外国通貨でもない、暗号化され た情報、コード、番号、トークンのことを指します。対価の有無にかかわらず交換される価値のデジタル表現です。

簡単に言うとVDAとは、非代替性トークン(NFT : Non-Fungible Token)や仮想通貨を始めとする、ブロックチェーン上で取引されるすべてのデジタル資産の総称です。但しインド準備銀行(RBI : Reserved Bank of India)がインドで導入を予定しているデジタルルピーは含まれません。

 

2. 仮想デジタル資産の譲渡に対する課税要件

CBDT は 4 月 22 日より VDA の課税について所得税法(Income Tax Act)の中に新しい条文として 115BBHを設け、以下のように課税の基準を定めています。

  1. VDA の譲渡により生じる利得は、取得原価を除き、いかなる控除もなく 30%で課税される。加えて、付加税(Surcharge)および教育目的税(Education Cess)も課される。
  2. VDA の譲渡により生じた損失は、他の所得との相殺は認められず、損失の繰り越しも認められない。
  3. 他の源泉から生じた損失はVDAの譲渡による利得と相殺することができない

3. VDAの贈与に対する課税要件

所得税法第56条2項(x)は、財産が公正市場価値(FMV : Fair Market Value)と比較して、無価値または不十分な対価で譲渡された場合の所得への課税を規定しています。FMVと対価の差額が5万インドルピーを超えた場合、その差額は受取人の所得とみなされます。今回の改定では、所得税法 56 条 2 項 (x)で定義される 「財産」の範囲が拡大され、VDA が新しい財産のカテゴリーに含められました。

 

4. Virtual Digital Asset の譲渡に対する源泉税(TDS: Tax Deducted at Source

仮想デジタル資産の譲渡時に源泉徴収を行うため、所得税法に新たに194S 条が導入され、2022 年 7 月 1 日から適用されます。

VDA の譲渡代金を居住者へ支払う者は、その代金に対して 1%のTDSを控除する必要があります。但し、年間累計の取引金額が10,000ルピー以下(個人が支払いをする場合等は一部例外的に50,000ルピー以下)の場合にはTDSの控除が免除されます。もし、194S条に基づきTDSを控除した場合、194-O (電子商取引に対するTDS)または 194Q(高額な物品取引に対するTDS) で税金を控除/徴収する必要はありません。

               

執筆者紹介About the writter

木内 達哉 | Tatsuya Kiuchi
東京大学経済学部卒。IT業界での営業職を経て、経営企画室にて予算管理や内部統制整備、法務コンプライアンス業務、また、財務経理部にて海外子会社の経理業務などを含む幅広い経営管理業務に約10年従事。2018年より南インドに移住し、インド会計・税務コンサルタントとして日系企業のインド進出を支援している。2022年7月に退職。