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週刊インドトピックス

Vol.0135 インド初のスマート製品ブランドArista Vault。日系企業とも取引開始

インド最大のスタートアップメディアであるYourStory社は2023年1月9日付けの報道で、インド初のスマートバッグ(※1)ブランドである「Arista Vault」を取り上げています。

Arista Vault設立の背景

ミラノの私立美術アカデミー、Nuova Accademia di Belle Artiで学んだデザイナーPurvi Roy氏がIndia Runway Weekでハイファッションの秋冬コレクション – Warriors Alley- を発表したのは、2017年10月のことでした。

アフターパーティでは、Krishan Kumar Singh氏や金融専門家のAtul Gupta氏と出会います。Krishnan Kumar Singh氏はPurvi氏と短い会話を交わした後、『そろそろ大衆のために何か大きな役割を果たすようなことをしたらどうか』と提案、そのことがきっかけで、Arista Vaultは誕生したのです。

 

Arista Vaultは、”人々の生活をシンプル、かつ安全にする” ためのコンセプトベースの製品を生み出す革新的なテック企業です。デリーに本社を置き、グルガオン、バンガロール、コルカタ、ゴアにもオフィスを構えています。

Aristaはサンスクリット語で「傷つかない」「最も安全」という意味で、Vaultは「金庫」という意味です。

『私たちがサンスクリット語を名前に選んだのは、私たちが世界に進出しても、そのルーツは常にインドであることを表現するためです。』とPurvi氏は語っています。

 

Arista Vaultの製品とこれまでの実績

Arista VaultはD2C(※2)ブランドとして、インド初のスマートバッグ・スマートウォレットの会社です。これまでに6つの特許を申請し、そのうちの1つは国際特許として公開されています。

インド独自の技術と自社デザインの完璧な融合により、顧客にスマートバッグ・ウォレットを持ち歩くことの贅沢さと安全性を感じていただけるよう試みています。

最初の製品の一つが、盗難防止と紛失防止機能を内蔵したスマートウォレットで、旅行中の大切な持ち物を安全に保護するものでした。

デザイナーとしてのPurvi氏の長年の知識と経験によって編み出されたこの財布は、最高の技術を備え付けると同時に、スリムなシルエットで高級感があり、ギフトとしても最適な製品となっています。そのため、マットな質感の宝石箱のようなパッケージを採用しています。

六角形のロゴの中に電源ボタンがあり、この電源ボタンは誇りと高級感を象徴する見た目となっています。このように、Arista Vaultのスマートウォレットは、財布や持ち物の安全性だけでなく、高級感も兼ね備えているのです。

(Arista Vaultのスマートウォレットの動画はコチラの記事より確認できます。)

 

Arista Vaultのスマートウォレットは、電車やバスのような混雑した場所でも安心して移動できるように、さまざまな機能を備えています。

電源ボタンであるロゴ部分を押すとその機能が起動します。

盗難防止アラーム、内蔵パワーバンク、双方向トラッカー、リモートセルフィー機能、RFID(※3)プロテクションなど、豊富な技術を搭載しています。また、この財布には、携帯電話との双方向接続が可能な20m離隔アラームが搭載されています。この方法では、携帯電話が財布を鳴らすことも、その逆も可能です。この機能は、携帯電話を紛失したり、盗まれたりした場合に特に便利です。

 

このような高度な技術を財布のようなシンプルな製品で実現するには、膨大な研究開発が必要でした。『私たちは、電子情報技術省の支援を受け、Electropreneur park(※4)のインキュベーション施設を現在は、IIITD-IC(※5)のインキュベーション施設を利用しています。私たちは、パワーラボとファブラボという世界有数の2つのラボで仕事をしており、そこには最先端の技術があり、設計、研究、技術統合が行われています。また、専用のなめし革工場と製品デザイン製造部門があり、3段階の品質管理を経て、製品に技術を組み込んでいます』とPurvi氏は言います。

技術やデザインだけでなく、共同設立者はスマートウォレットに最高レベルの安全性を維持することを強く掲げていました。そのため、すべてのウォレットはISO認証を取得し、政府のIT法に準拠したプライバシーポリシーを採用しています。

2019年にAmazonから新興ブランドとしてビューアーズチョイス賞を受賞し、2021年には、最も革新的なブランドの年に贈られる名誉あるStar賞を受賞しました。また、ドイツ、チリ、ドバイなどの湾岸諸国、そして最終的にはアメリカにも輸出し、国際市場に参入することができました。

2022年最終四半期には、6,000 個のスマートウォレットが販売され、2,600 万ルピー(約4,200万円)に達しています。

昨年、同社はドイツに本拠を置くMainStage Angel Networkと英国に本拠を置くPontaq VCから資金調達を行い、インドで数少ないスマートラゲージブランドの1つとなり、大きなマイルストーンを達成しました。

 

新しい分野での地位確立を目指して

Arista Vaultにとって、資金調達は金銭的にも精神的にも大きな後押しとなりましたが、真の旅はこれから始まるとPurvi氏は言っています。

調達した資金は、事業を拡大し、スマートバッグという新しい分野でマーケットリーダーとしての地位を確立するために使われます。そのために、同社は販売モデルとチャネルパートナーを拡大し、Arista Vaultの製品を実店舗モデルで販売している国内のさまざまな都市をカバーするようにしました。また、ゴア州政府のような政府とパートナーシップを結び、スマート製品で旅行・観光分野にも参入しています。

10月にナレンドラ・モディ首相がインドで5Gサービスを開始した際、Arista Vaultはスマート製品を展示した数少ないテック企業の1つでした。また、5Gを実装した製品を続々と発表しています。

今後、Arista VaultはB2Bモデルでスマートバッグ市場で確固たる地位を築きたいと考えています。

そのために、最近、スマートビジネスバッグ、ビジネストロリー、パソコン用バッグ、ファイルホルダーを取り揃えたSwitch2Smartシリーズを発売しました。

これらのバッグは、GPSによるライブロケーションや紛失時の位置情報などの機能を備えており、紛失や盗難を防ぐことができます。

また、携帯電話のスマートチャージ、ジオフェンシング(※6)、アンチスキミングなどの機能も備えています。

 

『家も時計も、あらゆるものがスマートになっている時代です。それなのに、なぜカバンのみ時代から取り残されなければならないのでしょうか?Arista VaultのSwitch2Smartシリーズは、旅行者が荷物の心配をすることなく、自由でいられる贅沢を与えてくれるでしょう』とPurvi氏は述べています。

同社はすでに、DIW 2022 Gift Expoに展示されたB2Bオーダーで売上を上げ始めています。2020-2021年度の売上高は3,590万ルピー(約5,765万円)でしたが、今会計年度では既に1.2-1.5億ルピー(約1.9億〜2.4億万円)を達成し、4倍以上の成長を遂げる勢いです。

Amazon、Flipkart、自社サイトでの販売に加え、昨年のクリスマスシーズンには、ディワリなどの機会に法人向けギフトにも参入し、Bharati Cementや三菱商事などの企業から大量注文を獲得しました。また、最近、米国とアラブ首長国連邦のAmazon.comとの取引を開始しました。

『今年はさらに15の製品カテゴリーを世界的に発売し、インドだけでなく海外でもブランドの存在感を高めたいと考えています。』

 

日本では盗難や紛失を四六時中気にかけている人の方が珍しいかもしれませんが、海外ではそうはいきません。日本と同じように生活をしているとすぐに盗難にあってしまうでしょう。

会社の物品が盗難にあった場合には、セキュリティ面でもかなりのリスクを負うことになります。

海外旅行や海外出張が多い方、また海外駐在している方にとってArista Vault社のスマート製品はそのような心配を軽減してくれる心強い商品となるでしょう。

価格もスマートウォレットが1万円程度、ビジネスバッグが2万円程度とお手頃で、汎用性があります。

既に三菱商事とも取引をしていることから、今後より多くの日系企業とのB2Bビジネスを進めていくことも予想できます。

 

インドに留まらず世界進出していくArista Vault社の今後に期待です。

 

Source:https://yourstory.com/2022/12/technology-innovation-driving-growth-arista-vault-indias-first-smart-luggage-brand

 

Arista Vault:​​https://www.aristavault.com/collections/all

 

※1 スマートバッグ:ガジェットとの親和性が高い鞄のこと

※2 D2C:Direct to Customerの略。中間流通業者を通さずに、自社のECサイトを通じて製品を顧客に直接販売すること。

※3 RFID:Radio Frequency Identificationの略。情報が書き込まれたICタグ・RFタグ(RFIDタグとも言う)と電波などでワイヤレス通信し、情報の読み取りや書き換えをするシステムのこと

※4 Electropreneur park:電子情報技術省の支援のもと、インドのESDMセクターにおける研究開発、イノベーション、起業を促進するための施設
https://electropreneurpark.in/

※5 IIITD-IC:https://iiitdic.in/

※6 ジオフェンシング:地図上にバーチャルなフェンスを設置する技術のこと。特定のフェンスの中に特定のユーザーや特定のモノが出入りした時に、システムからメッセージが届くよう設定することが可能