Vol.0166 アムリトサル:愛と奉仕の黄金都市
アムリトサルは、自己犠牲の精神「セヴァ」を日常生活に取り入れている街として知られています。この精神は、街の中心部に位置するハルマンディル・サーヒブ(黄金寺院)で特に体現されており、誰もが食事を共にできる場所として知られています。この寺院は、シク教の最も重要な霊場で、シク教第4代教祖ラム・ダス師によって1577年に創設されました。建築はヒンドゥー教とイスラム教の影響を受けています。内部には、豪華な金箔で飾られた二階建ての構造と、周囲を囲む人工池があり、この池には癒しの力があるとされ、世界中から巡礼者が聖なる水を浴びにやって来ます。
入り口は四方にあり、あらゆるカーストや信条の参拝者に開かれていることを示しています。ゴハルマンディル・サーヒブは単なる宗教施設ではなく、人類の兄弟愛と平等の象徴とされています。
アムリトサルでのセヴァは、食事の提供、清掃、調理の手伝いなど、様々な形で実践されています。特に黄金寺院では「ランガー」と呼ばれる無料の共同食堂があり、一日に10万人以上が訪れます。このランガーでも、カーストや信仰に関係なく、誰もが食事を楽しむことができます。
また、アムリトサルは歴史的な悲劇の場でもあります。1919年にはジャリアンワラ・バーグでの虐殺があり、数千人の無実の民衆が英国軍によって殺害されました。この事件はインドの非暴力独立運動の象徴とされています。更に、1947年のインド分割によって、アムリトサルは難民で溢れかえるなどの深刻な影響を受けましたが、それにもかかわらず、市民は温かく開かれた心を保ち続けています。
アムリトサルの人々の日常生活におけるセヴァの実践は、単なる宗教的な儀式以上のものであり、彼らの生活の中核をなすものです。この自己犠牲の精神は、他の場所では見られないほど深いものであり、それがアムリトサルを特別な場所にしています。
Source:歴史と慈悲の交差点、アムリトサルの探訪
世界史の授業で習ったアムリトサル事件の現場が、セヴァと呼ばれる精神をもとにした、非常に利他的な文化が根付いている場所だと知り驚きました。
このように、シク教では単なる訓示や指針ではなく日々の実践を説き、それを様々な災禍に見舞われた、アムリトサルで街の文化として体現し、育んでいる点には学ぶべきことが多くあるように思います。
(文責:大森太郎)