Vol.0175 生理とインド社会:尊敬と偏見の狭間にあるラジャ祭り
オリッサ州のラジャ祭は、モンスーンの到来と共に母なる大地の生理と女性性を祝うお祭りです。ラジャは「Rajaswala(生理中の女性)」から派生した言葉で祭りは、オリッサ州の農村部を中心に毎年6月に行われ、農作業や建設活動は3日間休止されます。これは、母なる大地が、女性と同様に生理を迎えて休息が必要であると信じられているからです。この期間中、土を掘る作業は避けられ、大地を傷つけないようにしています。
オリッサで育ったスーマン・シンにとって、この祭りは友人と新しい衣装を着て楽しむ特別な時間でした。3日間にわたる祭りでは、額にティカ(宗教的な印)をつけ、無数のバングルを手首に飾り、ヘナで手を染め、足にアルタ(紅色の液体染料)を塗って楽しみました。母たちは特製のポダピタというココナッツ入りの焼き米ケーキを含む季節の料理を準備し、食事の後には甘いラジャパーン(祭りのおやつ)を楽しみました。男性たちは農作業から解放され、ガンジャパという地元のカードゲームを楽しみ、女性たちと少女たちは花で飾られたブランコに乗り、大地を傷つけないように足を地面につけないようにしました。
しかし、生理にまつわるこうした年中行事は、生理中の女性の現実を反映していません。
2022年のインド公衆衛生研究所がユニセフとオリッサ州政府と共同で発表した報告書では、調査対象の46.9%が初潮前に生理について何も知らず、67.2%が初めての生理を経験したときに恐怖を感じていました。また、74.3%が月経を生理現象として認識している一方で、6.7%が神の呪いと見なしてさえいます。
多くの家庭では月経中の女性に対して差別的な扱いが行われており、別室で寝ることを強制されたり、特定の食器を使わされたりすることがあります。さらに、適切な衛生製品へのアクセスが難しく、多くの女性が布を生理用ナプキンの代用品としており、不衛生な状況に陥ることが多いです。2018年の研究によれば、学校を欠席する少女たちの約28.33%が生理を理由にしており、この問題は依然として深刻です。
ラジャ祭は、本来、女性の生理についての認識を広め、タブーを打ち破るための機会であるべきです。しかし、現実には食事や遊びの祭りにとどまり、教育的な側面が欠けています。
ラジャ祭が真の意味で生理を祝うものとなり、女性が社会から孤立することなく尊厳を持って生きられるようになることを願っています。
Source:祝福の陰に隠れた社会問題
インドでは、女性の教育機会は男性に比べて限られており、特に農村部では顕著です。また、家父長制が根強くあり、女性は家庭内の役割を果たすという考え方が残っています。
ラジャ祭も神聖な女性性を祝うだけで、現実の女性たちにも同じ尊厳と敬意をもたらすものとはなっていません。ラジャ祭が、祭りの文化的側面を尊重しつつ、社会的な意識変革のきっかけなることを期待したいです。
(文責:大森太郎)