Vol.0047 Uberのようなプライシングソリューションが航空業界でも採用?
インド最大のスタートアップメディアであるYourStory社の2020年11 月4日付けの報道によると、航空業界向けにAIを用いて最適なプライスソリューションを提供しているFlyNava Technologies(フライナバテクノロジーズ)が注目を集めているようです。
FlyNava Technologiesの創業者であるMahesh Shastry氏はエミレーツ航空で、IT営業・アカウント部門のマネージャー、また同社からスピンオフして同業他社への事業展開を行う独立事業部門で10年半以上勤務した経験があり、またエミレーツ航空を退職後もNIIT Technologies(※1)の上級副社長として航空業界と密接に仕事をし続けており、航空業界に精通しています。Shastry氏は『世界の航空業界は、特にプライシングソリューションに関して過去40年間ほとんど変化がない』と指摘しています。現在の航空券の価格設定の方法はダイナミック・プライシングと呼ばれており、時間や季節の需要などに応じて航空運賃が変化しますが、その価格は予め定められています。このダイナミック・プライシングの価格設定プロセスにおいて、買い手のペルソナは考慮されません。一方、FlyNava Technologiesの主力商品であるB2Bデータ分析プラットフォームの『Jupiter』では航空券の価格がリアルタイムで計算、提示されます。Jupiterでは目的地、旅行日、エコノミークラスやビジネスクラスなどのカテゴリーなどの情報を入手した後、機械学習を用いて顧客の適性を判断し、乗客に理想的な価格を提示することが可能となります。例えばバンガロールからボストンまでのチケットを旅行の2ヶ月前に予約している人は学生である可能性が高く、ギリギリでチケットを購入する人はビジネスマンである可能性が高いです。Jupiterに採用されている機械学習によって学生だと判断された場合には、少額ではありますが価格の値下げ、預け荷物の容量が自動的に追加され、ビジネスマンが学生と同じチケットを購入しようとした場合には、システムは微調整されそのチケットはブロックされます。そうすることでカスタマイズされたチケットは学生か、似たプロフィールを持つ、チケットを事前購入するカスタマー層にのみ利用可能となり、通常片道15万ルピー(約21万円)を支払うビジネスマンにとって必要以上の割引や付加価値を提供する必要はなくなります。
FlyNava Technologiesは2016年にバンガロールを拠点に設立され、2017年にUAEを本拠とするフライドバイ航空と、2018年に米デルタ航空と最初の大きな契約を結びました。現時点では機械学習をベースとしたJupiterの月額使用料を収益としており、中小航空会社からは年間100万ドル(約1億516万円)、大手航空会社からは年間300万ドル~500万ドル(約3億1550万円~5億2580万円)を得ることを目標としています。創業から3年間の年間収益は3000万ルピー~6000万ルピー(約4230万円~8460万円)を記録しており、2021年には300万ドル~600万ドルの資金調達を目指しています。Shastry氏によるとJupiterは最近保険業界のデータ分析プラットフォームを統合し、個々の顧客のためにカスタマイズされた保険料をリアルタイムで決定することに役立っているようです。
2020年、各航空会社はコロナ渦によって大きなダメージを負っていますが、この傾向はまだしばらく続くことが予想されます。FlyNava Technologiesが提供するUberのような継続的に価格変動するプライシングモデルは航空会社にっとて効率よく収益をあげるために、また顧客にとってもリアルタイムで最適な価格が表示されるWin-Winなサービスとなり得ます。FlyNava Technologiesのイニシアチブが、世界中の航空会社の価格設定に革命を起こすかどうか見所です。
※1 NIIT Technologies:National Institute of Information Technologiesの略。中央情報技術専門学校
Source:航空会社向けB2Bのプライスソリューションを提供するFlyNava Technologies