India Weekly Topics

週刊インドトピックス

Vol.0065 インドスタートアップKachingがつくる新しいリファラルの仕組み

Kachingのビジネスモデル

インド最大のスタートアップメディアであるYourStory社の2020年1月11日付けの報道で、現在エンジェル投資家やファンドから注目を集めているリファラル・スタートアップの『Kaching』を取り上げています。

SNSが流行り始め、個人が自由に発信できるようになり、WOM(※1)がマーケティングの中で重要になってきました。最近ではWOMのほうが評価やレビューよりも信頼性があり、購買決意に与えている影響が強いと言われています。実際にオフラインストアに訪れる新規顧客の80%は既存顧客の紹介や、SNS上の口コミがもとになっています。しかし、オフラインストア側からは、WOMの追跡は不可能で、このギャップを埋めるために2019年後半、チェンナイを拠点とするKachingはビジネスの方向転換に踏み入りました。

アイデアはシンプルで、あなたのソーシャルメディア上の投稿を見た友人やフォロワーがその店に訪れ商品を購入すると、割引を受けることができ、あなた自身も報酬を得ることができる、というものです。具体的には、Kachingと提携しているレストランを紹介し、フォロワーが実際にそのレストランで食事をすると1回あたり100ルピー(約142円)が報酬としてもらえる、というものです。紹介を受けた側も、会計時に紹介者のSNSプロフィールをレジに見せるだけでお会計が20%オフになる、というWin-Winな仕組みとなっています。紹介者はInstagram、Snapchat、Twitter、YouTube、Whatsappを介して提携レストランの紹介をすることができ、プロフィール上にKachingが提供するスキャナーコードを張り付けておくだけで、店側がスキャンし、報酬の対象となります。現在、1店舗あたり月1万ルピーを課金しており、加盟店には、マーチャントスキャナーアプリと売上ダッシュボード、店舗内マーケティング情報、そして毎月ローテーションでKachingに登録しているインフルエンサーが提供され、紹介のフライホイール(循環型のマーケティングアプローチ)が動き続ける仕組みになっています。同社はまた、最低収益保証もしています。紹介プログラムは、加盟店舗が毎月最低50,000ルピー(約70,900円)の収益が得られない場合は、月額の契約料が戻ってくるようです。

 

 

Kachingが目指すもの

同プラットフォームは最近、Swiggy、Bounce、Indiamartの創業者を含むエンジェル投資家やFirst Cheque、LetsVentureなどのファンドからシード資金を調達しました。BounceのCEOであるVivekananda HR氏は『Kachingのリファラルを追跡して報酬を得るソリューションは、飲食店や小売店に大きな変化をもたらすだろう。私は彼らの使命感に基づいたアプローチとわかりやすい価格設定が好きだ。今後の成長が楽しみだ。』と述べています。現在、同社のクライアントには、Zenly(Snapchatシンガポール航空BMWなどが含まれており、『今後6ヶ月間で契約店舗を1,000店舗まで増やすことを目指している』とShiv氏は述べています。

The Global News Wireによると、世界のリファラルマーケティングソフトウェアの市場規模は、2027年までに7億1330万ドルの価値があるといいます。この分野の他のプレイヤーには、SocialChorus、Dynamic Signal、Extole、Influitive、YesGraphなどがあります。

創設者のShiv氏は、『弊社のサービスはインスタグラムの上位500都市、例えば、サンフランシスコ、ロサンゼルス、東京、ムンバイ、マドリードなどに最適だ。本サービスは言語、地理、プラットフォームにとらわれない。コアとなるSaaSの機会だけで、これからの10年は規模を拡大することができるだろう。すべての都市で独自性、商品との関係性が高い最高の「インフルエンサー」を自動的に獲得し、ネットワーク構築を可能としている。これらのインフルエンサーを活用して、オフラインストア、オンラインブランド、アプリ、D2C(※2)企業などのプロモーションに活用したい。』と今後の展望を述べています。

 

インフルエンサーマーケティングは日本でも数年前から流行り始め、多くの企業が自社商品や店舗紹介を著名人やフォロワー数の多いインスタグラマーを介して宣伝するマーケティング方法をとっています。Kachingのビジネスモデルはこのような従来のインフルエンサーマーケティングとは異なり、フォロワー数に関係なく、自らの意思でインフルエンサーとなり店舗紹介をすることができるといった点において、普及スピードが速く、企業側も広告・宣伝費を比較的低く抑えることができるため、今後あらゆる場面で取り入れられるだろう、と感じています。

 

 

※1 WOM:Word of Mouthの略。口コミ。

※2 D2C:Direct to Customerの略。自ら企画、生産した商品を広告代理店や小売店を挟まず、消費者とダイレクトに取引する販売方法。

Source:チェンナイのリファラルスタートアップKaching