India Weekly Topics

週刊インドトピックス

Vol.0111 Zomatoがインドユニコーン企業初となる株式上場を果たす

    インド最大のスタートアップメディアであるYourStory社の2021年7月24日付けの報道で、インド初のユニコーン企業の上場となったZomato』を取り上げています。

    本記事では、Zomatoの前身となるFoodiebayからインドの時価総額上位50社に入るまでのZomatoの進化を追っていきたいと思います。

     

    上場し、インドの時価総額トップ50の企業に

    1株当たり72~76ルピー(約107~113円)公募されたZomatoのIPO(※1)は、7月14日にオープンし、配分単位数の38倍の数の申込みがあり、同月16日にクローズしました。そして、7月23日にインドで最初のユニコーンとして上場し、上場初日に株価66%上昇、時価総額が9800億ルピー(約1兆4500億円)となるなど、期待以上の成果を上げました。

    これにより、Zomato社はインドの時価総額上位50社のうちの1となり、金曜日の終値の時点では、76年の歴史を持つ自動車大手Tata Motorsよりも価値が高くなっています。

     

    Zomato設立からこれまでの歩み

    2008年に食品リストのプラットフォームFoodiebayとして設立された同社は、Deepinder GoyalPankaj ChhadahがBain Consultingに在籍していた2008年にこのアイデアに取り組み始めて以来、長い道のりを歩んできました。

    設立からわずか3年後の2011年には、Zomatoはレストラン検索と発見の場として注目を集めるようになりました。それ以来、Zomatoは事業を拡大し、新しいカテゴリーや市場に進出し、新サービスや製品を発表して、同業界を率いるリーダーの一員になっています。

    この2年間で同社は、Gaurav Gupta氏、フードデリバリー部門の責任者Mohit Gupta氏、CPO(※2)のAkriti Chopra氏を、CTOのGunjan Patidar氏とCEOのDeepinder Goyal氏とともに共同創業者に昇格させ、Chhadah氏が2018年にZomatoから移籍した後も事業を拡大し続けています。

     

    同社のこれまでの歩みにおける重要なマイルストーンはどのようなものだったのでしょうか?順を追ってみてみましょう。

     

    2008:

    ・食材リストのプラットフォームFoodiebayを設立

    Goyal氏とChhadah氏が大学在学中にBain Consultingの役員になったとき、周囲のレストランのメニューを探すのにいつも苦労していました。レストランに直接行くか、友人にメニューを聞いて料理を注文しなければならなかったのです。このような状況から、レストランのメニューをオンラインで提供するFoodiebayを立ち上げるというアイデアが生まれたようです。

     

    2010
    ・FoodiebayからZomatoに社名変更し、2人はフルタイムでZomatoに専念

    同社によると、Zomatoは「tomato」という言葉に由来しており、ブランド想起を高めるような刺激があるとのことです。Goyal氏とChhadah氏はBain Consultingを去り、Zomatoに専念することを決意しました。

     

    2011

    ・レストラン検索プラットフォームとして知名度が広まる

     

    2012年:

    AndroidおよびiOSアプリを開発
    ・アラブ首長国連邦、スリランカ、カタール、英国、フィリピン、南アフリカに進出し、国際化を進める

     

    2013年:

    Sequoia CapitalとInfoEdgeから3700万ドルを調達(約40億8000万円)
    ・ニュージーランド、トルコ、ブラジル、インドネシアにも進出を果たす

     

    2014年:

    各レストラン検索サービスを買収
    ニュージーランドを拠点とする「Menu-mania」、ポーランド拠点の「Gastronauci」、イタリア拠点の「Cibando」を買収

     

    2015年:

    フードデリバリーを開始
    当時、Zomato最初の大きな障害であるデータ流出に直面しましたが、チームは12時間で解決しました。

    ・2回のラウンドで5,000万ドルと6,000万ドルを調達
    ・シアトルを拠点とするフードポータル「Urbanspoon」を推定6,000万ドルで買収
    同年その他の買収には、インド企業の「MapleGraph」がZomato Baseに改名、米国に拠点を置くテーブル予約とレストラン管理のプラットフォームである「NexTable」があります。

     

    2016年:

    買収活動を継続
    物流技術のスタートアップである「Sparse Labs」を買収。

     

    2017年:

    レストラン支援サービス「Zomato Infrastructure services」を開始

     

    2018年:Zomatoがユニコーン企業にまで成長した年

    2月:
    ・Ant Financialsから1億5000万ドルを調達
    3月:
    ・Chhadah氏がZomatoを去るが引き続き社外取締役に就任
    ・評価額が13億ドルに到達し、ユニコーン企業に
    ・AlibabaのAnt Financialsからさらに1億5000万ドルを調達
    ・わずか2カ月で40%の企業成長を記録
    9月:
    ・フードデリバリー時の無駄な包装を削減する取組みを開始
    ・バンガロールを拠点とする「TongueStun」を1800万ドルで買収、B2Bのフード
    テック産業に乗り出す
    ・バンガロールを拠点とするフードデリバリースタートアップ「Runnr」を買収
    10月:
    ・月のオーダー数2100オーダーを記録
    ・バンガロールを拠点とする「WOTU」を買収、「HyperPure」という名前で、農
    家から食材が直送されるサービスを開始
    ・Ant Financialsから2100万ドルを調達し、評価額が23億ドルにまで拡大

    12月:
    ・ラクナウを拠点とするドローンスタートアップ「TechEagle Innovations」を買収
    し、ドローンデリバリー産業に進出
    ・デリバリーの担当者が、注文された商品を配達中に食べている動画が出回り
    問題に
    ・上記の対策として不正を防ぐ包装手段がとられる

     

    2020年:

    インドのUberEats事業を全株式で買収
    ・Temasekから6,200万ドルを調達、また、米国の投資会社Koraから5,200万ドルを調達
    ・食料品事業「Zomato Market」を開始
    ・Mohit Gupta氏を共同創業者に昇格。

     

    2021年:

    ・Grofers社と契約を結び、同社の9.3%の株式を取得して約1億ドルをオンライン食料品会社に投資
    ・Akriti Chopra氏を共同創業者に昇格
    ・インドユニコーン企業初の上場

     

    このように、Zomatoは2008年に設立されてから毎年飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を続け、ユニコーン企業になってから上場させる、という快挙を果たしました。今回のニュースで、インドスタートアップが世界からさらに注目を集めることとなったのは言うまでもありません。
    2020、21年はインドスタートアップエコシステムがブームを起こしていると言われており、次々とユニコーン企業が生まれていますが、Zomatoに続き株式上場する企業はでてくるのでしょうか?

    今後もZomato、そしてインドスタートアップを追っていきたいと思います。

     

     

    ※1 IPO:Initial Public Offeringの略。新規公開株のこと。
    ※2 CPO:ここではChief People Officerの略。自社の従業員の満足度を最大化し、従業員の定着率を最大化しつつ、労使紛争を最小化する役目の取締役。

    Zomato:https://www.zomato.com/ncr

    Source:Zomatoが株式上場!時価総額トップ50にランクイン