Vol.0115 Zomatoが環境に配慮した新対策を発表
インド最大のスタートアップメディアであるYourStory社の2021年8月30日付けの報道で、先月インド初となるユニコーン企業で上場を果たした『Zomato』が行う新しい環境対策について取り上げています。
注文時のカトラリーを希望性のオプトイン選択に変更
7月23日に上場した巨大フードテック企業のZomatoは、上場初日に株価が66%上昇し、時価総額が9800億ルピー(約1兆4500億円)となるなど大きな話題を呼びました。(詳しくはこちら)
何かと注目を集めるZomatoですが、今回は環境に配慮した施策として、注文時のカトラリーを希望性のオプトイン選択に変更したことが取り上げられています。
Zomatoの共同創業者兼CEOであるDeepinder Goyal氏は、二酸化炭素排出量を削減するために、ユーザーがカトラリー、ティッシュ、ストローを必要とする場合にはその旨をリクエストする必要がある、とブログで発表しました。
同社のこれまでのカトラリーのデフォルトモードは「オプトアウト」であり、カトラリーを必要としないユーザーはその項目を選択することでデリバリー時にカトラリーを受取らない選択をすることができました。しかし、『このオプションを利用するユーザーはほとんどいなかった。商品注文の流れで、ユーザーがデフォルトを変更することはほとんどいない。』とGoyal氏は打ち明けています。
しかし、数千人のユーザーにアンケートを取ったところ、約90%のユーザーが「注文時にプラスチック製のカトラリーはあまり必要ない」と答えたのです。このことを念頭に置き、同社はカトラリーのデフォルトモードを変更することにしました。これまでの「オプトアウト」から、カトラリーが必要な場合は、明示的にリクエストする「オプトイン 」に変更することで、デリバリー時の無駄なカトラリー提供を減らし、環境問題に対応していくようです。
現在このオプトイン機能は、Zomatoユーザーの50%に導入されており、今後3〜4週間をかけてすべてのユーザーに導入される予定です。
カトラリーを付与しないことでおこるメリットとは
『例えば、プラスチック製のスプーン1本が分解されるには200〜500年かかると言われている。そのようなプラスチック製スプーンが毎日何百万本も消費されている。我々全員がそれに加担しているのだ。Zomatoアプリでのこの一見小さな変化は、1日で最大5,000キロのプラスチックを節約し、1年では最大200万キロのプラスチックを節約することにつながる。』とGoyal氏はブログで述べています。
また、今回の変更により、レストランパートナーにとっても節約が可能となります。カトラリーを付けないことで今後、注文ごとに2~5ルピー(注文額の0.5~1%)の節約をすることになります。Goyal氏はこのことを明記し、「当社のレストランパートナーの皆様には、このコスト削減分を非プラスチックパッケージへの移行のきっかけにしていただきたい」と述べています。
今回の変更を浸透させるための対策
Zomatoのレストランパートナーも、今回の変更に期待していることが分かっていると、述べられています。しかし、同社は、新しいデフォルトモードへの切り替えに伴い、いくつかの問題が発生することを予想しており、最初からレストラン側が100%遵守するとは考えていません。
その対策もきちんと構築しているようです。『もし、レストランがカトラリーを希望していない注文時にカトラリーを送ってきたり、逆にカトラリーの希望を出したにもかかわらずカトラリーを送ってこなかったりした場合は、デリバリー完了後の「レストランはあなたにカトラリーを送りましたか」という質問でフィードバックを伝えていただきたい。いただいたご意見は、より確実にお届けできるよう、提携レストランに伝えさせていただきます。』とGoyal氏は述べています。
そして、『他のフードアグリゲーターにもこのような変更を促し、レストラン業界が今後マッスルメモリー(※1)を削る必要がないようにしたいと考えている』とつけ加えています。
同ブログ内でGoyal氏は、『できれば、カトラリーを使わない選択をしていただき、環境に配慮したインドの構築に向けて、私たち全員が新たな小さな一歩を踏み出すことに協力してほしい』と締めくくっています。
インド政府による環境対策も活発
前回の記事(Vol.0114)でインドのユニコーンブームを取り上げたことからも分かるように、近年インドは特にIT分野において革新的な経済成長を果たしました。ナレンドラ・モディ首相が「Made in India」構想を打ち出し、IT分野以外での発展も見込み、ここ数年で多くの工場を建設したことは経済成長にも貢献していますが、同時に稼働中の排出ガスによる大気汚染も深刻な問題として取り上げられています。また、自動車による排気ガスも深刻化しています。
そこで、インド政府は大気汚染問題に取り組むためにいくつかの政策を発表しています。具体的には1)2022年までに10万メガワットの太陽光発電システムの導入、2)2022年までに6万メガワットの風力発電システムの導入をし、2030年までに国内電力の4割を再生可能エネルギーで補うことを目標にしていたり、昨年4月より適用された3)新排ガス基準である『BS6(Bharat Stage 6)』によるEV車開発推奨などがあります。
国全体で環境対策に力を入れている中での今回の巨大フードテック企業、Zomatoによる環境対策の施策は多くの企業にとって、環境問題に真摯に向き合うきっかけとなることでしょう。
今後もZomatoの動き、そしてインドの環境対策には注目していきたいです。
※1 マッスルメモリー:筋肉に保存される記憶ではなく、脳に保存される記憶。
Sourse:Zomatoが環境を配慮した施策に乗り出す
Zomato:https://www.zomato.com/ncr