【2026年インド経済超予測】「日本超え」延期の真相とトランプ関税・インフラ限界の「痛み」を徹底解説
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2026年、インド経済は「摩擦」の時代へ
2025年に日本を抜いて世界4位の経済大国になると言われたインドですが、2026年を迎えた現在、その予測には大きな変化が生じています。皆さん、昨年のこのニュースを覚えていますでしょうか?国際通貨基金IMFの推計によると「2025年にはインドが日本を抜いて世界4位の経済大国になる見通し」という、あの報道です。結構報道されてましたよね。なんならモディ首相は「もう4位になった」と勝手に宣言しちゃってましたからね、笑。さすがにこれには笑っちゃいましたけど、いざ2026年を迎えてみて、「あれって結局どうなったの?」と思われている方も多いかもしれません。
結論から言うと、まだ4位になってません。「2026年以降」に大きく後ズレしてしまっているんですよね。ただ、「インドの勢いが落ちたのか?」と言われると、インドの実体経済はむちゃくちゃ元気なんで決してそう単純な話ではありません。でも、通貨ルピーの歴史的な安さや、トランプ政権による関税の衝撃といった「外部要因」が、インドの背中を強烈に引っ張っているわけですね。
2026年のインド経済を一言で表すとすれば、「摩擦をともなう成長」です。 インドはマクロで見れば間違いなく成長しています。ただ、ミクロの現場や特定の産業では、かなり厳しい現実に直面し続けることになる。そんな2026年のインド経済を読み解くためにも、「インド経済は本当に日本を抜くのか?」というテーマでひとつひとつ解説していきたいと思います。
【ポイント】
インド経済は成長を維持していますが、2026年は外部要因(トランプ関税)と内部要因(インフラ限界)による「摩擦をともなう成長」の年となります。
注視すべきポイント:
◦ トランプ関税: 特定の労働集約型産業(宝石・アパレル等)には最大50%の関税が課され、雇用に影響が出ています。◦ GST 2.0: 大胆な減税により内需は活性化しましたが、税収減への不安からルピー安が加速しています。◦ インフラのボトルネック: 工場建設が進む一方で、深刻な水不足や計画停電が製造コストを押し上げています。
なぜインドの「日本超え」は2026年以降に延期されたのか?
まず最初に確認しておきたいのは、インド経済は本当に成長しているのか?という点です。去年まで言われていた経済規模で日本を超えるという予測は当たらず、確かに延期になったわけなんですけど、ただ、「インドの成長が止まってしまったのか?」というと、全然そういうわけではありません。IMFは2025年度通期(2025年4月~2026年3月)の実質GDP成長率の見通しを6.6%に上方修正していて、世界主要国の中でもトップクラスの成長を維持していますし、インドの実体経済の強さは圧倒的です。
じゃあ、なんで当初の期待を裏切る結果になってしまったのか。その理由を紐解いていくと大きく2つの背景が見え隠れします。1つは「通貨ルピーの弱さ」、そしてもう1つは「トランプ関税の影響」です。
2025年後半、ルピーは対ドルで史上最安値となる91ルピー台を記録したんですよね、これ、どういうことかと言うと、インド国内でどれだけ頑張ってビジネスをしてルピーを稼いでも、それをドルに換算した瞬間に「あれ、思ったより少ないな」となってしまうわけです。 インド経済はむちゃくちゃ元気なんですけど、通貨が安すぎてドルベースで見た世界ランキングでは数字が伸び悩んでいる、というのが現在の実態と言えます。
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2つ目はトランプ関税の影響ですね。 ここが2026年の最大のリスク要因と言っても過言ではありません。ただ、勘のいい方は「あれ、インドって内需がむちゃくちゃ大きいからトランプ関税の影響ってあんまりないんじゃないの?」って思われる方もいらっしゃると思います。確かにインドは2024年度時点で対アメリカ向けの輸出総額はインドの名目GDP全体の2%ぐらいしかないんですけど、でも実は今、インドの産業界のあちこちから悲鳴が上がっています。
それではここからは、「通貨ルピーの弱さ」と「トランプ関税の影響」それぞれについてもう少し深掘りしていきたいと思います。
インド政府の大博打「GST減税」とルピー安の副作用
まず、「通貨ルピーの弱さ」についてです。そのひとつの背景として、インド政府が発表したGST(物品サービス税、いわゆるインドの消費税)の「歴史的大改革」について見ておきたいと思います。何をやったかというと、2025年9月にGSTの税率構造をガッツリ変えたんです。
>>GST2.0の大改正についてはこちらの記事をご覧ください。
9割以上の品目を減税した「GST 2.0」の狙い
これまでは5%、12%、18%、28%という4段階で構成されていたのを、基本的にはシンプルに5%か18%の2つに分けて、特定の嗜好品や⾼級品には40%を課すという、3つの段階に整理したわけですね。そして、税率が変更された品目の実に9割以上の税率を下げて大胆なGST減税に踏み切ったわけです。インド政府としてはGST税制の簡素化と消費者負担の軽減を目指していると報道されていました。しかし、同時に対アメリカへの輸出が鈍るこの局面と、年に一度の祭事商戦を狙った、むしろ内需をテコ入れするための万を辞した政策のようにも見えました。内需を爆発させるための景気刺激策ですね。毎年インドは10月ごろにディワリと言ってですね、日本の年末年始のような連休かつお祭りモードになるんですけど、この直前にGST減税を発表したことで、事実、ディワリシーズンの売り上げは前年同期比25%増で過去最高となりました。ただですね、問題はこれによる副作用です。
年間1兆円の税収減が招く「財政不安」と外資への影響
減税をすればインド政府に入ってくるお金、税収は当然に減りますよね。試算では年間で約5700億ルピー、日本円で1兆円規模の税収・財源が消えるという推計も報道されていました。要するに、市場が見ているのは「景気刺激策」としてだけじゃなくて、これからの財政運営がどうなるかという点なんですね。
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その結果、何が起きたか。発表直後は金利が上下に振れて、税収に対する影響と財政運営に注目が集まりました。また、その後「インドルピー通貨の急落」にも繋がります。 財政への不安に加えて、グローバルでのドル高、対アメリカとか対中国など、対外的な不確実性による影響からもルピーが売られて、2025年後半にはついに「1ドル=91ルピー台」という史上最安値を更新してしまいました。
インドに進出している外資系企業からするとたまったもんじゃないですよね。輸入品のコストは上がるし、ドル建で見ると利益は目減りするわけです。「減税で景気は良くなるはずだったのに、通貨安とインフレで企業の利益がむしろ圧迫される」という構図になっているのではないかと思われます。なので、2026年はむちゃくちゃ難しいかじ取りを迫られる可能性があるというのが今のインド経済の状況なんです。
トランプ2.0の衝撃と産業界の「悲鳴」
なぜインドに「最大50%」という未曾有の高率関税が課されることになったのか
次に「トランプ関税の影響」についても見ていきたいと思います。みなさんご存知のとおり、トランプ大統領は2025年4月2日にすべての国を対象とした「相互関税」の導入を発表しました。インドに対しては8月1日から25%の関税適用を発表し、さらにその後インドのロシア産石油購入に対する制裁措置として、8月27日からさらに25%の関税を上乗せすることを発表したわけですね。つまり、例えば、宝石・宝飾品とかアパレル原材料、水産物などを中心に世界最高水準に設定された50%の関税率の影響が、ちょうど9月以降の貿易統計の数値にも反映されていることが見て取れます。
宝石・宝飾産業の存亡:ダイヤモンドの街「スーラト」を襲う15%の雇用消失リスク
まず、もっとも大きな影響が出ていると言われているのが宝石・宝飾産業です。この産業にとって、アメリカは最大のお客さんなんですよね。インドのダイヤモンド加工や宝飾品輸出は世界的にも有名ですが、特に世界のダイヤモンド加工の9割近くを誇る「ダイヤモンド・シティ」と言われるマハラシュトラ州第二の都市スーラトでは、この関税引き上げが直撃して、業界団体によると15%近くもの職人の雇用が吹き飛ぶ可能性があるとも言われています。業界全体に激震が走っていて、まさに存亡の機に立たされているという状況です。
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アパレル・水産物への打撃:バングラデシュやベトナムへの「受注流出」の深刻度
さらにもう1つ大きな影響が出ているのがアパレル原材料です。私が住む南インドにもティルプールという有名な繊維の街がありますけど、50%もの関税をかけられたら、バングラデシュやベトナムなどの価格に勝てるわけがないですよね。実際、コットンニットや織物などの受注が最大70%も激減して、数十万人規模の雇用がリスクにさらされているという、かなり深刻な状況になっていると報じられています。
さらに、意外なところでは水産物、例えば「エビ」です。 インドは冷凍エビの主要輸出国なんですが、ここにもアメリカの追加関税が直撃しています。その結果、アメリカのバイヤーはインド産のエビを見限って、関税の安いエクアドルやベトナム産のエビに乗り換え始めているわけですね。インドの沿岸部でエビ養殖をしている生産者たちも厳しい状況を突きつけられています。
関税の「明暗」:なぜiPhoneなどの通信機器輸出だけが「前年比3倍」に急成長したのか?
つまり、2026年は、宝飾品や繊維、水産物といった労働集約型の産業において、数十万人規模にも及ぶ雇用がリスクにさらされているので、アメリカ発の「摩擦」が、少しずつ具体的な失業率の悪化という「痛み」として表面化する年になるかもしれません。一方で、トランプの追加関税の対象にはなっていない携帯電話などを含む「通信機器」についてはむちゃくちゃ伸びてましたよね。伸び率が200%を超えているってことは前年同月比で3倍以上という状況です。これは明らかにインド国内で組立生産されてアメリカ向けに輸出されているアップルのiPhoneが一気に伸びていることが背景にあります。
「チャイナ・プラス・ワン」の幻想と製造インフラの限界
なぜ「工場は建っても稼働しない」リスクがあるのか?
そして、インドに住んでいてもっともリアリティを持って感じるインド経済の闇が「製造基礎インフラの限界」です。ニュースとかでも「チャイナ・プラス・ワンで世界の工場がインドに移管」なんていう景気のいい話をよく聞きますよね。 でも、現場にいる私たち日本人駐在者に見えている世界は「もし仮に工場は建っても、ちゃんと稼働する保証はない」というリアルです。特に「水」や「電力」といった基礎インフラに加えて、「技術力の高い労働者」が決定的に足りていません。
まず、「水問題」です。 私が住んでいるここベンガルールでは、例えば最近だと数ヶ月前に60時間にも及ぶ断水が発生しました。カウヴェリ川の水位が低下して、かつ、地下水が枯渇したことによってカルナタカ州政府が決行したわけですけど、それによりむちゃくちゃ影響を受けたのがあのiPhoneを作っているフォックスコン(Foxconn)ですよね。 フォックスコンの工場があるイェラハンカ近郊のエリアでは、工場を動かすための水が確保できなくなってですね、カルナタカ州政府が慌てて「他の地域の水を犠牲にしてでも、フォックスコンに水を送れ!」と特別に指示を出したくらいです。
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他の中小規模の工場はどうしたかというと、高いお金を払って民間の給水タンカーを呼ぶしかないわけです。その結果、製造コストが一気に跳ね上がったという報道もされています。水不足は深刻な経営リスクになっています。
ちなみに、水問題と言えばインドとパキスタンの紛争にも大きな影響を与えている問題ですよね。もしご興味ある方はですね、先ほどカウヴェリ川の問題と合わせてこちらで詳しく解説していますのでぜひご覧ください。
関連記事:【駐在員が暴露】インドとパキスタンの停戦はフェイク!?裏で続く見えない戦争
計画停電が常態化?自家発電によるコスト増
次に「電力問題」です。 水がなければ水力発電はもちろん、冷却水が必要な火力発電所も止まります。 実際、タミル・ナドゥ州のコインバトールやチェンナイなどの主要な工業地帯では、夏場に「1日3時間から6時間の計画停電」を実施するのがある種常態化しています。 日系企業各社の工場としては、高いディーゼル発電機を回して自家発で自己防衛するしかないんですけど、これだと何のためにコストの安いインドに来たのか分からなくなっちゃいますよね。
「中国人技術者へのビザ規制」が招く技術移転の停滞
さらに、現場の足を引っ張っているのが「技術力問題」です。 工場を立ち上げる時っていうのは、普通はマザー工場から熟練のエンジニアを連れてきて指導するケースが多いと思いますけど、インド政府は中国との対立から、中国人エンジニアへのビザ発給をかなり厳格化しているという報道も出ていました。実際、フォックスコンの工場でも中国人技術者が半強制的に帰国させられて、技術移転が一時的にストップしてしまったというニュースも出ています。インド生産現場のワーカーの労働コストは中国の4分の1とも言われていますけど、教えてくれる人がいなければ生産性もなかなか上がらないですよね。
ただ、ここに来てインド政府はビジネスビザや技術者向けのビザについては審査期間を短縮したり、優先的にビザを発給していく方針を打ち出しています。Make in India政策をさらに推進していきたいインド政府としては、中国人の熟練技術者の知見は必須だと痛感したわけですね。2026年、米中対立の行方がどうなるのかも気になるところですけど、果たしてインドが中国とどのように付き合っていくのかもまた目が話せない状況になっていると言えます。
さて、皆さん、いかがでしたでしょうか?今回は、2026年のインド経済超予測というテーマで、インド経済の「今」をインド在住者の目線で解説いたしました。これからインドに駐在される方はぜひ参考にしていただければと思います。
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