インドのドローン産業は成長中、「ポケベルor携帯電話」その未知数の可能性

未知数ながらも拡大するドローン需要

ジ・エコノミック・タイムズ紙の記事によると、インドのドローン産業は今、重要な局面を迎えています。

頻繁な法改正はリスキーですが、鉱業業界や殺虫剤散布などのような、新しく成長が期待できる需要も同時に頻繁に生まれています。

登場してから10年ほどの業界ですが、その可能性はまだまだ未知数な部分が大きいです。

2022年1月29日に開催されたインドの共和国記念日を祝うBeating Retreatの式典にて、ドローンによるショーが行われるなど、インパクトの強い派手な業界ではあるものの、実際にどのように活用できるのかが重要な今まさに問われています。

「ドローンによる可能性を発見する人は、以前にも増して増えています。5年前、誰もドローンを使った散布が活躍するとは思っていませんでしたが、今日では首相はすべての農家に使い始めさせようと言っています。1年前も、鉱業部門がコンプライアンス目的でドローンを義務化するとは誰も思っていませんでした。現在、鉱山省は毎年、50ヘクタール以上の鉱山でドローン調査を行うことを義務付けています。土地記録のデジタル化にはドローンが使われており、今まさに市場が生まれようとしています」と、ベンガルールでSkylark Drones社を経営しているMughilan Thiru Ramasamy氏は述べています。

Ramasamy氏10年前、ドローンがまだ無人航空機やUAVと呼ばれていた頃に、墓地でドローンを飛ばす練習をするなど、ドローン登場のごく初期からドローンの活用のビジョンを持っていました。

台数規制と、パイロット養成の促進

最近までインドにおけるドローンは規制の対象外だったため、インド国内に存在するドローン台数は10万台から100万台と言われています。

現在ではドローン政策が実施されており、政府は2022年2月9日ドローンの輸入を禁止しています。

一方で、ドローンパイロットを養成できる学校として、12のパイロット養成学校が民間航空局により認可されました。

民間航空局ではパイロットが公認ドローンスクールで認定を受けた後、15日以内にパイロットの証明書を発行するなど、パイロットの養成に力を入れています。

そうした学校のひとつであるBombay Flying Clubでは、24歳のYash Patel氏がドローン教官を務めています。

機械工学の学位を持つPatel氏が初めて低級ドローンを飛ばしたのは、15歳の学生時代でした。

彼に注目したBombay Flying Clubは、2018年時点で彼を民間航空局で訓練を受けさせました。

Patel氏は過去2年間に100人以上の生徒を訓練しました。

また、マハラシュトラ州アコラの警察官にもドローンの使い方を指導するなど多岐にわたって活躍しています。

現在のドローン需要の拡大に向けた先見の明があった一例といえるでしょう。

「アイスクリームはまだまだ配れない」

ドローン業界に携わる人たちは、ドローンは既に人々の生活に入り込んでいると言います。

この現状に対し、「ドローンが今、課題を解決できる事例もあれば、課題の解決がこれから期待できる事例もあります。ドローンは人々の生活にうまく入り込んでいっているのです。

問題はポケベルのようになるのか、携帯電話のようになるのか、という点です」と、Ramasamy氏は興味深い表現で言及しています。

Ramasamy氏によると、ドローンが人々の家にアイスクリームを配達できるようになることは、今後しばらくは実現しないとのことです。

例えば米Amazonではそうしたサービスの実現を目指していましたが、挫折しています。

「1回の配達と1日100万回の配達では、技術的な複雑さが大きく変わってきます。ドローンがすべてのものを置き換えるには、まだ時間がかかるでしょう。ドローンがすべてのものを置き換えるまでには時間がかかるでしょう。私たちは、Amazonがスタートしたときから、ドローンを使った配送について、10年以上前から話してきました。実現はしますが、時間がかかります」。

しかし、すぐの実現は難しいかもしれませんが、ドローンの躍進にはこれから様々な業界への相乗効果が期待できます。

鉱山の空撮や石油精製所の事故防止など大きな仕事から、結婚式のカメラマンの収入補填など小さな仕事まで、ドローンの活用は多岐にわたることでしょう。

進むドローンの国産化

インドはすべてのドローンの輸入を禁止しましたが、国内にあるドローンの95%は輸入されたものであると推定されています。

前述のBeating Retreatの式典におけるドローンショーでは、インド製ドローンが1000台も使用されました。

式典でのドローンショーに携わった、インド工科大学デリー校の科学者Sarita Ahlawat氏は、ドローンの輸入禁止は、インドがドローンを製造する方向に向かうことを推し進めると述べています。

「(このショーは)私たちは独立して何かを行うことができるというメッセージを送る役目を持ちます。インドの技術は信頼できるのか?と聞かれたとき、インドの技術を信頼できることを示すことができるのです。大統領や首相の前で、私たちは彼らに命を預けているという宣言です。これが、政府が伝えようとしたメッセージです」と、Ahlawat氏はそのショーの目的を述べました。

インドは国土面積が広く地形や気候も多様なため、ドローン市場には大きな伸びが見込まれ、日本企業のインド市場への参入も行われています。日本企業の活躍への期待も含めて、インドのドローン市場の動向には要注目です。

ソース:ポケベルになるのか、携帯電話になるのか。インドのドローンへの野望はどこまで高く飛べるか?

作物食い尽くすバッタの大群、ドローンで追跡・殺虫剤散布 インド

デリー:ドローンが空を照らし、軍楽隊が「BeatingtheRetreat」セレモニーで演奏

国内ドローンメーカーがインドでPRを積極化する狙い

関連記事:Vol.0123 インドで開発が進むドローン技術を活かした「空飛ぶタクシー」、その実現はいつになるか?