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インドの人事労務・法務アップデート

最新アップデート:インド2023年個人情報保護法案が国会で可決

(文責:奥晋之介/Global Japan AAP Consulting Private Limited)

2023年8月、インド2023年個人情報保護法案が国会で可決されました。今後、大統領による同意を以って法律として制定され、その後の政府からの官報によって施行されます。実際に施行されるまでには、半年から1年程度を要する可能性もございますが、これまでの経緯と主な変更点の概要についてご紹介します。

(* なお、本記事は2023年8月11日現在の情報になります。)

 

これまでの経緯:

 2018年7月 :2018年個人情報保護法案公開
 2019年12月 :2019年個人情報保護法案に修正
 2022年8月 :2019年個人情報保護法案が白紙撤回される
 2022年11月 :2022年個人情報保護法案公開、パブリックコメントを募集
 2023年8月3日 :2023年個人情報保護法案が国会に提出される
 2023年8月7日 :下院(Lok Sabha)で可決される
 2023年8月9日 :上院(Rajya Sabha)で可決される

(弊社の過去の記事:https://g-japan.in/news/tax-vol-35/

 

インド2022年個人情報保護法案からの主な変更点:

適用範囲について:

本人によって個人情報が公開されているような場合(本人がブログやソーシャルメディア上で自発的に個人情報を公開している場合等)や各種法令に基づいて公開されている個人情報には、本法案は適用されないとの規定が追加されました。

個人情報のインド国外への移転について:

インド2022年個人情報保護法案では、インド政府は、個人情報を移転することができるインド国外の国または地域を通知するとされていましたが、インド2023年個人情報保護法案では、インド政府は個人情報の移転を禁止するインド国外の国または地域を通知するとの内容に変更されました。これによって、インド政府が禁止したインド国外の国または地域以外の国または地域には、個人情報の移転が可能になります。しかし、禁止とする基準については、明確ではありません。なお、当該禁止国または地域についての通達は議会の承認を得る必要があるとされています。

みなし同意について:

インド2022年個人情報保護法案では、みなし同意(Deemed consent)とされる条件に「公共の利益のためになる場合」との規定がありました。インド2023年個人情報保護法案では、「みなし同意(Deemed consent)」が「特定の正当な使用(Certain legitimate uses)」という言葉に置き換えられ、かつ「公共の利益のためになる場合」との文言が削除されて、「特定の正当な使用(Certain legitimate uses)」として、より詳細な条件が規定されました。

特定のデータ信託者に対する一部の義務の免除: 

インド2022年個人情報保護法案では、インド政府が通知を発出することにより、利用者数や個人情報の取扱量などを基準に特定のデータ信託者を一部の義務から免除できるとの規定が存在しました。インド2023年個人情報保護法案でも当該規定は維持されましたが、特定のデータ信託者にはスタートアップを含むといった内容の文言が追加されました。

その他、規則の制定:

その他、インド政府が通達により、法案に規定と矛盾しない範囲で規則を制定および変更できる箇所について、細かく定められています。

 

参照:

インド2023年個人情報保護法案(原文)

インド2022年個人情報保護法案(原文)

Internet Freedom Foundationによる記事

               

執筆者紹介About the writter

奥 晋之介 | Shinnosuke Oku
学生時代に2015年~2018年の3年間、在ベンガルール日本国総領事館にて在外公館派遣員として勤務。その後、インド大手ITサービス企業の日本法人に入社し、製造実行システム導入の構想策定プロジェクトへの参画や提案活動に従事。インド進出日系企業の支援に関わりたいとの想いから、2022年に当社に参画し、再びベンガルールへ移住。現在は会社法を中心とした企業法務や労務、インド市場調査業務を担当。