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最新インド税務の注意点

Vol.002 : ついに!念願の配当分配税DDT廃止にともなう日系企業への影響

 

■ 長きにわたって指摘されてきた不可解な二重課税

2020年4月1日より、インド企業が分配する配当金への課税については、従前の「配当分配税(DDTDividend Distribution Tax)」が廃止される代わりに、源泉徴収税(TDS : Tax Deducted at Source)による課税方式が導入されました。従前の課税方式では、法人税を支払った後の税引き後利益から、さらに配当分配税(DDT)を追加で納税しなければならず、この不可解な二重課税がこれまで長きにわたって外資系企業により指摘されてきましたが、2020年度インド国家予算案の発表によりそれが解消されることとなったわけです。これによりインドに進出する外資系企業にとって、株主への利益配分を効率よく実施することができるようになり、インドへの投資環境は資金還流の観点からはある程度の改善がされたと言って差し支えないと思います。

 

■ 今後配当金の支払時に適用される課税方式とは?

 なお、上記の予算案を基に施行された2020年財政法(Finance Act, 2020)によると、配当金への課税方式は株主が(1)非居住者、(2)インド国内企業、(3)インド居住者、かによって異なります。在インド日系企業の株主の多くは親会社たる日本法人であり、つまり(1)非居住者に当たりますが、この場合には同法において、1961年インド所得税法(The Income Tax Act, 1961、以下“インド所得税法”という)第195条に規定されていた配当金に対する源泉徴収義務の免除規定が削除され、配当金に対しては、原則、源泉所得税率20%(に加えて課徴金及びサーチャージ)がインドからの海外送金時に課税・徴収されることとなります。

 

■ 外国税額控除の適用と海外子会社配当益金不参入制度

インド法人が配当金の支払時に源泉徴収をした後は、通常のTDS申告と同様に、インド側で電子申告(Form 27Q)によって徴収額が申告され、株主たる外国法人は、後にインドの税務当局から発行される納税証明書(Form 16A)をもとに、本国での税務申告の際に外国税額控除(Foreign Tax Credit)の適用を受けることとなります。なお、日本には「外国子会社配当益金不算入制度(Foreign Dividend Exclusion)」という制度が導入されており、以下2つの条件を満たす場合に、外国子会社から受け取る配当はその95%が益金不参入(非課税)とすることが可能です。ただし、この制度の適用対象となる場合には、その代わりに上述の外国税額控除については適用対象外となるためご留意ください。

 

1、日本の親会社により発行済株式の25%以上の株式等を保有されていること

2、その保有期間が配当の支払義務確定日よりも以前6ヶ月間以上継続していること

 

■ 株主がインド企業やインド居住者個人の場合は?

 ちなみに、日系企業がインド企業とのジョイントベンチャー/合弁でインドに進出している場合に、株主の中にインド企業やインド人創業者がいるケースも少なくないと思います。普通株式のみが発行されている場合には、原則、配当はその株式持分比率に応じて公平に分配する必要がありますが、課税関係は上述の非居住者の場合とは異なります。つまり、配当支払時に10%のTDSを源泉徴収し、受け取った株主はそれぞれの立場による所得として申告・納税を実施することとなります。

 

■ インドでの税務申告義務はどうなるのか?

 さて、日系企業への影響についてもう少し見ていきたいと思います。2020年度インド国家予算案では、非居住者である外国法人の税務申告の要否についても触れられており、このトピックに関連する条項であるインド所得税法第115A条の改正が提案されております。この条項では、外国法人のインド国内の年間源泉所得が、配当、利子、使用料、技術上の役務に対する料金のみで構成されている場合には、その課税年度におけるインド国内での税務申告は不要である旨が明記されています。

しかしながら、上記の提案は残念ながら租税条約(Double Taxation Avoidance Agreement : DTAA)を適用したケースが考慮されていません。つまり、日印租税条約の軽減税率を適用した場合、配当金に課される源泉税率は10%に軽減されますが、その代わりにインド国内での税務申告が必要となってしまいます。その理由は、予算案において提案された法改正事項に、「同法第115A条(1)に規定されている税率よりも高い源泉税率で徴収されていること」という条件が付与されているためで、日印租税条約を適用した軽減税率10%は、当該条項に規定される源泉税率(20%+課徴金およびサーチャージ)よりも低くなるため、この条件を満たすことができず、結果的に、配当を受け取る親会社たる日本法人はインド国内での税務申告を実施する必要がある、ということになります。

配当分配税の廃止は、インド側の子会社の税負担を軽減し、かつ、株主にとっても利益の分配を効率的に実施できることから、インドの投資環境の改善に貢献したと言えますが、日本側の親会社の税務対応については源泉徴収課税における選択肢を理解した上で、一定の判断が求められる点にご留意ください。