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Vol.017 :日本とインドの組み合わせがトップ!?二重課税の排除を行う相互協議とは

日本とインドの組み合わせがトップ!?二重課税の排除を行う相互協議とは

経済協力開発機構(OECD)が2020年11月に発表した統計によると、2019年度の移転価格税制に関する相互協議手続きについて、日本とインドの二国間における相互協議の合意率がトップに選出されました。

相互協議手続き(MAP:Mutual Agreement Procedure)とは、二重課税等の租税条約の規定に適合しない課税の排除を目的とした、各国の税務当局の間で行われる協議手続のことです。

例えば、海外の関連当事者との取引に対して日本の税務当局が移転価格課税を行なった場合、海外関連当事者の課税所得は取引価格に基づき計算される一方、日本側においても独立企業間価格に基づいた更生処分により課税されるため、その企業グループ全体としては、同一の所得に対する二重課税の問題が生じます。

こうした問題を排除するため、日本の税務当局が租税条約に基づき相手国の税務当局と協議を行うこと「相互協議」と呼んでいます。この相互協議が合意に達した場合には、相手国の税務当局が子会社の所得等を減額することになります。又、この経済的二重課税の解消は対応的調整(correlative adjustments)と呼ばれています。

日本とインドが締結した租税条約においても、相互協議に関する条項が含まれており、上記の国際的な二重課税を解決するための交渉は可能とされています。OECDの2019年を対象とした統計によると、日本は世界中で移転価格税制にかかる係争解決までの時間が最短(その他の税制においては英国が最短)です。また、インドにとって日本は4番目に手続き件数の多い条約相手国でありその合意率はトップである一方、日本にとってインドは手続きの件数及び合意率共にトップの条約相手国です。

インドの相互協議手続き相手国のグラフ

(出典:OECDの公表データに基づき筆者作成)

日本の相互協議手続き相手国のグラフ

(出典:OECDの公表データに基づき筆者作成)

上表においてインド・日本の双方の手続き相手国について比較すると、2019年期首時点の係争中案件と期中に手続き開始された案件に対する解決案件数の比率を各国比較した場合、日本にとってインドは係争件数が最も多い相手国である一方、解決・合意率も最も高いペアであることがわかります。

相互手続きについてはOECDのBEPS行動計画14において規定される「紛争解決メカニズムの効果的実施」に基づく取り組みですが、税務紛争リスクが高いとされているインドにおいて、日系企業は相互協議手続きを活用することで、税務紛争を解決できる可能性も十分にあることが窺えます。

出典)

  1. http://www.oecd.org/tax/dispute/mutual-agreement-procedure-2019-awards.htm#category4
  2. http://www.oecd.org/tax/dispute/2019-map-statistics-japan.pdf
  3. http://www.oecd.org/tax/dispute/2019-map-statistics-india.pdf