【2026年最新】カルナータカ州労働福祉基金法 (LWF) 改正の全容
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カルナータカ州労働福祉基金法 対象企業が「10名以上」に大幅拡大
カルナータカ州政府は、2026年1月7日付の官報にて「2025年カルナータカ州労働福祉基金(改正)法(The Karnataka Labour Welfare Fund (Amendment) Act, 2025)」を公布し、即日施行しました。労働福祉基金(LWF)とは、州政府が管理する、労働者の生活・教育・医療支援などを目的とした基金です。対象事業所は、雇用主と従業員の双方が毎年定額を拠出する法定義務を負うこととなります。
今回の改正は、これまで「小規模拠点だから対象外」と考えていた多くの日系企業に直接影響する内容となっています。特にバンガロールなどに10~50名規模の従業員を有する企業にとって、コンプライアンスの死角となりかねない変更点について詳しく解説します。
1. 今回改正の最大ポイント:適用対象基準が「10名以上」へ
今回の改正(Section 2の修正)で最も重要なのは、労働福祉基金(LWF)の適用対象となる事業所の基準が大幅に引き下げられた点です。
適用対象となる従業員数要件の変更
- 改正前: 従業員 51名以上 を雇用する事業所
- 改正後: 従業員 10名以上 を雇用する事業所
この変更により、これまで対象外であった少人数の駐在員事務所、シェアオフィス拠点、IT・コンサル・調査会社の小規模拠点なども、新たに適用対象となる可能性が極めて高くなりました。
【重要】前回改正との整理
実務上、2024年の「金額改定」と今回の「範囲拡大」を混同しないよう注意が必要です。
| 改正の時期 | 主な改正内容 |
| 2024年改正(2025年度適用) | 一人あたりの拠出金額の引き上げ(計150ルピーへ) |
| 2025年改正(2026年1月施行) | 適用対象を10名以上へ拡大、支払方法のデジタル化 |
2. 実務のデジタル化:小切手支払の原則廃止
改正法(Section 7A)では、拠出方法も現代的に見直されました。従来の実務で利用されていた小切手(Cheque)による支払方法が条文から削除されています。
現在認められている主な支払方法
・UPI(Unified Payments Interface): Google PayやPhonePe等のアプリを用いた即時決済方式。
・ネットバンキング、NEFT、RTGS
・デマンド・ドラフト(DD): 銀行発行の送金小切手(引き続き利用可能)。
今後は、物理的な小切手を郵送する、あるいは窓口で提出するといった従来型運用は原則として想定されていません。経理フローのデジタル化が急務となります。
3. 拠出金額とスケジュール(2026年時点)
現在(2026年2月時点)適用されている最新の年間拠出額とスケジュールは以下の通りです。
| 項目 | 年間拠出額(1人あたり) |
| 従業員負担分 | 50ルピー |
| 雇用主負担分 | 100ルピー |
| 合計 | 150ルピー |
・計算基準日: 毎年12月31日時点の従業員数に基づき算出。
・支払期限: 翌年1月15日まで。
・適用タイミング: 本改正は2026年1月7日に施行されました。そのため、2026年12月31日時点で10名以上の従業員がいる事業所は、2027年1月15日までに初めて拠出義務を負うことになります。
4. 日系企業が見落としがちな「実務上の留意点」
10〜50名規模で運営されている日系企業が、特に陥りやすいコンプライアンス上のリスクを整理します。
① 「10名」のカウントに契約社員・外注要員を含めているか
インドの労働法実務では、直接雇用の正社員だけでなく、コントラクター(派遣業者)経由で配置されている清掃スタッフ、セキュリティガード、受付、施設管理要員なども人数に含め判断されるケースがあります。「直接雇用ではないからカウント不要」と即断せず、実態に即した確認が必要です。
② プロフェッショナル税(PT)との混同
プロフェッショナル税(Professional Tax)は「個人の就労」に対する課税であり、LWFとは全く別の制度です。「PTを納付しているからLWFは不要」という認識は誤りです。別途、LWFとしての登録・拠点ごとの納付が必要です。
③ 外国人駐在員もカウント対象
インド人従業員が少なく、駐在員中心で運営されている拠点であっても、従業員の定義上、外国人駐在員も原則としてカウント対象となります。
④ 厳しい遅延利息と将来の撤退リスク
支払期限(1月15日)を過ぎた場合、最初の3ヶ月は年率12%、それ以降は年率18%という非常に高い遅延利息が発生します。また、将来的にインド拠点を閉鎖・清算(Liquidation)する際、労働局からの「無異議証明書(NOC)」が取得できず、手続きが停滞するリスクもあります。
5. 今後の具体的な対策ステップ
対象となる可能性のある企業は、以下の対応を推奨します。
1. 拠点ごとの従業員数の精査: 正社員、契約社員、派遣、駐在員を含めて人数を整理する。
2. LWFポータルへの登録: 新たに対象となる場合、カルナータカ州労働福祉委員会の公式オンライン・ポータルで新規登録を行う。
3. 給与計算システム(HRベンダー)の確認: アウトソース先が「10名以上」の新基準や最新の拠出額(計150ルピー)に対応しているか、控除設定を確認する。
4. 決済手段の確保: 会社名義口座でのUPIやネットバンキング利用可否、および送金上限額を事前に確認しておく。
まとめ
今回の改正は、カルナータカ州における労働福祉制度の対象を、中小規模事業所まで本格的に拡張するものです。インドの労働法は厳格に適用されるため、バンガロール等に拠点を置く日系企業にとって、「規模が小さいから対象外」という従来の認識はもはや通用しません。
本改正を契機に、拠点単位での労務コンプライアンス体制を改めて点検されることを強く推奨いたします。
労務コンプライアンスに関するご不明点やお困りごとがございましたら、弊社までお気軽にご相談くださいませ。
参照資料・リンク:
Karnataka Gazette Extra-ordinary (Notification NO: DPAL 82 SHASANA 2025)
【2026年1月7日公布、本改正の直接の根拠】
The Karnataka Labour Welfare Fund (Amendment) Act, 2025
The Karnataka Labour Welfare Fund (Amendment) Act, 2024 【拠出額引き上げの根拠】
The Karnataka Labour Welfare Fund Act, 1965 【法律の根幹となる主法】
Karnataka Labour Welfare Board 【公式サイト】
執筆者紹介About the writter
一橋大学大学院社会学研究科修了。東京大学大学院総合文化研究科在学中。出版社編集部、外資大手小売企業やベンチャー企業のスタートアップメンバーを経て、公的機関にて約3年間、主に南西アジアの調査業務に従事。南インドの地域特性を活かした、日系企業のインド進出と成長を後押しすべく、2024年5月より当社に参画。法務・会社秘書役業務(CS)を担う。