India Weekly Topics

週刊インドトピックス

Vol.0139 テクノロジーの心臓地、Bengaluruで花開くPhonePeの野望

2024年度のMumbai Tech Weekで、PhonePe(主にモバイル決済とデジタルウォレットサービスを提供するインドテック企業)の創業者Sameer Nigam氏は、ベンガルールは、技術開発における構造的利点を持つと称賛しました。

また同社が2022年10月に本社をシンガポールからインドに再移転を決めたことは、他のスタートアップ企業が本社をインドに戻すというミニトレンドを生み出しました。Nigam氏は本社を金融の中心地であるムンバイでなくベンガルールを選んだ理由に、住宅が安価でスタートアップで働く若手が暮らしやすいことをあげました。また同氏はムンバイは芸術、科学、スポーツと文化的に豊かだが、ベンガルールはコアテクノロジーに深く関わるには最高の場所であると述べています。

PhonePeは120億ドルを超えるインドで最も価値のあるスタートアップの一つで、フィンテックの領域を超えてPinocode(PhonePeが展開するプラットフォーム)を用いた食料品、食品、医薬品、電子機器、インテリアなどの非常に地域限定的な商業へと拡大しました。Nigam氏は、現在のGoogle Play Store とApple App Storeの500億ドルにも及ぶアプリストアの独占に対し、代替案としてIndus Appstore(PhonePeが開発したインドのネイティブ向けモバイルアプリストア)のローンチを控えています。彼は、競争がイノベーションを促進するとして、Indus Appstoreをその一歩だとしています。

 

また彼は、UPI(インドにおける即時決済システムであり、銀行口座間の即時送金を可能にするモバイルプラットフォーム)市場で50%以上のシェアを持つPhonePeは、継続する規制問題に直面しているPaytm(デジタル決済とフィンテック分野の主要企業の一つ)の顧客の一部を呼び込むことになるだろうと予想しています。

 

Source:ベンガルールの構造的利点

 

これだけテクノロジーが進んだ現代において、ベンガルールという立地をNigam氏が重要視している点に興味を覚えました。そして、ベンガルールがテクノロジー開発における構造的利点と手ごろな住宅を持つことで、才能のある若者を引き寄せるという彼の指摘は、スタートアップが成功するためには環境的要因が依然として重要な役割を果たすということがわかりました。

ベンガルールという地で、インド独自のテクノロジーがどのように発展していくのかが楽しみです。

 

(文責:大森太郎)