India Weekly Topics

週刊インドトピックス

Vol.0141 インドの戦い:WTOでの食糧安全と漁業の未来

インドは、2月26日にアラブ首長国連邦のアブダビで開始されるWTO(世界貿易機関)の閣僚会議で、中国主導の投資促進協定案に強く反対する立場をとるほか、食糧安全保障のための公的在庫保持に関する恒久的解決策の模索と、漁民の利益保護を求める予定です。この会議は、紅海危機、ウクライナ・ロシア戦争、イスラエル・ハマス紛争による不確実な世界経済情勢の背景の下で開催されます。インドが会議で重視する主要な問題は、食糧安全保障、農業改革、漁業補助金、電子商取引における輸入関税のモラトリアム、紛争解決手続き、WTO改革などです。

インドは、その広大かつ保護が必要な人々にとって公的な食糧備蓄の重要性を訴え、第13回閣僚会議においてこの問題に対する恒久的な対策を訴えています。具体的には、政府がMSP:Minimam Support Price(最低支持価格)で農作物を購入し、貧困層に食料を配布するPSH:Public Stock Holding(公的備蓄)プログラムを提示していますが、WTOの農業協定は、政府がMSPで食料を購入する能力に制限を設けています。また、インドは特定の国々が推進する投資促進に関する提案に反対し、WTOの枠組み外であると主張しています。

農業改革に関して小規模農家の多いインドや途上国は、農家の生計を保護し、公平な市場アクセスを確保する立場をとっています。しかし、先進国は、自国の裕福な農家に大規模な補助金を提供しています。そうすることで、農産物が低コストで生産され、国際市場で競争力を持つことを可能にするからです。そして自国の利益を追求するため、国内支援の削減と市場の開放の増加を推進しています。

WTO改革においてインドは、発展途上国の利益を考慮した包括的な改革を支持し、紛争解決メカニズムを含むWTOの主要な柱を維持することを主張しています。また、漁業補助金に関しては、持続可能な漁業を促進するためのバランスの取れたアプローチを提唱し、貧しい漁民の利益を保護することを最優先事項としています。

電子商取引における関税モラトリアム延長(ソフトウェアやデジタル音楽、電子書籍などの電子的に送信される製品に関税を課さないという国際的合意)はインドの主要な焦点であり、先進国と対立し、長年にわたりモラトリアム期間の終了を呼び掛けています。

 

Source:インドにけるWTO閣僚会議

 

インドがWTO閣僚会議で示した姿勢は、インドが国内産業の保護と自国の主権を大切にしている姿勢が伝わります。

経済格差のある国が主導する投資促進協定に反対することや、電子商取引における関税モラトリアムの終了の呼びかけは、自国の政策立案に制約を加えられることに懸念があるからだと予測できます。

また、特に食糧安全保障と漁業補助金に関する恒久的解決策の追求は、インドだけでなく、多くの発展途上国にとって重要な課題だと感じました。インドが提案する改革や反対意見は、国際貿易のルールがより公平で包括的になるよう促すことができるため、これらの動きは注目に値します。

 

(文責:大森太郎)