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インドの人事労務・法務アップデート

カルナタカ州 知識集約型産業に対する1946 年産業雇用(就業規則)法の適用免除期間を延長

『1946 年産業雇用(就業規則)法』の適用免除期間を延長

カルナタカ州政府は、2019年5月25日〜2024年5月25日までの5年間、以下の知識集約型産業に対してIndustrial Employment (Standing Order) Act, 1946(1946 年産業雇用(就業規則)法)(※1))の適用を免除してきましたが、2024年6月10日に当該免除期間を更に5年間延長するとの通達を発出しています。

(※1) 雇用している労働者 (workman)の数が約50〜100人(州によって異なる)を超える事業所は、Industrial Employment (Standing Order) Act, 1946(1946 年産業雇用(就業規則)法))に基づいて、Standing Orderと呼ばれる就業規則を作成し、管轄の州当局から認証を受ける義務があります。

<当該適用免除が認められる産業>

1946 年産業雇用(就業規則)法の適用免除が認められる産業としては、IT、ITeS、スタートアップ、アニメーション、ゲーム、CG、通信、BPO、KPO、その他知識集約型産業があります。一方で、当該適用免除が認められる事業所においても以下の事項については遵守する必要があります。

  • Sexual Harassment of Women at Workplace (Prevention, Prohibition and Redressal) Act, 2013(セクシャルハラスメント(防止、禁止、救済)法)及び同法に基づく規則に基づき、社内委員会を設置すること。
  • 従業員のあらゆる苦情や不満を合理的な期間内に対処するために苦情処理委員会(Grievance Redressal Committee)を設置すること。
  • 従業員の停職、免職、解雇、降格、解雇などの懲戒処分等については、管轄の州政府機関に通知すること。
  • 従業員の勤務条件に関して管轄の州政府期間が求める情報を、管轄の州政府期間が定める合理的な期間内に迅速かつ完全に提出すること。

新労働法『2020年労使関係法』の影響

ただし、新労働法であるIndustrial Relations Code, 2020(2020年労使関係法)(※2)が施行された際には、当該免除は無効となり、Industrial Relations Code, 2020(2020年労使関係法)が適用となります。当地の各報道機関のニュースによると、産業界は当該適用免除期間の延長を同州の知識集約型産業のさらなる発展に寄与するだろうと概ね好意的に捉えているとのことです。インドにおいては、このように州政府に一定の権限が与えられている分野もあり、州政府独自の施策も多くあるため、進出州もしくは進出予定州の法令・規則やインセンティブ等をフォローアップしていくことが重要かと思います。

(※2) Industrial Relations Code, 2020(2020年労使関係法)は、2020年に議会で可決されたものの、本記事執筆時点(2024年9月)では未施行であり、施行予定日は明確に決まっていません。

               

執筆者紹介About the writter

奥 晋之介 | Shinnosuke Oku
学生時代に2015年~2018年の3年間、在ベンガルール日本国総領事館にて在外公館派遣員として勤務。その後、インド大手ITサービス企業の日本法人に入社し、製造実行システム導入の構想策定プロジェクトへの参画や提案活動に従事。インド進出日系企業の支援に関わりたいとの想いから、2022年に当社に参画し、再びベンガルールへ移住。現在は会社法を中心とした企業法務や労務、インド市場調査業務を担当。