India Weekly Topics

週刊インドトピックス

Vol.0056 RPA導入カメラを開発したDiycam、日本での事業に取り掛かる

RPA導入で業務効率化、生産性向上、人件費削減を可能に

インド最大のスタートアップメディアであるYourStory社の2020年12 月7日付けの報道で、ムンバイを拠点とするロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)のスタートアップ『Diycam』を取り上げています。テクノロジーの発展が進み、あらゆる分野で最先端の技術が導入されるようになりました。しかし、未だに大多数の企業ではCCTVやビデオを使い、人によってコンプライアンスやオペレーションの管理が行われています。人間による継続的な管理には限界があり、些細なミスを完全に取り除くことは不可能です。そこで、Diycamはコンピュータビジョン、IoT、およびAIを使用した、AI主導の意思決定を可能とするカメラを開発しました。同商品によって、企業は日常の単調な作業を自動化し、業務効率の向上、人的ミスによるリスクの削減を可能にすることができます。

 

Diycamの優位性

DiycamのCEOであるGagan Randhawa氏は『市場ではビデオアナリティクス企業が過密状態にありますが、RPAの専門知識を持ち、スマートハードウェアとビデオアナリティクスを統合できる企業はほんの一握りしかない』と述べています。その点、Diycamのエンジニアチームの持つ専門知識は他社とは一線を画しており、ソフトウェアとハードウェアをベースにカスタマイズされた製品を作ることを得意としています。Gagan氏によると、『競合他社の多く、特にハードウェア側の専門知識を持たないビデオアナリティクス企業が、今では当社の顧客になっている』ようで、同社エンジニアチームのレベルの高さがうかがえます。また、同社の商品はインストールも使用も簡単で、顧客にとって優しい設計となっているようです。

 

Diycamが得意とする分野

Diycamは主に (1)ホスピタリティ産業(2)銀行やATMなどの金融機関、そして (3)海運・物流産業にソリューションを提供しています。ホスピタリティ産業では、非接触エントリーシステム、コンプライアンス管理、ソーシャルディスタンスの確認を完全自動で行うことを可能に、金融機関の分野では武器や異常検知などのアラートシステム、支店内の顧客の足音の感知や、列に並ぶ顧客の管理、コンプライアンス管理の自動化を提供しています。海運・物流の分野では出荷港を出入りする車両の管理、港湾・倉庫の管理の自動化を可能にします。新型コロナウイルスのパンデミックはDiycamにとって追い風となり、コロナ渦の中、新規顧客を獲得することに成功したようです。

 

業界の展望とDiycamの今後

マシンビジョンの市場規模は2020年に96億ドルと評価され、2025年には130億ドルに達すると予測されており、予測期間中のCAGRは6.1%で成長すると予測されています。現在、Diycamは2つの特許を取得しており、現在3つ目を申請中です。2015年に設立されたDiycamは、最近日本と香港で事業を開始し、現時点でクライアント企業は30社を超えると主張しています。主要クライアントはSouthern Railway、McDonald’s、Ericsson、Standard Chartered Bank (ガーナ)、Hitachi Payment Services、Treasure Inc (日本)、Zicomなどです。同社はワンタイムフィーと製品のライセンス料の更新で収入を得ており、過去9ヶ月間で1,500,000ドル(約1億5640万円)以上の価値のある取引を行ったと主張している。また、事業と製品ライン拡大のための資金調達に関して日本とインドのVCと交渉中のようです。

 

テクノロジーとの共存。メリットとデメリット。

AIやML、今回取り上げたDiycam社が使用しているRPAなどは間違いなく私たちの生活をより豊かなものにしています。企業にとってもリスク削減、業務効率化、人件費削減といいこと尽くしです。しかしこのようなテクノロジーの発展によって失業者の増加や、デジタルデバイドが問題視されていることも事実です。技術の進歩に見合った政策や、教育方針を導入し、デジタルリテラシーを上げることで私たちの生活はさらに豊かになるでしょう。日本の技術は確かに優れているものの、日本はネガティブ面に意識を向けすぎるがあまり、変化が遅いように思います。Diycam社が日本で事業を始めたことが、日本の競合他社にとっていい刺激をもたらしてくれることを期待しています。

 

Source:Diycam、RPA導入のカメラを開発。業務効率化に貢献