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週刊インドトピックス

Vol.0069 Teslaが待望のインド進出。インドでEV車は流行るのだろうか?

Teslaがインドで子会社を設立

インド最大のスタートアップメディアであるYourStory社の2021年1月12日付けの報道によると、世界一の大富豪であり、TeslaのCEOであるElon Musk氏がついに待望のTeslaインド進出を実現したようです。企業登録庁の書類によると、EVメーカーのTeslaは1月8日、バンガロールで『Tesla India Motors and Energy Private Limited』という新会社を子会社として登記しました。同インド子会社の取締役にはグローバルシニアディレクターのDavid Jon Feinstein氏、最高会計責任者のVaibhav Taneja氏、起業家のVenkatrangam Sreeram氏が就任するようです。書類によると、この子会社は払込資本金1 lakhルピー(約14万2000円)、授権資本金15 lakhルピー(約213万円)で登記されています。今回のTeslaのインド展開は、2020年12月のThe Indian Expressの報道で、同社が2021年初頭にインドでの事業を開始することを明らかにした直後のことでした。2018年には、2019年までにインドに一部進出する計画をTwitterで明らかにしていたMusk氏でしたが、計画は予定通りにはいかず、昨年に改めて、2021年までにインドでの事業を拡大する意向を示していました。

 

Tesla子会社の役割

同子会社はEV車やエネルギー製品の部品・機器・付属品などの販売促進を担当、また、自動車の部品や付属品の購入・調達、エンジニアリング・技術支援・研修サービスの提供などを行うとのことです。

報道によると、カルナタカ州政府は電気自動車メーカーと投資のための協議を行っていたようです。同社はインドでの土地を探しており、カルナタカ州、マハラシュトラ州、グジャラート州、タミルナドゥ州、アンドラプラデシュ州の各政府と協議中であると報じられています。インドで最初に輸入販売されるTesla車は、モデル3で、輸入税などの関係もあり、価格は55〜60 lakh(約780万円~850円)程度になるとのことです。

 

インフラなどの問題を抱えるインドでのTeslaの展望

Narendra Modi首相は2019年より石油依存脱却、環境対策を目的にEV車の生産販売を推奨していますが、これまでのところ生産拠点や充電インフラなどに向けた投資の呼び込みがうまくいっていないようです。また、部品やバッテリーの現地生産が不足していること、EV車のコストが高いことから価格重視の市場では買い手があまりおらず、実際に昨年国内で販売された自動車240万台のうち、EV車はわずか5,000にとどまりました。

コンサルティング会社LMCオートモーティブの予測担当者であるAmmar Master氏は、少なくとも初めの5年間はTeslaがインドで販売できる「モデル3」の数はわずか年間50~100台だろうと予測しています。Master氏は『国として、インドはまだそれほど環境に配慮していないため、そこまでのプレミアムを支払うことはできない』と述べています。さらに、Teslaが求めている高度な自律走行機能が、インドの混雑した道路でどのように機能するかについても疑問視されています。インドの道路インフラは近年改善されてはいるものの、車線走行などの交通規律はまだ初歩的です。自動車アナリストによると、自動車線変更機能などのテスラの機能の多くは、インドの混雑した道路では導入が難しいとのことです。

TeslaのインドでのEV車の販売について悲観的な意見が多い中、米国を拠点とするWedbush SecuritiesのDaniel Ives氏は、今後7~8年以内にインドがTeslaの総売上高の5%を占めるようになる可能性があると述べています。Ives氏は加えて『しかし、成功の鍵は現地生産にある』と述べています。

自動車調査会社JATO Dynamicsによると、インド初の高級EV車であるMercedes Benz EQCは昨年10月に13万6000ドルで発売され、これまでに31台を販売しているようです。また、インドのTata Motorsが所有する英国高級車メーカーJLRは、3月までにEVのI-PACEを発売する計画を立てています。このように、インドでのEV車の存在感は少しずつ増してきており、今回のTeslaのインド進出はインドでのEV車普及にさらなる影響を与えることになるでしょう。今後インド政府がEV車に関する新政策を出すのか、また投資の呼び込みに力を入れるか気になるところです。Teslaにとって今年は、インドで上手く軌道に乗っていくための重要な1年となることは間違いないでしょう。

 

Source:Teslaインドで子会社を設立

インド進出したTeslaが直面する課題