India Weekly Topics

週刊インドトピックス

Vol.0077 コロナ禍で収益ゼロからの跳ね上がりを見せたBewakoofの戦略とは?

D2CブランドのBewakoof、ロックダウンで収益ゼロに

インド最大のスタートアップメディアであるYourStory社の2021年2月19日付けの報道で、D2C(※1)ファッションブランドのスタートアップであるBewakoofを取り上げています。

Bewakoofは2012年にムンバイを拠点にPrabhkiran Singh氏とSiddharth Munot氏によって設立された若者向けのファッションブランドで、FY20(※2)には20ルピー(約29億円)の売上を記録しました。しかし、新型コロナウイルスの安全対策であるロックダウンが全国的に発表された昨年3月にはその収益はゼロに向かっていたと発表しています。Myntra、Amazon、Ajioなどの強力なオンラインファッションブランドの存在にもかかわらず、8年以上も生き残ることができたBewakoofですが、『ファッションが生活必需品(Essentialカテゴリーから外れてしまうようになりロックダウンの影響で収益はゼロになり、いつ状況が好転するかわからない状態になってしまった』とSingh氏は述べています。しかし、この厳しい時代にいかにして生き残り、成功するかをいち早く考え始め、ビジネスプランを変更したことで今ではコロナ禍以前の収益レベルにまで回復しているようです。

では、Bewakoofは何に注目し、マーケティング戦略を行い、ビジネスプランを変更したのでしょうか?

 

ビジネスプランの変更で収益ゼロからの復活

まず第一にBewakoofは全国的なロックダウンを決して楽観視はしていませんでした。彼らは、ロックダウン規制は少なくとも3ヶ月間は存在すると想定し、その厳しい現実を受け入れた上で顧客の傾向分析に入りました。その中で顧客が必要としている商品が以前とは異なっていることに気づき、ロックダウン期間中に必要とされる商品に焦点を当てることにしました。当時インドではフェイスマスクの品薄状態が続いていたため、これらの製品を作るために製造ラインを改造し、その他にもパンデミック初期に需要が高かった消毒液などの製品も導入しています。そして、他の企業にも製品の販売を開始しました。

次に行った変更点は製造元を変えたことでした。コロナ禍以前は100%自社製造でしたが、製造を外部委託するようになり、今日では、全体の50%が外部で製造されているようです。さらに、大企業で働いていた経験を持つシニア人材を外部から採用し始め、テクノロジーチーム全体をバンガロールに移転することを決定しました。

このような様々なビジネスプランの変更を行う中でBewakoofにとって最も重要だったのは、顧客の行動と、パンデミックの影響で何がどのように変化したか、ということでした。Singh氏は『コロナ禍であらゆる産業がオンラインへシフトをしているのを見た。私たちはその傾向が今後も続くことを分かっていた。だから、長期投資をすることにした。』と述べています。

年間 599 ルピー(約870円)を支払う顧客ロイヤルティ プログラムも導入し、現在では収益の20%がこのロイヤルティプログラムからだそうです。その後、サイト上の顧客トラフィックが 1 日あたり約 40万人まで戻り始めたタイミングでポートフォリオを拡大することを決定し、サイトに他のサードパーティブランドを組み込み始めました。Bewakoofのサイトで見ることのできる他ブランドは、『オンラインでのプレゼンスを活用できていない零細企業家を含む、新しい時代のアパレル販売者』で、複数ブランドの商品を同サイト内で購入可能なため、消費者は自分に最も合った、差別化された商品を手に入れることができるようになり、そのことがBewakoofのブランド強化にも繋がったようです。

 

Bewakoofがコロナ禍で得た教訓

現在Bewakoof は急速に成長しており、FY22には売上高が30億ルピー(約43億7千万円)に達する見込みとのことです。Singh氏とMunot氏は『Covid-19のパンデミックがなければ製造のアウトソーシング、テクノロジーチームのシフト、サードパーティ販売者のオンボードなど考えられなかった。この1年未満にチャレンジしたことは過去5年間で行ったことよりもはるかに多い。』と説明し、『我々はイノベーションに必要な時間と労力を過大評価しすぎていたことに気が付けた』と締めくくっています。

新型コロナウイルスのパンデミックによって、それまで機能していたものがうまく回らなくなり、ほとんどすべての業界であらゆる変化が強いられました。コロナ禍をうまく乗り切り成功した企業の共通点として、今回取り上げたBewakoofのように現実を冷静に受け止め分析し、いち早く対策に乗り出している、ということが挙げられます。これはビジネスのみならず日常のあらゆる場面、生きていく上で成功するための重要な要素でもあるように思います。コロナ禍で大事な教訓を得たBewakoofが今後さらなる成長を見せてくれることを期待しています。

 

※1  D2C:Direct to Customerの略。自ら企画、生産した商品を広告代理店や小売店を挟まず、消費者とダイレクトに取引する販売方法。

※2 FY20:会計年度2020年。2019年4月1日から2020年3月31日までの期間

 

Source:D2CブランドのBewakoof