India Weekly Topics

週刊インドトピックス

Vol.0078 安心安全、環境にもやさしい子供向けアート製品を届けるDabble

 

子供向けの安全なアート製品を提供

インド最大のスタートアップメディアであるYourStory社の2021年2月22日付けの報道で、子供向けの無害なアート製品を製造しているDabble』を取り上げています。

Dabble は2018年5月にKaren Saldanha氏とNeha Bajaj氏によってバンガロールを拠点に設立され、0歳から6歳までの年齢層を対象に、オーガニックの絵の具、クレヨン、アートキットを製造しています。現在42歳のSaldanha氏と39歳のBajaj氏はともに子をもつ母親で、市場に出回っている子供向けアート製品の安全性に懸念を抱いていたことがDabble誕生のきっかけでした。Dabbleのクレヨンは一般的に出回っている石油の副産物であるパラフィンワックスを原料としたクレヨンとは異なり、オーガニックの蜜蝋を原料に作られています。そして、握りやすく、他のクレヨンのように簡単に割れない、楽しい形のものを揃えているようです。また、パラフィンワックス原料のクレヨンは分解に100年かかり、埋め立て地の酸素濃度を下げるという問題もあるため、Dabbleのクレヨンは環境にも配慮された製品ということになります。各製品は化学者と食品技術者チームのサポートの元で開発され、政府機関である国家試験・校正試験所認定委員会の認定を受けた試験所でテストされているとのことです。

 

 

Dabbleが誕生に至るまでの背景

創業者の2人の出会いはバンガロールでのアートセラピーでした。講座を受講するうちに2人は仲良くなり、出産もわずか4日違いということで一気に距離が縮まったようです。Saldanha氏とBajaj氏は互いに海外から安全なアート製品を調達していましたが、インド国内でも安全な選択肢があるべきだという結論に至りました。2人は『私たちには子育てに対する共通のイデオロギーがあり、アートは私たちの心と家庭の中に特別な場所を持っていた。』と述べています。そして『我々の子供だけではなく、世界中の子供たちが安全にアートを楽しめるべきだ』と付け加えています。

自分たちでクレヨンを作ろうと決意した2人は、何ヶ月もかけてクレヨンや天然ワックスを研究し、最初の実験はNehaさんのキッチンで行われました。そして2017年8月に最初のクレヨンを作ったそうです。自分たちの子供や友人の子供たちに使ってもらう中で徐々にビジネスアイデアが発展し、初めてのクレヨンの製作から約9か月後に、幼児期セグメントの製品にイノベーションと安全性をもたらすことを目標に会社登記しました。安全性に加えて、PlayArtと呼ばれる製品のカテゴリーを導入しており、動物や車などさまざまな形をしたクレヨンを揃えているようです。また、Dabbleはフィンガーペイントのトレンドをインドにも持ち込みました。『絵の具で遊ぶ感覚的な体験は楽しいだけでなく、認知、運動、言語発達の面でもメリットがある。私たちのフィンガーペイントにはココナッツオイルとスイートオレンジオイルが含まれており、多感覚的な刺激を与えてくれる。』とBajaj氏は説明しています。

 

Dabbleの競合と価格設定

インド国内で同様に無害のクレヨンやカラー製品を取り扱っている、Faber-CastellCelloCamel などのブランド、そしてXingliToykraftArtBeeAzafranRe-PlayJirax などの中小企業がDabbleの競合企業です。

Dabbleの製品の価格は400~2,000ルピー(約580円~2900円)で、他ブランドの製品に比べてやや割高なコスト設計になっています。例えば、ArtBeeのクレヨンは369ルピー(約535円)ですがDabbleは450ルピー(約650円)、Toykraftのフィンガーペイントは546ルピー(約790円)で販売されていますが、Dabbleは649ルピー(約940円)で販売しています。しかしSaldanha氏はDabbleの 本当の競合はスクリーンだと言います。『我々の間接的な競争相手は、スクリーンを介した受動的な娯楽だ。しかしそれでは子供たちの想像力は発達しない。』と述べています。

同社の製品は、ウェブサイトだけでなく、Amazonなどのeコマース・プラットフォームでも手に入るようです。

 

今後の事業拡大計画

Saldanha氏によると、Dabbleは2年足らずで7,000人以上の顧客を獲得しており、パンデミックと昨年のロックダウンにもかかわらず、2021年に100%の売上高成長と25〜30%の営業利益率を達成しようとしているそうです。Dabbleは、カルナタカ州政府の情報技術、バイオテクノロジー、科学技術部から社会的影響と革新の分野で表彰され、250万ルピー(約360万円)を製品研究のための助成金として獲得しました。Dabbleはこの助成金を使って規模を拡大し、より多くの製品を追加し、オンライン配信に焦点を当てることを計画しています。また、現在チームは5名の母親で構成されていますが、今後2年間で20人程度に拡大することを予定しているようです。

近年インドでは若者を中心に健康に気を遣う人が増えてきており、「高くてもよりよいものを」求める動きがあります。この動きは今回取り上げたDabbleのような子供向けの製品も同様です。むしろインドでは子育てや教育に熱心な家庭が多く、自分よりも子供の健康や教育を優先するという傾向があります。また、国全体としても環境問題に力を入れているため、Dabbleのような環境にやさしい製品を取り扱っている会社は今後ますます増えてくるでしょう。中所得総人口も増えてきており、必要最低限プラスアルファを追求することができる人口が増えてきているので、今後同市場がどのように盛り上がっていくのか楽しみです。

 

Source:子供向けの無害なアート製品を製造するDabble