India Weekly Topics

週刊インドトピックス

Vol.0081 政府の機能の在り方を再定義するGovTechのPixelvide

GovTechが政府に与える影響

インド最大のスタートアップメディアであるYourStory社の2021年2月26日付けの報道で、ハイデラバードを拠点とするGovTech(※1)スタートアップの『Pixelvide』を取り上げています。

新しいテクノロジーは、政府のインフラを改善し、世界中の人々の生活を変える可能性を秘めています。政府はテクノロジーを採用することで、セキュリティ向上などの恩恵を受け、従来の国民との交流方法をより良くすることが可能となります。インドでも、政府機関がテクノロジーを導入し始めたことで、より透明性と効率性の高いサービスを国民に提供できるようになりました。PixelvideもGovTechのひとつとして、全国のいくつかの州政府で重要な役割を果たしています。

同社は創業者のPrathyush Jeereddy氏がまだBITS(※2)Pilaniハイデラバードキャンパスの学生だった2011年に設立されました。Jeereddy氏は『当時5人のメンバーでテクノロジーをベースとした製品をいじっていた時に政府機関に紹介され、その後様々な政府部門向けにいくつかの製品を開発した。そんな中、ガバナンスにおけるテクノロジー製品の可能性に気付いた。』と述べています。それ以来、Pixelvideチームは、何十年にもわたって存在してきた大きな問題に取り組む政府を支援するために、ニッチなテクノロジーをベースにしたソリューションを開発してきました。

 

Pixelvideのフィンテック分野での活躍

過去5年間にPixelvideが貢献してきたもののいくつかは、主にフィンテック分野でした。同社は過去3年間に、州の財務部門向けに多くのプロセスをデジタル化するアプリケーションの開発に着手しました。同社の主力製品である統合財務管理情報システムIFMIS:※3)は、インドで最も優れた財務管理ソリューションの1つであり、政府が支出、歳入、予算、公約、債務を1か所で管理するのに役立ちます。

PixelvideのIFMISは、州政府が公的資源管理の有効性と透明性を高め、手段と方法を管理し、州の財政をより効果的に分析できるように支援してきました。『IMFなどの国家機関は、優れた財務管理情報システムFMIS:※4)の重要性を認識しています。FMISは、国の予算改革アジェンダや成長の見通しを示す重要な指標と考えられている。』とPixelvideのプロジェクト担当副会長であるRohith氏は述べています。

 

その他の分野での活躍、今後の見通し

直近1年間、Pixelvideは、スマートメーター(※5)インフラ土地の権利関連情報のデジタル化交通自動化システムなどの分野に進出してきました。Pixelvideのスマートガバナンスのビジョンの一例となるツールは、エネルギーメーターの遠隔読み取り、監視、制御を可能にするIoTベースの製品である『DCT Box』です。これは、電気エネルギーメーターに接続すると、設定された周波数や需要に応じてデータを収集できる外部デバイスで、コストやエネルギー使用量が正確に分かるようになっています。DCT Boxは、さまざまな目的を持つ、あらゆるタイプの利害関係者にリアルタイムデータを提供するために、高度なメータリングインフラストラクチャ(AMI ※6)をどのように実装できるかを示しています。Pixelvideは、インド全土でAMIを導入することで、自動課金、消費パターン分析、電力需要予測、無料電力供給のための効果的なモニタリングなど、将来の電力セクターのソリューションへの道が開けると確信しています。

Pixelvideは、土地情報のデジタル化の分野でも独自のソリューションでイノベーションをもたらしました。報告書によると、インドでは推定770万人が250万ヘクタールの土地をめぐる紛争の影響を受けており、数百万ドルの投資が脅かされているそうです。土地所有記録の透明性の欠如は、作物の生産を遅らせるだけでなく、法廷での訴訟の長期化を助長しています。また、別の報告書では、インドの民事事件の約66%が土地・不動産に関する紛争であり、その結果、裁判所は混雑し、インドのGDPの約0.5%が失われていると発表しています。これを解決するためにPixelvideは、土地記録を調査・検証し、所有権と所有地の境界を決定することで、インド全土に包括的な所有権システムを導入する計画をたてているようです。ブロックチェーン技術を使って収集したデータを保存することで、安全性の高い所有権の記録を提供することを計画しています。中央サーバーや中央アーカイブでは、データが失われた場合、すべてクレームにつながりますが、ブロックチェーンでは、情報が失われることはないので安心です。

 

個人的にGovTechというワードはこれまであまり耳にしたことがありませんでしたが、テクノロジーとガバナンスの融合によって政府サービスの効率性を高めたり、新たなソリューションをもたらすことができるとても重要な分野だと感じました。特に政府が関係してくるとなると、規制やその他複雑な問題が関係してくるため一筋縄ではいかないところもありますが、その分慎重に、安全で効果のあるサービスを選択することで社会全体にとって素晴らしい変化が期待できると思います。今後もPixelvideやその他のGovTechスタートアップの動きに注目していきたいと思います。

 

 

※1 GovTech:Government(政府)とTechnology(技術)を掛け合わせた造語。技術を積極的に利用することで、中央省庁や地方自治体の行政サービスなどをよりよいものにすること。

※2 BITS:Birla Institute of Technology and Scienceの略。

※3  IFMIS:Integrated Financial Management and Information Systemの略。統合財務管理情報システム。

※4 FMIS:Financial Management Information Systemの略。財務管理情報システム。

※5 スマートメーター:通信機能を備えた電力メーター

※6 AMI:Advanced Metering Infrastructureの略。先進的なメータリングインフラストラクチャ

Source: GovTechスタートアップのPixelvide