India Weekly Topics

週刊インドトピックス

Vol.0105 インドフィンテックZeta、ソフトバンクの資金調達でユニコーンに

インド最大のスタートアップメディアであるYourStory社の2021年5月24日付けの報道で、ソフトバンク・ビジョン・ファンドから2億5000万ドルを調達し、インドで14番目のユニコーン企業(※1)となったフィンテックスタートアップのZetaを取り上げています。

 

金融サービスに革新を起こすとの期待がかかる『Zeta』がユニコーンに

Zetaは2015年にBhavin Turakhia氏とRamki Gaddipati氏によって設立された、銀行やフィンテックのサービス開発を手助けするスタートアップです。現在インドを拠点に北米、英国、フィリピン、ベトナムなどに進出しており、25社以上のフィンテック企業や、HDFC銀行、Kotak Mahindra銀行、IndusInd銀行、Yes銀行、RBL銀行、Axis銀行など10行と取引を行っています。

今回、日本の大手投資会社であるソフトバンクから2億5,000万ドルの資金調達を行ったことで、同社の評価額は14億5,000万ドルとなり、ユニコーン企業となりました。この2億5,000万ドルという数字は、銀行業務を行うスタートアップ企業への単独投資としては、世界最大級の規模です。ソフトバンク・インベストメントのマネージング・パートナーであるManish Varma氏は『Zeta社の最新のオムニスタック(※2)は、デジタル社会に慣れた消費者に対応する銀行ソフトウェアのアップグレードをもたらし、世界的な金融サービスの革新を促進するだろう。銀行のソフトウェアは、世界で3,000億ドル規模の産業である。しかし、ほとんどの銀行は、いまだにかなり古い技術を採用しており、ユーザー体験やエンゲージメントに影響を与えている。』と述べています。

今回調達した資金の使い道として、同社は「米国、欧州、およびインドにおける成長の拡大」、「高まる需要に対応するために、チーム、プラットフォーム、オペレーションを拡大」することを予定していると述べています。具体的に、『今後18ヶ月以内に世界のトップレベルの銀行250行にリーチを広げ、セールスとマーケティングのスタッフを5倍に増やし、全世界で200〜250人にする』とTurakhia氏は述べています。

 

 

Zetaのサービス内容とセリングポイント

他社との差別化の点において、Turakhia氏は次のように説明しています。『ほとんどの銀行は、メインフレーム(※3)やCOBOL(※4)が流行っていた頃に作られた1980年代のソフトウェアをいまだに使用しており、それによって劣悪なユーザー体験を提供している。また、これを改善するために銀行は何十というベンダーや技術パートナーと提携しなくてはならない。これまで銀行向けスタックを1から作ろうと考えた者は誰一人いなかった。Zetaの最新クラウドネイティブプラットフォーム(※5)を使うことで、金融機関は市場投入までのスピード、システムの反応速度、収益に対するコストの割合、ユーザー体験を向上させることができる。』

銀行やフィンテックのサービス開発援助プラットフォームとして、Zetaのオムニスタックは、最新のクレジットカードおよびデビットカードの処理、コアバンキング、モバイルエクスペリエンスなどのサービスを開発・提供しています。同社のオープンテクノロジー(※6)とAPI(※7)プラットフォームを使うことで、銀行はより多くのパートナーを招き入れ、ユーザー体験を高めることのできる、最新のプリケーションを構築することができるのです。

 

Zetaは今後世界を代表するフィンテックになるのか?

スマートフォンを使った銀行取引や、ブロックチェーンなどが流行し、そのようなシステムが銀行にとってかわるという議論がここ数年熱を増しています。実際に銀行系システムはデジタル化が進んだ現代でも、マニュアル式で行われていることが多く、「効率が悪い」「手間がかかる」と感じている人は多いのではないでしょうか?この誰もが認識してはいたものの、見落としていたスペースにZetaは上手く入り込んできたように思います。ただ単にフィンテックサービスを開発するのではなく、フィンテック企業と銀行を繋ぐプラットフォームとなったことで、両者にとって必要不可欠な存在になるでしょう。今回得た資金を活用し、規模の拡大、提携企業・銀行を増やすことでその後雪だるま形式に提携企業数・銀行数が増えることが想定できます。

古臭いなどの印象が強いメインフレームですが、高い信頼性、サポートライフサイクルの長さ、圧倒的な処理性能、互換性の高さという特徴もあるようです。各銀行が上手くZetaのプラットフォームを活用し、メインフレームのいいところを残しつつ、ユーザーの体験価値を高めることのできる新サービスを導入することで、今後どのような革新を生み出すのか楽しみです。

 

 

※1 ユニコーン企業:評価額が10億ドル以上の未上場のスタートアップ企業のこと。
※2 オムニスタック:同社が開発したソフトウェアのこと
※3 メインフレーム:フィンテックやブロックチェーンが流行る以前の銀行勘定系システムのトランザクションを処理する唯一のシステム
※4 COBOL:メインフレームで稼働する銀行勘定系システムで使用されている言語
※5 クラウドネイティブプラットフォーム:クラウド上で動くことを前提にクラウドならではの特性を活かせるよう設計されたシステムを搭載するプラットフォームのこと
※6 オープンテクノロジー:誰でもそのプラットフォームやシステムに入れるような仕組み
※7 API:Application Programming Interfaceの略。ソフトウェアやアプリケーションなどの一部を外部に向けて公開することにより、第三者が開発したソフトウェアと機能を共有できるようにするもの。

 

Source:Zetaがソフトバンクからの資金調達で待望のユニコーンに
Zetaのサービス内容

Zeta:https://www.zeta.tech/us