India Weekly Topics

週刊インドトピックス

Vol.0106 ローコード/ノーコードでのアプリ開発サポートをするZvolv

インド最大のスタートアップメディアであるYourStory社の2021年6 月12日付けの報道で、コーディングを極力使用しない、あるいはコーディングを一切使わずしてカスタマイズ可能なアプリを構築できるよう支援しているZvolvを取り上げています。

 

Zvolvが生まれた背景

2015年にプネを拠点にHardik P Gandhi氏、Pushkar Prasad氏、Sujoy Chakravarty氏の3人によって立ち上げられたZvolvはローコード、ノーコードの技術を提供することでビジネスのスケールアップを支援しています。同社のターゲットは主に中小企業です。というのも、今日、ほとんどの企業はプロセスのためにSAP、Oracle、Salesforceなどのツールに投資していますが、中小企業はそれらを購入したり維持したりする余裕がないことが多いのです。そのような中小企業がZvolvのサービスを利用することで、初期費用をかけず、また大規模ITソリューション企業に依存することなくカスタマイズ可能なエンタープライズアプリケーションを構築できるようになります。

『世に出回っている旧来のツールは、データの保存と管理には長けているが、エンドツーエンドのプロセスを追跡・管理するには最適ではない。これらのツールで新機能を開発するには、時間とコストが非常にかかってしまう。そのため、旧来ツールを利用できるのは組織の一部に限られてしまっている。』と、Gandhi氏は語っています。加えて『このような旧システムに保存されているデータは非常に重要なため、ツールの変更にはリスクが伴ってしまう。このような理由から多くの企業は社内プロセスの一部または多くを外部企業に頼り、自社ツール外で処理せざるを得ないのである。これは効率性の悪さを生み出している原因でもある。』と述べています。

 

Zvolvのビジネスモデルと他サービスとの違い

Zvolvでは、すべてのお客様に「ホワイトグローブ・オンボーディング・パッケージ」を提供しており、Zvolvのビジネスアナリストとシステム導入の専門家が顧客と協力して最初のアプリケーションを構築し、その後使用していくうえで必要な知識を得てもらうためのトレーニングの提供、システム変更管理サポートを提供しています。

ここが、他のセルフヘルプツールとの違いです。他のセルフヘルプツールのように試行錯誤しながら学習や実装を行うよりも、Zvolvの手厚いサポートのおかげでアプリケーション導入後からリターンを得られるまでの期間がはるかに短く、また安定した収益を期待できます。

『ドラッグドロップ式のビジュアルビルダー機能により、コーディングの経験がほとんどないユーザーが、アプリケーションの大部分を自分で組み立てることが可能だ。他のツールとの統合や複雑な自動化にはITスキルが必要になるかもしれないが、それも特定の技術に特化した経験豊富なエンジニアではなく、一般的なITスタッフで解決するだろう。』とGandhi氏は説明しています。

Zvolvは、アプリケーションの構築に利用されるビルディングブロック(※8)の数に応じて、年間ライセンス料を請求しています。アプリケーションの使用範囲や使用頻度ではなく、企業が使用するブロック数に応じて課金します。これにより、ユーザーはライセンスコストの増加を気にすることなく、ベンダーやパートナーに対してより広範囲にアプリケーションを提供することができます。

競合には、Our Systems(※1)、Unqork(※2)、Zoho Creator(※3)、Appian(※4)、Salesforce Lightning(※5)などがあります。

 

製品開発からこれまで

Zvolvの製品開発は、製品テストを兼ねて、中小企業を対象とした実験から始まりました。製品開発全体にかかった費用は、Gandhi氏とChakravarty氏が初期投資した約20万ドルのみで、同プロセスはブートストラップ方式(※6)で行われたようです。

2018年には、顧客向けに提供を開始し、同年にはLead Angels、 Eagle10 Networkからシードラウンドでの調達に成功しました。このスタートアップの初期の顧客には、Future Group、Dominos、Titanなどがあり、現在もZvolvの製品を使用しています。

『私たちはまず、インドで製品を作り、インド企業を対象にテストすることにした。収益の実現には不安があったが、今のところは納得のいく結果だ。しかし、インド人顧客の場合、製品の評価や意思決定にかかる時間が非常に長く、これは現在も引き続き取り組んでいる課題である。』とGandhi氏は述べています。

 

コロナ禍下でのターゲット変更と今後の展望

当初は、Aditya Birla Group(Pantaloons)、Lenskart、Swiggy、More supermarketsなどの小売業の顧客を対象にスタートしましたが、パンデミックにより状況は一変しました。コロナウイルスの影響で、小売業の新規契約が停滞してしまったようです。他の分野に注力せざるを得なくなったZvolvは、今では、製造業、ヘルスケア、大規模なサービス機関、さらには政府プロジェクトなどの顧客を抱えているようです。

BrandEssence Market Research Globalのレポートによると、ローコード開発プラットフォーム市場は、2027年までに651億5000万ドルに達すると予想されています。

今後は、インドでの成功をAPAC、中東、米国市場でも再現することを目指しているようです。これらの地域では、KPMG、Accenture、Tech Mahindraなどのコンサルティング会社や販売パートナーと提携してGTM戦略(※7)を構築していくようです。また、今後1年半の間に収益を4~5倍に成長させることを目標としており、収益の大部分はインド国外からを期待しているようです。

 

コロナウイルスの流行によってオンラインのサービス提供、オンライン上で顧客やプロセス管理が完結することの必要性が一気に増しました。これまでアプリケーションの開発に費用を割くことができず、マニュアルで対応していた中小企業も、今ではほとんどがオンライン化を検討していると思います。このような、アプリケーション開発にコストをあまりかけることのできない中小企業や、個人経営者にとってZvolvのサービスは魅力的なものだと思います。今後、ローコード開発プラットフォーム市場は勢いが増していきそうです。

 

Zvolvの競合他社

※1  Our Systems:https://www.oursystem.info/
※2  Unqork:https://www.unqork.com/
※3  Zoho Creator:https://www.zoho.com/creator/
※4  Appian:https://appian.com/
※5  Salesforce Lightning:https://www.salesforce.com/in/

※6 ブートストラップ方式:外部の入力を必要とせずに実行される、自己開始型のプロセス
※7 GMT戦略:Go-to-Market戦略の略。自社の商品やサービスをどのような流れで顧客へ届けるかを取りまとめたもの

 

Source:ローコード、ノーコードでアプリ開発できるZvolvのサービス

Zvolv:https://www.zvolv.com/