【インド駐在員の生存戦略】行政手続きから交通・病気のリスク管理まで徹底解説
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インドに降り立った瞬間、日本の常識は崩れ去ります。論理破綻した「行政手続きの死のループ」や、日本の60倍もの交通事故死者数を生む「戦場のような道路」など、お客様気分でいれば命に関わるリスクさえあります。
本記事では、インドという過酷な環境で生き残り、ビジネスを成功させるための「生存戦略」を、行政・安全・衛生・食・コミュニケーションの5つの観点から徹底解説します。
インドは「動物園」ではなく「サファリ」である
インドに移住してから、人間もやっぱり動物なんだなーってよく感じるんですけど、この点において、これからインドに駐在される方、あるいはインド移住を検討されている方にぜひお伝えしておきたいのが、日本という国は、高度に管理された最先端の「動物園」みたいな場所だということです。美味しいご飯は出てくるし、檻の中で安全も保障されていて危険にさらされることはそうそう無い。ただ、インドはそこがぜんぜん違います。
インドはもはや広大な「サファリ」みたいなもんなんですよね。野生の人間がうじゃうじゃいる世界に放り込まれてしまう感覚というか、日本の常識はまったく通用しないし、「お客様」気分で生活していると痛い目を見るどころか、最悪のケース、生命の危険にさらされるリスクさえもあります。
【行政の壁】FRRO・PANカード・銀行口座の「死のループ」をどう抜けるか?
まずは、インド生活の立ち上げで誰もが最初にブチ当たる壁、「行政手続きの死のループ」について解説します。
インドに降り立って、「さあ新生活だ!」と意気込む駐在員を待ち受けているのは、猛暑でもスパイスでもなく、論理的に破綻した行政のデッドロックです。仕事どころか、生活の立ち上げの段階からサバイバル感満載なので解説をしていきます。
まずインドに長期滞在するにはFRRO登録が必要なんですけど、外国人専用の住民登録みたいなもんですね。でも、このFRROを申請するには「住所証明」が必要なんですね。 で、家を借りようとすると、オーナーから「PANカード(いわゆる納税者番号)を出せ」と言われる。じゃあこのPANカードを作ろうとすると、「インドの住所証明」が必要になる。 さらに、家賃を支払うためには銀行口座が必要になりますけど、銀行口座を作ろうとしたら「FRRO登録証明書」と「PANカード」を出せ、って言われるわけです。つまり、まずどれか一つを持っていないと、永遠に手続きが終わらないというまさに詰んじゃってる状態。事前にその抜け道や解決策を見つけ出せていればいいんですけど、すべてを同時に進めるのはなかなか難しいので、ほとんどのケースで日本という動物園の檻の外に出た瞬間からこういうたらい回しのサファリパークを経験することになります。
※インド渡航直後から生活立ち上げの手続きはこちらの記事(日本人駐在員がインド赴任前に知っておくべきこと5選)もご覧ください。
【安全対策】交通事故死者数は日本の約60倍。命を守る「戦車(SUV)」戦略
次に、インドの交通事情です。
ここははっきり言いますが、インドの道路は「戦場」です。 日本の交通事故死者数が年間2,600人くらいなのに対して、インドは年間16万人以上。毎日470人以上、つまり3分に1人が交通事故で亡くなっている計算になります。
運転がむちゃくちゃアグレッシブなドライバーもいれば、逆走してくる対向車もいます。重たそうな荷物を今にも横転しそうなぐらいたかだかと積んでいるトラックもいれば、突然ウシが飛び出してくることもあります。
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なので、ここで生き残るためには「戦車」に乗ることです。 日本だと燃費の良い小型車も人気ですけど、インドの路上で小型車に乗るのは「動く棺桶」に乗るようなものなので、トラックやバスが幅寄せしてくる弱肉強食の世界では、物理的にデカくて頑丈な車、中型以上のSUVを選んでおくのが無難です。 そして、自分のドライバーがもし荒い運転をしたら、とにかくゆっくり走ってくれ、と粘り強く伝える、それでも直らなければ速攻クビにしてドライバーを交代させる。この非情な決断が、自分自身の命を守ることになります。
【衛生・健康】デング熱と輸血のリスク
続いては、見えない脅威、「衛生と病気」についてです。
インド駐在員にとって最大の敵の一つが「デング熱」です。これ、ただの高熱だと思って甘く見るとマジでヤバいんですよね。重症化すると血小板が急激に減って重度の出血や、命にかかわるデングショック症候群を発症するリスクがあります。
そしてもうひとつ衝撃的な事実をお伝えすると、 インドの病院では、輸血が必要になった時、病院側が血液を用意してくれるとは限りません。輸血用の血液が常に不足しているインドにおいては、例えば、患者の家族や友人が、必要な分の血を献血してくれて初めて輸血ができる、という状況になっている地域や病院はまだまだ結構あるんですよね。
高熱で意識が朦朧としている中で、自分でドナーを探さなきゃいけないなんて、想像しただけでゾッとしますよね。だからこそ、事前に信頼できる病院をリストアップしておくこと、そして緊急時に助け合える日本人ネットワークを作っておくことも生存のカギになります。
あとは、水ですね。インドの水道水は飲めないのでRO浄水器をつけるのが一般的ですけど、このフィルター交換、日本みたいに1年に1回とかじゃぜんぜんダメです。水質が悪すぎてすぐ詰まって、逆に雑菌の温床にもなり得るので最低でも3ヶ月に1回はメンテナンスとフィルター交換をする。これぐらい神経質になってちょうどいいくらいだと思います。
【仕事術】「I will try」を信じない。愛を持ったマイクロマネジメントの必要性
次はコミュニケーションの地雷原についてです。
まず、インド人の「Yes」は、日本人の「Yes」とはまったく意味が違うんですよね。「I will try」と言われたら、それは基本的に「99%無理です」という意味だと思った方が自分のためです。 彼らの独特の首振りも、「No」に見えて実は「OK」だったり、単に「聞こえてるよー」というだけの合図だったりもします。このインド独特の通信プロトコルを読み解けないと、仕事はぜんぜん前に進みません。
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なので、基本的には徹底的な「マイクロマネジメント」が必要です。インドでは「任せた」と言って本当に任せてしまうのはほぼ育児放棄と同じで、放っておくと「この仕事は重要じゃないんだな」と勝手に勘違いされていつのまにか忘れ去られてしまうといったことにもなります。なので、メールを送ったあとに電話で説明をする。口頭で伝えたことをWhatsAppであらためてメッセージで送り、毎日しつこいくらいに進捗を確認する。「私はあなたを見ていますよ」という”見てるよ光線”を送り続けることと、「この仕事は重要なんだよ」という熱意を伝え続けること。野生のサファリで生き抜いていくためには、これを面倒くさくても「愛」を持ってやり続けるしかないわけですね。
【食事】日本食のハンドキャリーで活力を維持する食生活
最後は「食」の生存闘争です。
インド駐在員では気がつくとこの生物としての原点に立ち返ることになります。牛肉や豚肉、新鮮な魚はなかなか手に入りません。インド人って本当に毎日カレーばっかり食べてるんですよね。そして、さすがにインド駐在員は毎日インド料理ばかりだと精神的にも参ってしまいます。 食欲が落ちると、食事の量も減って、活力も落ちて、メンタルもやられちゃいます。つまり、日本にいたころは当たり前だった「食べたいものを食べる」というのではなく、インドでは「生きるために食べる」んですよね。
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その代わりに、一時帰国のたびにスーツケース一杯の日本米やレトルト食品をハンドキャリーで持ち込む、このハンドキャリーという戦術は、もはや密輸ではなく生存のための兵站活動(へいたんかつどう)です。 最近はデリーやグルガオン、ベンガルールなどの主要都市で日本食材を入手できるルートも少しずつ増えていますけど、やっぱり限界がありますよね。お気に入りのインド料理やレストランが見つかればいいですけど、そんなにたくさんあるわけではないので、インド駐在員はインドで買える食材でなんとか「日本の味」を再現したり、たまには海外にも逃亡しながら、この過酷なサファリパークをギリギリ生き抜いているわけですね。
さて、皆さん、いかがでしたでしょうか?今回は、インド駐在員がインドで生き残るための生存戦略というテーマでインド生活の実態を考察してみました。これからインドに駐在される方はぜひ参考にしていただければと思います。
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