Indian Accounting & Taxation

会計税務

E-29. インドの関税およびSVB当局対応について

(文責:田中啓介 / Global Japan AAP Consulting Pvt. Ltd.)

1.RCEP交渉からの脱退を表明したインド

インドは、2019年11月にRCEP(東アジア地域包括的経済連携)協定にかかる交渉からの脱退を表明しました。そして、ついに日本と中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の15カ国が2020年にこの協定に署名をしました。

引き続きインドが復帰することを可能とする特別措置も設けられているものの、「メイク・イン・インディア(Make in India)」政策を掲げるモディ政権は、今のところRCEPへの参加については否定的です。

インドは従来から輸出促進政策に力を入れてきており、2020年のコロナ禍においても「自立したインド(Atmanirbhar Bharat)」を発表して、地場製造業や畜産業などを中心とした自国産業を保護する傾向をさらに強めています

特に畜産業においては、安価なオーストラリア産やニュージーランド産の乳製品の流入を回避するべく、モディ首相が州首相であった時代のお膝元でもあり、酪農協同組合の発祥の地でもあるグジャラート州のインド最大の酪農共同組合連合会から、RCEP交渉に対する強い反発がありました。

また、毎年巨額の貿易赤字を計上しており、かつ、国境問題でも関係が悪化する中国の経済的影響力を考えると、モディ政権としては難しい判断を迫られているものと推測します。

2.インドの間税制度についてざっくりと理解する

何らかの物品をインドに輸入する際には、関税が課せられます。2017年にGST税制が導入されて以来、物品およびサービスの輸入については基本的に「州間取引(州をまたぐ取引)」と見なされ、以下のような税金が課せられることとなります。

基本関税を10%、社会福祉課徴金を10%、IGSTを18%、GST補償税を10%と仮定した場合、30.98%の実効税率に加えて、一部の品目についてはGST補償税が追加されて、32.08%となります。輸入時に支払ったIGSTはInput Credit(仕入税額控除)として計上・申告でき、将来のGST課税売上において顧客から受け取るGST Outputと相殺することができます

項目 税率 関税額
基本関税(BCD) 10% 10.00
社会福祉課徴金(SWS) 10% 1.00
BCD * 10%
統合物品・サービス税(IGST) 18% 19.98
(BCD+SWS)* 18%
物品・サービス(GST)補償税
GST Compensation Cess
10% 1.10
(BCD+SWS)* 10%

なお、基本関税の税率は、品目ごとの関税分類番号(HSコード)に基づき規定されていますが、その中にある「その他」という分類については規制品目を逃れるため、また、高関税率を免れることを目的に悪用されていた実態がありました。インド政府はこのような背景を受けて、2020年1月17日付の通達により、今後は「その他」分類による輸入については、いずれのHSコードに該当しない等やむを得ない場合を除き、輸入規制対象としてライセンス取得の義務づけや高関税率の適用等の規制を厳しくしていく旨を発表しました。

3.関連者からの輸入時にかかるSVB当局対応とは?

日系メーカーや商社など日本およびグループ会社からの物品をインドに輸入する場合に、日系企業を苦しめているのがSVB当局の手続きです。

SVB(Special Valuation Branch)とは、関連者からの物品輸入価格が妥当かどうかを評価・判断する関税当局の機関で、物品を輸入する際に提出する輸入申告所(BOE : Bill of Entry)において輸出者が関連者である場合において対象となります。

SVB当局の手続き対象者は、輸入申告書に加えて質問表(Questionnair : Annex-A)に対する回答を提出することとなり、SVB担当官はこの回答を確認・検討をした後、さらなる調査を継続するかどうかを決定することとなります。

もし、質問表への回答を確認・検討の結果、さらなる調査が必要と判断された場合には、追加でさらに質問表(Questionnair : Annex-B)が届き、60日以内にその回答および関連書類の提出が求められます。60日以内の回答が難しい場合には5%の保証金(最長3ヶ月)を支払うことで期限を延長することが可能となっています。


(※従来までは、質問表への回答と合わせて輸入評価額の1%を追加関税預託金(EDD:Extra Duty Deposit)として預託、また、30日以内に回答ができない場合には5%のEDDを預託することが求められていましたが、当該制度は廃止されています。)

会計税務

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