Indian Accounting & Taxation

会計税務

E : インド税制の概要と日系企業が理解すべき税務リスク

【インドの税制について全体像を理解する】

インドの税制は複雑かつ税務リスクが高いと言われ続けて久しい。2017年7月に新しく導入された新税制GST(Goods and Service Tax : 物品・サービス税)により、インドの税制は簡素化されるとの大きな期待がありましたが、2020年現在も依然として大幅に改善がなされたような状況とは言えません。その主な理由として(1)税法の不十分な定義と不明瞭な規定、(2)通達等による度重なる制度変更、そして、(3)不可解な税務調査や税務訴訟事例などが挙げられます。特にGSTについては、導入されてからまだ年数が経過していないだけに、判断が求められるケースにおいて通常であれば参考とすべき過去の判例や事前確認制度当局(AAR : Authority of Advance Ruling)の判断結果などのアクセスできる根拠データがまだ十分に出揃っておらず、適切な税務判断をタイムリーに実施することは簡単ではありません。典型的な事例として、以下リンク先のコラム「取締役の報酬に対するGST課税論争の行方はいかに」をぜひご覧ください。

Vol.001 : 取締役の報酬に対するGST課税論争の行方はいかに。

 

【源泉所得税TDSと物品・サービス税GST

さて、インドに進出する日系企業が理解をしておくべき税制はたくさんありますが、事業計画の前提となっている取引スキームの課税関係を正しく理解しておくという点において、やはり源泉所得税TDS(Tax Deducted at Source)とGSTの理解は極めて重要でしょう。つまり、自社の顧客およびサプライヤーやサービスプロバイダー等との取引や、親会社やグループ会社間との取引においてどのような課税関係が発生するのか、税務コストの観点から最適な取引スキームになっているか、税法上の理解のとおり実務上でも無理なく運用が可能か(例えば、還付されるはずの税金は本当にすぐに還付されるのかなど)、また、想定される税務コストがどれぐらい運転資金に影響を与えるかなどを専門家の知見に基づき適切に評価しておく必要があります。TDSおよびGST税制の詳しい内容については以下リンク先の記事をご覧ください。

E-25 : インドの源泉所得税TDSの概要と日印租税要約について

E-26 : インド新税制GSTの概要について

 

【法人税Corporate Income Tax

なお、法人税についてはここ数年でインド国内への投資促進と雇用創出を目的とした法人税率の引き下げが随時発表されており、2020年6月時点で、2020年インド税制法案(Finance Bill, 2020)において以下のように規定されています。なお、新たに発表された新法人税制度(※)については任意で選択適用ができる仕組みになっているため、選択した場合の条件を理解した上で。どちらの制度を適用することが自社にとってメリットがあるかを評価し、判断することとなります。

 

■ 売上高40億ルピー以下の内国法人

 

■ 新法人税制度(第115BAA条および第115BAB条)に基づく優遇制度(※)

 

インドで求められる法人税申告の具体的なフォームや申告内容、申告期限、予定納税制度、そして、実際の日系企業のケース事例から見るインドの移転価格税制については以下のリンク先の記事をご覧ください。

E-27:インドの法人税関連コンプライアンスと予定納税制度について

E-28.(執筆中)ケース事例から見るインド移転価格税制の実務と税務リスクについて

 

【関税Custom DutySVBSpecial Valuation Branch)】

インドで物品を輸入する際には1975年関税率法(Customs Tariff Act, 1975)の規定に基づき、(1)基本関税(BCD : Basic Custom Duty)と、(2)統合物品・サービス税(IGST : Integrated GST)、(3)一定の嗜好品やサービスについては追加的にGST補償税(Compensation Cess)等の関税を支払う事となります。なお、輸入者が税関申告書(Bill of Entry)を提出する際に、輸出者が関連者かどうかを申告することになるのですが、もし輸出者が親会社を含む関連者にあたる場合にはその輸入価格の妥当性をインドの特別税関当局SVB(Special Valuation Branch)により評価されることになります。ちなみに、上述の移転価格税制では、関連者からの輸入価格が不当に高くないか(=インド国内法人税の税収が不当に下げられていないか、つまり、輸出者国側に利益移転されていないか)という観点から価格の妥当性を評価されることになりますが、一方で、当該税関当局SVBは輸入価格が不当に低くないか(=インドの関税収入が不当に下げられていないか)という観点から評価してくることとなるため、輸入者は法人税当局と関税当局とのあいだにいわゆる板挟みの状態となり、税務リスクへの対応に加えて、SVB対応にも相当の手間・労力を強いられる状況となる点には留意が必要です。SVB当局の具体的な手続きおよび関税の納付方法については以下リンク先の記事をご覧ください。

E-29.(執筆中)インドの関税およびSVB当局の手続きについては

【インドの税務調査および税務訴訟】

税務調査(Tax Assessment)はインドでも比較的頻繁に実施されており、私の実感では設立から3〜5年ほど経過すると税務署からの調査通知(Notice)が届く可能性が高くなるように感じます。なお、2018年8月に発表された通達(Instruction No.03 of 2018)に基づき、所得税に関する一般的な税務調査(=1961年所得税法143条(3)に基づく調査)については原則、電子データおよび電子的コミュニケーションに基づく調査手続き(e-Proceeding)が実施されることとなっており、従前よりは比較的スムーズに税務調査の対応ができるようになりました。しかしながら、税務調査の担当官によっては引き続き対面による聴取(hearing)や根拠証憑の原本確認を求めるケースもあり、普段から帳簿や根拠証憑を適切に保管・管理しておく必要があります。なお、税務調査が終わり何らかの追徴課税の指摘を受けた場合には、その時点で当該追徴税額に対する納税手続きをしなければなりませんが(理想的にはこの段階までに決着をつけたいところですが)、企業側が納得できない等何らかの理由で納税をしないと、調査案件が移管され税務当局の上層部(Commissioner of Income Tax)から正式に更生通知書(Show Cause Notice)を受け取ることとなります。つまり、日本で言うところの地方の所轄税務署から国税庁へ移管されるようなイメージです。もし企業側がこの更生通知に対して引き続き不服がある場合には、その旨の不服申し立てを当局に通知することとなり、ここから三審制による司法プロセス(税務訴訟)へと発展することになります。具体的なインドの税務調査や税務訴訟の事例については以下リンク先の記事をご覧ください。

E-30.インド税務調査の流れおよび税務訴訟に発展するケースについては

会計税務

E-25 : インドの源泉所得税TDSの概要と日印租税条約について

E-26 : インド新税制GSTの概要について

(執筆中)インドの法人税関連コンプライアンスと予定納税制度について

(執筆中)ケース事例から見るインド移転価格税制の実務と税務リスク

(執筆中)インドの関税およびHSコード規制とSVB当局について

(執筆中)インド税務調査の流れおよび税務訴訟に発展するケース