vol.006 急成長!インドの家具サブスクリプションサービスの動向
インド国内家具の需要動向
インドの家具市場総額は、2020年には約410億米ドルと推定されています。[1]。
因みに、帝国データバンクの調査では、同年の日本の家具市場規模は1兆5000億円、米ドルに換算すると約135億米ドル[2]となっています。
インドの家具市場が急成長している主な理由は、中流階級人口の急激な増加により、住宅や商業施設の建設が活発であることに加え、労働人口の都市間の移住の増加のため核家族化が進んでいることから、家具へのニーズが高まっているものと考えられます。
2021年のインドの世帯年収の平均値は3,168米ドルと推定されており[3]、家具の購入に使える可処分所得はそれほど高くありません。
主に都市部の人口を対象とした場合、単身者の1ヶ月の生活費は約326.5米ドル、4人家族の場合は1,138.1米ドルとなります[4]。
そのため、信頼性が高く、長く使えて、見た目も美しい、つまり高価な家具を購入できるのは、一部の裕福な家庭か、ローンを組んで購入する人に限られています。
一方で、インドのGDP年間成長率は2022年に7.0%、2023年には6.5%と予測されており、急速な経済成長とスタートアップ企業文化が相まって、より多くのオフィススペースと、それに伴う家具の需要も高まっています。
家具サブスクリプションサービスの出現
家具のサブスクリプションサービスをインドで恐らく初めて提供したFurlencoは、2011年に創業されました[5]。
その後、Rentmojo[6]が2014年に続き、2021年現在、インドのビジネスニュースメディアThe Indian Wireの記事では同様のサービスを提供している10社のスタートアップ企業を紹介しています[7]。
レンタル家具には、さまざまなメリットがあります。
ユーザー側の視点ではコストが低いことに加え、ここでご紹介するスタートアップのサービスではスマートフォンのアプリで簡単にアクセスできることや、組み立て・分解の手間が少ないことなどです。
サブスクリプションは必要な時にすぐに始められて、不要になったらすぐに止めることができます。
さらに、これらのサービスでは、引っ越しに伴う移動サービスや、急に家具を交換したりするオプションも提供されており、分散型社会から都市圏への人口や経済活動の移動が進むインドにとっては非常に便利なサービスとなっています。
インドの家具サブスクリプション市場は家具市場全体の約5%程度ですが、2020年には約20億米ドル[8]、2021年は前年の2倍以上の約45億米ドルになると推定されており、急成長している市場のひとつです[9]。
Redseer社の調査によると、レンタル家具市場全体で平均注文額は月額で約1,900ルピーです。
また、約1,400万世帯に平均で13ヶ月間のサブスクリプションサービスを供給しています[10]。
インドのレンタル家具市場は初期の成長段階にあり、今後の投資や競合他社参入の機運が高まっていると言えるでしょう。
世界的なコロナ禍により自宅にリモートワーク環境やオフィスとしての機能が突然必要となったことで、この市場の成長はさらに加速しています。
また、リモートワークを今後も継続するかどうかわからないけれども、今だけ机と椅子が欲しいといった時に使用できるレンタル家具を選ぶ人も増えています。
一方、商業施設でもコスト削減のために、購入ではなくレンタル家具を採用するケースが増えています。また、レンタル家具スタートアップは業界全体の順調な成長によりTier2、Tier3の都市にも進出し始めています。
私は3年ほど自宅でRentMojoのサービスを利用しているのですが、ソファやテーブル等、家具3点を月額約1,000ルピー(日本円で1,500円程)でレンタルしており、とても満足しています。
RentMojoに限らず数々のサービスで家具だけではなく冷蔵庫や洗濯機、エアコン等の家電もそろっており、最近はラップトップのサブスクリプションサービスまであります。
以前インドで他の都市に住んでいた時、家具や家電をかなり大変な思いをして買い揃えたのに、その後たったの数年で全て手放すハメになりました。
また、譲り先を探すのにもかなりの時間を割いて苦労をしたため、全てサブスクリプションサービスにすれば良かったと後悔したことがありました。
また、今はチェンナイに住んでいますが、この先国内外含めいつどこに引っ越すかわからないし、安価で、モバイルアプリですぐに始められてすぐにやめられる、引っ越しもしてくれるサブスクリプションサービスはありがたいと感じています。
家具サブスクリプションサービスを提供するスタートアップ
最後に、注目のスタートアップ5社のサービスをご紹介します。
1.Furlenco
https://www.furlenco.com/about-us
Ajith Mohan Karimpana氏は、アメリカでゴールドマン・サックスに5年以上勤務した後、インドへ戻り、Furlencoのサービスを創業しました。
家具のサブスクリプションサービスは、アメリカを離れるときに自身の家具の処分でかなりの損失を出したことから思いついたそうです[11]。
今年(2021年)7月、南アジア・海外市場への事業拡大のために1億4000万米ドルの資金を調達しました[12]。現在はインドの15都市でサービスを提供しています。
2.RentMojo
一通りの家具・家電が安価で揃っており、2017年にバイクのレンタルを開始して話題になりました。また、IKEAとタイアップしていてIKEAの家具をレンタルすることができます。
今年(2021年)3月にシリーズCラウンドで135万米ドルの資金調達を行っています[13]。現在、インドの16都市でサービスを展開しています。
3.Rentickle
家具・家電だけでなくフィットネス設備や、自転車、ラップトップ等の品揃えが充実しています。
複数のベンチャーキャピタルより、2016年創業時に25万ドル、2017年末には400万ドルの資金調達をしています。現在、インド主要6都市で展開中です。
4.CityFurnish
住宅用家具・家電だけでなくオフィス家具や空気清浄機、IH調理器等の細々とした家電の品揃えが特徴です。現在、インド主要7都市で展開中です。
5.Fabrento
どちらかというとインドで中間層に好まれそうなデザインが多く、ベッドの種類が豊富です。現在、インドの4都市で展開中です。
参照元データを見る
[1] Indian furniture rental industry – market size, growth and forecast
[2] コロナ禍でも好調、2020年度の家具・インテリア販売市場は過去最高更新へ 巣ごもり需要や在宅勤務拡大が追い風https://news.yahoo.co.jp/articles/1ce4caca6e5ca971d5af7169373cf58be7acd3cc
[3] Median Income By Country 2021
https://worldpopulationreview.com/country-rankings/median-income-by-country
[4] Cost of Living in India
https://www.numbeo.com/cost-of-living/country_result.jsp?country=India&displayCurrency=USD
[5] Furlenco
https://www.furlenco.com/about-us
[6] RentMojo
[7] List of top 10 furniture rental startups in India
https://www.theindianwire.com/startups/top-furniture-rental-startups-india-74514
[8] Indian furniture rental industry – market size, growth and forecast
[9] Indian rental furniture market worth Rs 33,500 crore now: Redseer
[10] How Big Is Online Rental Furniture Market?
https://redseer.com/newsletters/how-big-is-online-rental-furniture-market
[11] A former Indian Goldman Sachs executive is building the “Netflix of furniture”
https://qz.com/india/1690762/ex-goldman-exec-wants-to-make-furlenco-the-netflix-of-furniture
[12] India’s Furlenco raises $140 million for its furniture and appliance renting service
[13] Rentomojo raises $1.3 mn in latest tranche of Series C funding round
https://www.vccircle.com/rentomojo-raises-1-3-mn-in-latest-tranche-of-series-c-funding-round
執筆者紹介About the writter
2014年より北インドグルガオン拠点の現地日系企業で法務や総務、購買等を中心とした管理業務を経験後、インドの法務および労務分野の専門性を深めるべく2018年に当社に参画し、南インドチェンナイへ移住。現在は会社法を中心とした企業法務や、労働法に基づく人事労務関連アドバイス、インドの市場調査業務を担当。2023年3月に退職。