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週刊インドトピックス

Vol.0061 EVスタートアップのUltraviolette、インドのテスラになり得るか?

EVスタートアップ『Ultraviolette』の設立まで

インド最大のスタートアップメディアであるYourStory社の2020年12 月17日付けの報道でEVスーパーバイクのスタートアップである『Ultraviolette Automotive』を取り上げています。

2015、16年頃に、リチウム電池の価格が下がり始めた頃には、欧米では、イーロン・マスクのテスラがすでに波紋を呼んでいました。テスラは電気自動車に対する認識を変え、電気自動車をクールな高級品と位置付けることに成功しました。今後10年間でEV車のニーズが高まることを確信していたインド人起業家のNarayan Subramaniam氏とNiraj Rajamohan氏は、テスラにインスパイアされ、この分野で市場に大きなインパクトを与えたいと考え、2015年にバンガロールを拠点にUltraviolette Automotiveを設立しました。

Niraj氏によると、インド人は自分のバイクに特別な愛着を持つことが多いといいます。多くの若者は、初めてのハイキングや試験に合格した際のお祝いとして、新しいバイクを連想します。また、インドのミレニアム世代はすでにテスラのような製品に憧れており、その価値を認識していました。この点からもNarayan氏とNiraj氏はインドでEVバイクの価値を構築する可能性が十分にあると感じていました。

 

Ultravioletteのバイクは他社製品とどう違うのか?

UltravioletteのバイクはIoTデバイスのように機能すると言われています。車体にはバッテリーやセンサー探知などのテクノロジーが搭載されている一方で、消費者はアプリを使って走行データを得ることができ、ユーザーの乗車体験を変えるスーパーバイクとなり得るようです。アプリ上で、ユーザーはプロフィールの作成や機能性をフィルタリングすることができます。バイクが充電中かどうか、また、レーストラック、街中、郊外など、異なるモードに応じてバイクを設定することができます。例えば、スロットルを離した瞬間にバイクを減速させるか、ブレーキをかけた瞬間に減速させるかなど、ライディングスタイルやエネルギーを節約量に応じて設定できます。すべての車両とライドデータは、キャプチャされ、分析されます。ラップ、傾き、使用パターン、および消費電力のデータの確認が可能で、さらにはアプリ上の内部診断で、交換部品を確認することができるようです。

 

そのほかにもUltravioletteが他社との差別化を図っている点があります。それは、多くの企業が東南アジアや中国から入手可能な部品を使い、インドで組み立てるという近道をとっている中、Ultravioletteでは、バッテリーセル以外はすべてインド製を使用しているとうことです。バッテリーと、パワートレイン(※1)に強いチームを作ることを決意した同社は、自動車、航空宇宙、民生用電子機器など、さまざまな業界での経験を持つ人材を集めました。『バッテリー管理システムからモーター、電子機器、安全システム、安全戦略に至るまで、徹底したスーパーバイクを優秀な設計チームとエンジニアチームが協力して製作している。また、気候条件で電池の劣化が早くならないように構造工学、熱工学、電気工学、安全性等すべての要素を組み込んだ。』とNarayan氏は説明しています。

 

市場の将来性とUltravioletteの今後

Narayan氏によると、インドのバイク市場にはスクーター、100cc、200~300ccのバイク、そしてニッチなスーパープレミアムのセグメントがすでに存在しています。 将来的には、Ultravioletteをさまざまなセグメントに展開できるような技術を構築することを視野に入れており、自動車用の“テクノロジーカンパニー”となることも考えているようです。 現在Ultravioletteのチームはテストを行っており、2021年1月に試乗車の公開、2021年半ば30万~35万ルピー(約42万円~50万円)の価格帯での発売を計画しているようです。

同社はSpeciale Invest から初期ラウンドの資金調達を得ており、今年9月には、シリーズBの資金調達の一環として、二輪車と三輪車の大手メーカーであるTVS Motor Companyから3億ルピー(約4億2000万円)を調達しました。このように、インドのEV市場は急速に成長しています。TVS Motor Company Ltdは今月初めにシェアモビリティの新興企業Intellicar Telematics Pvt Ltdを買収しました。  Olaは最近、ニュージーランドでの電動二輪車の発売を発表し、Ola Electricは、年間200万台以上のスクーターを製造する世界最大のスクーター工場をインドに設立すると発表ています。以前からインド政府はEV車の開発を推奨しており、今年4月には新排ガス基準も設けました。このような政府の後押しも追い風となり、Ultravioletteがインドを風靡する日もそう遠くはないように思います。

 

※1 パワートレイン:エンジンで作られた回転力を駆動輪へと伝える役割を担っている装置類

Source:EVスーパーバイクを製造するUltraviolette