India Weekly Topics

週刊インドトピックス

Vol.0093 インド:コロナ禍下のデジタル・ディバイド(情報格差)と国民IDシステムを用いたオンライン決済・入出金

インド:コロナ禍下のデジタル・ディバイド(情報格差)

コロナ禍で広がった情報格差解消を目指す

タイムズ・オブ・インディア紙の4月21日付の記事によると、世界有数のITコンサルティング・ソフトウエア開発会社、インフォシスのナンダン・ニレカニ会長は、新型コロナウイルスの感染拡大がデジタル・ディバイド(情報通信技術の恩恵を受けることのできる人とできない人の間に生じる経済格差)を助長したとし、テクノロジー企業は、スマートフォンを所有していないなど、情報通信技術に触れる機会が限られた人々にもデジタル化の恩恵を受けられるようにしていくべきだと発言したとのことです。

マイクロソフト・インドのアナント・マヘシュワリ社長とのやりとりの中でナンダン氏は「これまでは学校に行くか、オンラインで学ぶかを選択できましたが、今は選択肢がありません。

また、デバイスを持っていなければ、授業に参加することもできません。これらはデジタル・ディバイドの例であり、大規模な人口でのシステムを設計する際には、全員が参加できるようにしなければなりません」と述べています。

国民IDシステムを用いてオンラインの決済や入出金を利用可に

Aadharによるオンライン決済・入出金

彼は、上記を達成するための例として、インド国民12億7000万人に固有のIDを提供する国民IDシステム「Aadhar」https://uidai.gov.in)や、フィーチャーフォン所有者でもデジタル決済を利用できるように構築されたインドのデジタル決済のシステムについて言及しました。

現在インドでは、スマートフォンを所有していなくても、フィーチャーフォンでもインドのオンライン決済システムである「UPI」(Unified Payments Interface:https://www.npci.org.in)の利用が可能です。

また、携帯電話を持っていない人でも、Aadharを使って「Business Correspondents」(銀行の支店/ ATM以外の場所で銀行サービスを提供するために銀行が従事する小売業者)に行けば、Aadharとオンラインの本人確認によって銀行口座を開設することができ、これによってその口座でお金を受け取ったり、お金を引き出したりすることが可能になります。

これらのシステムを設計する際には、通信コストやデバイスのコストを削減してユニバーサル化を図る一方で、デバイスにアクセスできない人も参加できるようなアプリケーションを設計する必要があると、ナンダン氏は述べています。

デジタルスキルの普及で格差減を目指す

デジタルスキルの普及
また、マイクロソフトのマヘシュワリ氏は、国民のデジタルスキルの普及は、国内の格差を埋めるための一歩だと述べています。

この一環として、マイクロソフトは249の国と地域で3,000万人以上の人々がデジタルスキルにアクセスできるように支援しており、そのうち300万人近くがインドの人々です。また、マイクロソフトは、2021年に世界で25万社の企業が能力に応じた採用を行うことを支援するという公約を拡大しています。

コロナ禍における情報格差は、経済格差を拡大する問題を含むと同時に、社会全体にデジタルによる変革を起こすきっかけでもあると言えます。それらの変革がインドの政治・経済・文化にどのような影響を与えていくか、今後も着目していきたいところです。

ソース:Pandemic has increased digital divide: Nandan Nilekani

参考元:What is the Business Correspondent (BCs) model for financial inclusion?

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