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週刊インドトピックス

Vol.0108 インド15番目のユニコーン誕生、SaaSスタートアップのBrowserStack

インド最大のスタートアップメディアであるYourStory社の2021年6 月16日付けの報道で、BOND社とInsight Partners社から2億ドルを調達し、インドで15番目となるユニコーン企業(※1)になったSaaS(※2)スタートアップのBrowserStackを取り上げています。

 

インド15番目のユニコーン企業となったBrowserStack

BrowserStackは、2011年にムンバイを拠点にRitesh Arora氏とNakul Aggarwal氏によって設立されました。クラウド上でのソフトウェアテストの分野で業界をリードしており、Microsoft、Twitter、Barclays、Expediaなどの大手企業をクライアントとして抱えています。現在、世界15カ所のデータセンターで毎日200万件以上のテストを実施しているとのことです。

今回の資金調達ラウンドは、BOND社が主導し、Insight Partners社と、2018年のシリーズAラウンドで5,000万ドルを投資していた既存の投資家Accel社が参加しました。2億ドルの調達に成功したことで、BrowserStackの評価額は40億ドルとなり、Vol.0105で取り上げたフィンテックスタートアップの『Zeta』に続いてインドで15番目のユニコーン企業となりました。

約10年の歴史を持つBrowserStackは、Venture Intelligenceによると、最初の機関投資家向けの資金調達ラウンドでは5〜6億ドルの評価を受けていました。その評価額は、インドのSaaS分野の急成長を反映して、3年間で8にも膨れ上がりました。

 

BOND社のJay Simons氏の偉大な経歴

BOND社のジェネラルパートナーであるJay Simons氏は、今回の投資について次のように述べています。『ソフトウェアがあらゆるものを再構築する中で、スピードと品質に対する要求は高まり続けているが、拡大するブラウザやデバイスでソフトウェアをテストすることは、開発チームが独自管理するには膨大でコストのかかる課題である。BrowserStackは、開発者が自分のアプリケーションをテストするために、幅広いブラウザとデバイスの設定に即座にアクセスできるようにすることで、この問題をシンプルかつ費用効率よく解決することができる。これは今日の開発者にとっての恩恵だ。』

興味深いことに、Simons氏はかつてAtlassian社の社長を務め、初期リーダーシップチームの一員として、現在のSaaS大企業となったAtlassian社をスタートアップからIPOまで成長させた経験を持っています。

BrowserStack のArora氏は今回の資金調達に関して『Simon氏はAtlassian社での12年間で、中小企業からグローバル企業トップ1000まで成長させ、世界中の何十万もの顧客拡大に成功しし、年商20億ドルを達成したGo-To-Marketモデル(※3)の先駆者』と、Simon氏のジョインを心待ちにしています。

 

今回の資金調達の使い道

今回の資金調達は、戦略的買収、開発者向け製品の拡充、世界規模での事業拡大などに活用し、「インターネットのテストインフラ」になるというビジョンを実現する予定です。そして『開発者が抱える深い問題を解決し、ユーザーに素晴らしい体験を提供できるような製品を作ることを目指している』と述べています。

BrowserStackは、外部からの資金調達を検討するまでの7年間は自給自足で成長し続け、2,000万ドルの収益を達成しました。創業者のArora氏とAggarwal氏はこのスタートアップが初日から利益を上げていたと主張しています。そして資金調達を検討し始めた背景として次のように説明しています。『我々は最初から利益を上げており、資金を必要としていなかった。しかし、ビジネスの規模が拡大するにつれ、成長を加速させ、より多くのシステム構造の導入のサポートをしてくれる人を加えることを考え始めた。』

ムンバイに本社を置き、ダブリン、サンフランシスコ、ニューヨークにもオフィスを構えるBrowserStackは、今後18ヶ月の間に従業員数を1600人に倍増させる予定です。現在、同スタートアップの製品を利用しているアクティブな開発者は30万人を超えており、今後1~2年で100万人以上に増加すると予想しています。

同社は、昨年末に自社株買いを実施しており、今回の資金調達の一環として、さらなる自社株買いを開始する予定です。『我々は、BrowserStackの構築とビジネス拡大に重要な役割を果たしてきた従業員にそれに見合った報酬を与えたいと強く思っている。ESOP(※4)は、従業員に資産形成の機会を与える素晴らしい方法だ。』と共同創業者の2人は述べています。

 

パンデミックの後押しで成長を加速させるSaaS業界

多くのSaaSスタートアップ企業と同様に、BrowserStackもコロナウイルスのパンデミックによって急速に加速した「国境を越えたSaaS機会」から利益を得ました。パンデミックは、セクターを超えたデジタルの成長により、スタートアップ企業がグローバルに構築し販売することを容易にしました。Arora氏は『コロナウイルスのパンデミックによって、世界中のあらゆる組織が、在宅勤務やリモートワークの選択肢を検討せざるを得なくなった。その結果、多くの企業がオンプレミス(※5)のインフラに代わってクラウドソリューションを検討するようになった。企業は急速にデジタル化を進め、主要なシステム、ツール、プロセスをクラウドに移行している。このため、当社のマニュアルテスト製品が大幅に増加している。』

現在、BrowserStackの顧客数は135カ国にのぼり、さらなる拡大が見込まれています。『我々は、特定の地域に縛られることなく、グローバルに顧客基盤を構築することに注力している。』とArora氏は述べています。

WithコロナでSaaSの需要が増し、様々な業界でSaaSの規模が拡大していくことが予測されるので、それに伴ってBrowserStackの需要も高まることでしょう。また、今回の資金調達でBOND社のJay Simons氏がジョインしたことはBrowserStackのスムーズでダイナミックなグローバル展開にいい影響を与えてくれると思います。

 

※1 ユニコーン企業:評価額が10億ドル以上の未上場のスタートアップ企業のこと
※2 SaaS:Software as a Serviceの略。クラウド上に作られたアプリケーションやサービスを、インターネットを通じて利用する形態のこと。
※3  Go-To-Marketモデル:自社の商品やサービスをどのような流れで顧客へ届けるかをまとめた戦略のこと
※4 ESOP(イソップ):Employee Stock Ownership Planの略。企業が自社株を買い付けて、退職金や年金として従業員に分配する制度
※5 オンプレミス:サーバーやソフトウェアなどの情報システムを使用者が管理する設備内に設置し、運用すること。自社運用ともいう。

Source:インドで15番目のユニコーン企業となったSaaSスタートアップのBrowserStack