F-32 : インドの取締役の身元確認(DIR-3 KYC)登記について
(文責:安本理恵 / Global Japan AAP Consulting Pvt. Ltd.)
インド企業省(MCA : Ministry of Corporate Affairs)は、2018年7月の通達で全ての取締役識別番号(DIN:Director Identification Number、以下“DIN”という)保持者に対し、規定のフォーム「DIR-3 KYC」にて取締役の基礎情報を毎年登記することを義務付けました。以後、当該年度(4月1日~3月31日まで)にDINを取得した個人は、次年度の9月30日までに登記することが義務付けられています。期日までに登記をしなかった場合、DINが一時的に失効しますがペナルティ(通常5,000ルピー)を支払うことで期日後に登記をし、DINを再度有効化することが可能です。
1. 初回の登記
(1)規定フォーム「DIR-3KYC」への入力
名前、国籍、生年月日、パスポート番号、携帯電話番号・Eメールアドレス(一時パスワード(OTP: One Time Password、以下“OTP”という)受信先)、下記の住所証明と合致する現住所(Resident Address)等を入力します。携帯電話番号と現住所が同じ国のものである必要があります。
(2)提出書類(外国人非居住者の場合)
1. ID証明としてパスポートコピー
(直近1年以内にアポスティーユ認証(※)付与したもの)
2. 現住所証明
(直近2か月以内の公共料金・電話代請求書でお名前・住所が載っているものに英訳を添付してアポスティーユ認証付与したもの)
※アポスティーユ認証とは、外国公文書の認証を不要とする「ハーグ条約」の締結国へ公文書を提出する際に取得すべき認証のことで、インドはハーグ条約締結国です。東京都、神奈川県及び大阪府の公証人役場では、申請者からの要請があれば外務省の公証人の認証および公印確認またはアポスティーユを一度に取得できます(詳しくは、以下外務省のホームページ内の“ワンストップサービス”をご参照ください。)
外務省ホームページ「申請手続きガイド」
(3)その他
規定フォームにより登記する際に、上記で入力した携帯電話番号およびEメールアドレスにそれぞれ送信される別々のOTPパスワードを確認し、フォームに入力します。また、規定フォームには本人のデジタル署名証明(DSC)の添付が必要です。
現住所証明については、インド企業省が公表している「DIR-3KYC」の公式ガイドラインには「外国人の場合は直近1年内」と記載があります。しかしながら、インド会社法(The Companies Act, 2013)規則第2章16項で取締役個人の住所証明は2か月以内に発行されたものでなければならないと定められており、公式ガイドラインと会社法との間に矛盾が生じています。弊社では保守的な観点から念のため2か月以内の住所証明により手続きすることをご提案しております。
2. 2回目以降の登記
インド企業省Webサイト内「DIR-3-KYC-WEBフォーム」にて登記をします。当該フォームではDINを入力すると初回で記入した携帯電話番号およびEメールアドレスへOTPパスワードが送信される画面に移ります。受信したOTPを入力すると当該年度の登記は完了します。携帯電話番号、Eメールアドレス、住所等の登記情報を変更するには初回の規定フォームを再度登記する必要があります。
3. LLPのパートナーの場合は?
なお、LLP(Limited Liability Partnership、有限責任事業組合)におけるパートナー識別番号(DPIN : Designated Partner Identification Number)を保持する個人も上記と同様の登記が毎年必要となります。
執筆者紹介About the writter
2014年より北インドグルガオン拠点の現地日系企業で法務や総務、購買等を中心とした管理業務を経験後、インドの法務および労務分野の専門性を深めるべく2018年に当社に参画し、南インドチェンナイへ移住。現在は会社法を中心とした企業法務や、労働法に基づく人事労務関連アドバイス、インドの市場調査業務を担当。2023年3月に退職。
会社法
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