Indian Companies Act & Secretarial Compliances

会社法

F-31 (a) : インドの取締役の選任や退任、除名にかかる各種手続きについて

(文責:安本理恵 / Global Japan AAP Consulting Pvt. Ltd.)

ここでは、主にインド法人設立後の取締役関連の手続きをご説明します。最初の取締役選任を含めたインド現地法人設立手続きについては以下リンク先の記事をご覧ください。

A-1 : インド現地法人の設立手続について

(1) 取締役の選任 (Appointment) 手続き

1) 取締役のデジタル署名証明(DSC)および取締役識別番号(DIN)の取得

(※インド国内で初めて取締役に就任する方のみ)

まず最初に、デジタル署名証明(DSC : Digital Signature Certificate)を取得する必要があり、DSC取得後に取締役識別番号(DIN: Director Identification Number)の取得申請手続きを行うこととなります。DSCの概要および取得手続きについても上記リンク先にて説明をしておりますのでここでは割愛をいたします。

取締役識別番号(DIN)とは、インド企業省(MCA : Ministry of Corporate Affairs)より取締役になる方一個人に対して個別に割り当てられる識別番号です。つまり、一度DINを取得した後は複数の会社の取締役に就任したり、取締役を退任して他の会社の取締役に就任しても同じDINを保持する事となります。DINを取得している人でないと取締役として選任・登記することができません。なお、DINの取得にはインド企業省が規定する登記フォーム「DIR-3」にDSCでデジタル署名を添付して申請をします。必要書類はDSC申請必要書類と同様に下記の通りですが、いずれも提出は電子データのみです。

<必要書類(外国人非居住者の場合)>

  1. 個人ID証明のためのパスポート写真面
    写真面コピーに自署(パスポートと同じサイン)をしたものにアポスティーユ認証付与したもの
  2. 住所証明のための公共料金請求書
    電話代(携帯電話可)、電気代、水道代等で現住所と名前が記載されているもの、または銀行口座取引明細書(Bank Statement)にアポスティーユ認証付与したもの
  3. 証明写真

弊社実績ベースでの所要期間は、必要書類が揃ってからDSC取得までが1週間程度、DSC取得後DIN取得は申請より4日程度です。なお、上述のとおり新しく選任する取締役がDINを既にお持ちの場合はこのプロセスは不要です。

2) 定期株主総会(AGM)または取締役会(Board Meeting)にて選任決議

日本の場合は、株主総会での取締役選任が通例の手続きとなっていますが、インドでは次回の定時株主総会(AGM : Annual General Meeting)までを任期とすることを前提に、取締役会決議のみで「追加取締役(Additional Director)」として選任・登記することが可能です。つまり、インド会社法の規定によると、株主総会決議を通さずに取締役会決議のみで選任された追加取締役も、通常の取締役と同じ地位・権限を有し、同じ責任を負います。唯一の違いは、追加取締役の任期が次回の定時株主総会までであることで、追加取締役は次回の定時株主総会で改めて取締役として選任(追認)する必要があります。

なお、新たに選任される追加取締役は取締役会での決議時に下記3種類の書類を会社に対して提出します。

  1. DIR-2(取締役就任同意書)
  2. MBP-1(他の会社との利害関係(株式保有や取締役の兼任等)宣言書)
  3. DIR-8(取締役就任資格宣言書)

3) 取締役選任登記(ROCfiling)

追加取締役として選任された取締役会決議日より30日以内に、そして、正式に取締役として追認された定時株主総会決議日より30日以内にそれぞれインド企業省が規定する登記用フォーム「DIR-12」に以下の書類を添付した上で登記をします。なお、代表取締役(MD : Managing Director)を選任した場合には追加でMGT-14による登記も必要となるためご留意ください。

  1. 取締役会決議抜粋
  2. DIR-2(取締役就任同意書)

(2) 取締役の退任 (Resignation) 手続き

1) 辞表(Resignation Letter)提出

辞任する取締役は会社に対して辞表を提出します。

2) 取締役会(Board Meeting)

当該取締役の辞任を取締役会で承認します。(株主総会の開催は不要)

3) 取締役辞任登記(ROC filing)

取締役辞任より30日以内にインド企業省が規定する登記用フォーム「DIR-12」に以下の書類を添付した上で登記をします。

  1. 取締役会決議抜粋
  2. 辞任する取締役からの辞表

なお、以前は取締役の辞任については専用の登記フォーム「DIR-11」による登記が義務付けられていましたが、2018年より任意となりました(辞任する取締役が希望する場合にはDIR-11による登記を実施することも可能です)。

(3) 取締役の除名 (Removal) 手続き

会社が取締役を解任したい状況において、当該取締役が自ら辞任することを拒否した場合には、以下のような手順で取締役の除名手続きを行うこととなります。

1) 取締役会開催の特別通知発行(Special Notice)

当該取締役を含む全取締役に対して事前に、取締役会にて除名決議を執り行いたい旨の特別通知(Special Notice)を発行します。

2) 取締役会開催(Board Meeting)

取締役会にて当該取締役除名決議をし、また、当該承認を求める臨時株主総会の招集を行います。

3) 臨時株主総会開催(EGM : Extraordinary General Meeting)

臨時株主総会にて当該取締役に弁明の機会を与え、弁明の内容に基づいて株主は除名についての決議内容を決定します。

4) 取締役除名登記(ROC filing)

取締役の除名が決議された取締役会決議日より30日以内にインド企業省が規定する登記用フォーム「DIR-12」に以下の書類を添付した上で取締役除名登記をします。

  1. 取締役会決議抜粋
  2. 株主総会決議抜粋

なお、退任および除名された取締役が常勤取締役であった場合において、当該人物との雇用関係を引き続き継続することについては特に制限はありません。

執筆者紹介About the writter

安本 理恵 | Rie Yasumoto
2014年より北インドグルガオン拠点の現地日系企業で法務や総務、購買等を中心とした管理業務を経験後、インドの法務および労務分野の専門性を深めるべく2018年に当社に参画し、南インドチェンナイへ移住。現在は会社法を中心とした企業法務や、労働法に基づく人事労務関連アドバイス、インドの市場調査業務を担当。2023年3月に退職。

会社法

F-31 : インドの取締役の選任や退任、除名にかかる各種手続きについて

F-32 : インドの取締役の身元確認(DIR-3 KYC)登記について

F-33 : インドの監査人変更手続きについて

F-34 : インド会社法にかかる年度末コンプライアンス

F-35 : インドからの撤退方法!現地法人の自主清算および登記抹消手続き