F-34 : インド会社法にかかる年度末コンプライアンス
(文責:安本理恵 / Global Japan AAP Consulting Pvt. Ltd.)
インドでは、会社法第2条(41)の規定により会計年度が4月1日~翌年3月末と定められており、全ての会社に法定監査(Statutory Audit)が義務付けられています。ここでは監査が完了し、監査済財務諸表が完成した後に対応が必要となる一連のコンプライアンスについてご説明します。
1. 取締役会(Board Meeting)の開催
取締役会で主に下記の事項を決議します。
- 監査済財務諸表(Audited Financial Statement)
(※貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書、注記を含む)- 監査報告書(Auditor’s Report)
- 取締役報告書(Director’s Report)
(※財務諸表承認後に決議)- 定時株主総会(AGM : Annual General Meeting)の招集
2. 会社秘書役(CS : Company Secretary)による監査済財務諸表の署名
常勤会社秘書役を設置している場合は会社秘書役が取締役署名済み財務諸表に同日付で署名します。
3. 監査人による財務諸表の署名
監査人が個別書類識別番号(UDIN : Unique Document Identification Number)を同日付で取得し、取締役署名済み財務諸表および監査報告書にUDINを記載します。
※個別書類識別番号(UDIN : Unique Document Identification Number)とは?
インド勅許会計士協会(ICAI : Institute of Chartered Accountants of India)が2019年1月よりインド勅許会計士が発行する全ての書類に表示を義務化している固有の文書識別番号。勅許会計士が文書毎に専用Webサイトにてオンラインで取得します。UDINの記載がないと勅許会計士が発行した正式な文書として認められません。かつ、UDINは文書毎に取得し、一度取得すると日程変更が出来ません。また日付を遡っての取得には制限がありますので注意が必要です。
4. 定時株主総会(AGM)の開催
取締役会で承認された監査済み財務諸表その他決算関連書類を受領し、株主が承認します。
5. 年度末決算関連の登記(ROC filing)
会社登記局(ROC : Registrar Of Companies)へ登記用フォームに必要書類を添付した上で期限内に下記2種類の登記を行います。
① Form AOC-4(財務諸表の登記):定時株主総会決議日より30日以内
<必要書類>
- ■ 財務諸表、取締役報告書、監査報告書、株主名簿(全て署名済みのもの)
- ■ 但し、会社の払込資本金が5,000万ルピーを超える場合には、XBRLファイル形式による財務諸表、取締役報告書、監査報告書のデータ、そして、株主名簿が必要となります。
② Form MGT-7(当期概要の登記):定時株主総会決議日より60日以内
6. 最後に
便宜上、財務諸表の署名日を取締役会開催や定時株主総会開催と同日にする事もよくありますが、上述のとおり監査人によるUDIN番号の取得日の調整や、株主からの短期招集に対する事前同意なども必要となるため、経理部門・会社秘書役・取締役・監査人・株主それぞれと事前に調整しておくと年度末のコンプライアンスの一連の手続きがスムーズです。
執筆者紹介About the writter
2014年より北インドグルガオン拠点の現地日系企業で法務や総務、購買等を中心とした管理業務を経験後、インドの法務および労務分野の専門性を深めるべく2018年に当社に参画し、南インドチェンナイへ移住。現在は会社法を中心とした企業法務や、労働法に基づく人事労務関連アドバイス、インドの市場調査業務を担当。2023年3月に退職。