F-35.インドからの撤退方法!現地法人の自主清算および登記抹消手続き
(文責:田中啓介 / Global Japan AAP Consulting Pvt. Ltd.)
インドに進出をする日系企業が、現地法人をインドから撤退する方法としては、主に
- (1)自主清算(Voluntary Liquidation/Winding Up)
- (2)登記抹消(Striking Off)
- (3)株式譲渡(Share Transfer)
の3つの方法があります。この3つ以外にも
- (4)会社再生手続き後に清算(Liquidation)
- (5)休眠会社化(Dormant Company)
という選択肢もありますが、(4)については、債務超過の状態にある会社が再生手続きを経た上で清算をするという方法ですが、再生手続きにおける時間とコストを考慮するとあまり現実的な方法ではありません(つまり、日本の親会社からの増資を受け入れた上で債務超過を解消した上で、(1)の自主清算という手続きに持ち込む方がベター)。
また、(5)については、会社を休眠会社化することにより、インド市場から一定期間だけ事実上の撤退をするという手続きになりますが、将来的にインド事業を再開する可能性があることを前提として会社の登記ステータスを保持するという方法になるため、今回は説明を省略します。
(1) 自主清算(Voluntary Liquidation/Winding Up)
自主清算手続きは、インド破産倒産法(Insolvency and Bankruptcy Code, 2016)を根拠法令とし、主な申請先の機関は会社法審判所(NCLT : National Company Law Tribunal)です。
債務不履行や訴訟/係争の状況にない会社が自主的に会社を清算するための手続きになります。
つまり、債権債務を解消すること、そして、何らかの税務訴訟や取引先との係争事案などがある場合にはそれらを事前に和解・終了させておく必要がある点において、一定の時間を要することが想定されます。重要な手続きについて以下に箇条書きでまとめておきます。
- 資産の売却および債務の返済
- その他債権債務残高の解消
- 法令遵守違反の解消(もしあれば)
- 訴訟や係争事案の解消(もしあれば)
- 管財人としての清算人(Liquidator)選任や報酬の承認
- 署名手続きや支払手続きなどの活動を清算人への引き継ぎ・移管
- 利害関係者への通知を含む一般公告(新聞2紙)
- 税務当局からのNOC(Non-Objection Certificate)取得
- 破産投資委員会(IBBI : Insolvency and Bankruptcy Board of India)への報告
- 会社法審判所(NCLT)への清算申立
(2) 登記抹消(Striking Off)
会社の登記抹消手続きについては、インド会社法(The Companies Act, 2013)を根拠法令とし、主な申請先の機関は会社登記局(ROC)です。
対象となる会社としては、(a)法人設立から1年間の間に事業を開始できなかった会社、もしくは、(b)2会計年度にわたって事業活動を行なっていない会社で、債務が解消されていることを前提に、株主総会において特別決議に基づき登記抹消手続きの申請を行うことができます。重要な手続きについて以下に箇条書きでまとめておきます。
- 全債務の解消
- 2会計年度の事業活動停止(設立したばかりの会社は設立後1年間)
- 法令遵守違反の解消(もしあれば)
- 訴訟や係争事案の解消(もしあれば)
- 登記局(ROC : Registrar of Companies)への登記申請
(3) 株式譲渡(Share Transfer)
株式譲渡については、他者へ自社の株式を売却することによりインド事業から撤退する方法です。
一般的に、日系企業のインド現地法人の株式は「非上場株式」であり、かつ、株式の売却先については「インド居住者」となるケースが多いと思います。その前提においては、インド準備銀行(RBI : Reserve Bank of India)が規定する外国為替管理法(FEMA : Foreign Exchange Management Act, 1999)に基づいて手続きを実施する必要があります。重要な手続きについては以下に箇条書きでまとめておきます。
- 株価評価およびインド勅許会計士(もしくはインド証券取引委員会に登録されているマーチャント・バンカー)によって認証された株価評価証明書の発行
- 株式譲渡価格を上記の株価評価額以下に設定
- 譲渡対価の送金後60日以内にインド準備銀行へ報告(Form FC-TRS)
会社法
F-31 : インドの取締役の選任(Appointment)、退任(Resignation)、除名(Removal)手続きについて
F-32 : インドの取締役の身元確認(DIR-3 KYC)登記について
F-33 : インドの監査人変更手続きについて
F-34 : インド会社法にかかる年度末コンプライアンス
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