"Focus" Indian Startup

スタートアップのインド戦略

Vol.05 : インドオンラインフードデリバリー市場(②食料品デリバリー編)

(1) 成長率68%が見込まれる注目のインド食料品デリバリー市場

人口13億人を超えるインドは、世界一の食の大市場として、今後高い成長が期待されています。オンラインフードデリバリー業界の中でも、前回は「調理済デリバリー」についてご紹介をしましたが、今回は「食料品デリバリー」にフォーカスを当ててご紹介をしたいと思います。世界最大の調査企業であるResearch and Marketsの調査によると、インドの食料品デリバリー市場は、2018年の5億6,900万ドル(約597億4500万円)から2024年には36億ドル(約3,780億円)にまで成長し、インドの年間平均成長率(CAGR : Compound Annual Growth Rate)は最大68.66%の成長率で拡大し続けると予想されています。

(2) インド国内で高まる食料品デリバリー需要とその背景は?

インドの食料品デリバリー市場が成長し続ける背景として、インターネットの普及に伴うスマートフォンユーザーの増加やキャッシュレス決済のインフラ拡大に伴う消費者購買パターンの変化、都市部を中心に働く女性の増加により利便性の高いサービスを求める消費者の増加などが、主な推進要因として挙げられます。

さらに、企業側としても顧客に対する継続的かつ大幅な割引(キャッシュバック)をはじめ、サービス向上(高品質の製品取り揃え、迅速な配送方法実現)に向けての多額投資を行っている事から、インドの同市場は今後も成長し続けると予測されています。

(3) インド国内市場の動向とコロナ禍による影響

現在、インドの食料品デリバリー市場は、大きく分けて(1)ネットスーパー型 (2)生鮮食品型の2つのカテゴリーに分類されます。インドの同市場は、業界最大手である「Bigbasket(ビッグバスケット)」を筆頭に、ソフトバンクグループが出資している「Grofer(グローファーズ)」など、年々注目を集めています。最近では新型コロナの影響による需要の急拡大に伴い、ネットスーパー型へ新規参入する動きも強まっています。具体的には、配車サービスUber、薬局NetMeds、食品デリバリー大手Zomatoやデジタル決済プラットフォームBharatpeは、新たにネットスーパー型の食料品デリバリー事業へ参入を果たしました。

コロナ禍の巣ごもり需要による業界の動き

1. 業界大手各社は業績好調

新型コロナウィルスが思わぬ追い風となり、食料品デリバリー大手各社の好業績へと繋がっています。特に、インドのネットスーパー最大手BigBasketとGrofersは、ロックダウン初期には需要が最大約5倍に増加したと報告されています。

BigBasketのハリ・メノンCEOによると、ロックダウン以前は1日あたりの注文数が15万件だった事に対し、ロックダウン中は1日あたり30万件以上の注文を記録。現在はピーク時に比べ注文数は減少傾向にあるものの、引き続き高い需要が見込まれる事から、今後の計画のひとつとして人材強化を行うと地元メディアのインタビューにて伝えています。

また、ソフトバンクが出資しているGroferも同様に、1日の総商品価値(GMV ※)がロックダウン以前に比べ約60%も高い水準を記録しており、現在も需要の高い状況が続いていると述べています。

※ GMVとはGross Merchandise Valueの略。あるマーケットにおける販売総額を指し、消費者が購入した商品やサービスにおける売り上げの合計金額を指します。

2. B2Cへの事業転換!B2Bアグリテックスタートアップ「Ninjacart」の取り組み

ロックダウン状況下の食料品デリバリー需要の高まりに加え、ロックダウン実施に伴うサプライチェーン封鎖による農作物の廃棄防止のため、B2B食料品販売のスタートアップであるNinjacartは、農家が野菜や果物などの生鮮食品を消費者に直接販売できるサービス「Harvest the Farms」を開始し、BtoC事業への参入を果たしました。

参入にあたり、toC向け食のプラットフォーマーであるZomatoやSwiggy、Dunzoなどと提携し、各社のプラットフォームを介し販売を開始しており、バンガロールやムンバイ、デリーNCRなど主要都市にて展開を行っています。

3.  一方で事業縮小を図る企業も・・・

オンラインフードデリバリー最大手Zomatoは、ロックダウン初期である2020年4月に「ZomatoMarket」を立ち上げ、食料品デリバリー事業に参入しました。参入の背景としては、収益のほぼ80%を占める主力事業・調理済フードデリバリーがロックダウンにより需要が減少したことや、インド全土でのオンライン食料品需要の高まりを受けた事によります。新規参入にあたり、同社はGrofersを始めとする新たな食料品企業との提携を実施し、インド185以上の都市で食料品配達の拡大を実現しました。

しかし、同年6月から開始されたロックダウン緩和策Unlock1.0では、レストラン再開が許可されたことにより、主力事業である調理用フードデリバリー事業の回復に再注力を行うとし、ZomatoMarket事業の縮小を発表。今後は周辺ビジネスのひとつとして継続する方針を示しています。

(4) 注目のインド国内スタートアップ8社の動向

以下、ネットスーパー型及び生鮮食品型デリバリーにおけるインド国内スタートアップ8社の概要をご紹介します。

ネットスーパー型

1. インド・食料品デリバリー最大手「Bigbasket(ビッグバスケット)」

運営会社     :Innovative Retail Concepts Private Limited
Webサイト :https://www.bigbasket.com/
設立年         :2011年10月
本社             :バンガロール
CEO             :Hari Menon, Abhinay Choudhari, VS Sudhakar, Vipul Parekh, VS Ramesh

インドの食料品デリバリー最大手であるBigbasketは2011年にバンガロールを拠点に設立。インド国内26都市に配送網を展開しており、1日の平均注文数15万件、1000以上のブランドからなる20000以上の商品を配送しています。朝注文した商品が最短当日夜には届くというスピード性かつ低価格な配達サービスの実現により、600万人以上の顧客から支持を集めています。

同社は自社プラットフォームのサービス拡大を目的に、過去に牛乳配達のサブスクリプション企業DailyNinjaや朝食デリバリー企業Morning Cartなど計4社を買収しています。

同社は2018年2月、シリーズEラウンドで3億ドル(約315億円)の資金調達を果たしました。このラウンドでは中国のアリババが主導し、1億4,600万ドル(約153億3000万)を出資しており、既存投資家であるSands CapitalやAbraaj Groupも同ラウンドに参加しています。この資金調達により、同社はサプライチェーンの拡大やマーケティングの改善を図ると共に、アリババは同社(Bigbasket)の筆頭株主となり、同国においてライバル関係にあるAmazonとの熾烈な競争が続いています。また、同社はロックダウン中であった2020年4月にアリババより5000万ドル(約52億5000万円)の追加出資を受けています。

2. Softbank社が出資・Grofers(グローファーズ)

運営会社     :Grofers India Pvt Ltd
Webサイト :https://grofers.com/
設立年         : 2013年12月
本社             : ハリアナ州グルガオン
CEO             :Albinder Dhindsa, Saurabh Kumar

地域よりもさらに狭い範囲の店舗から顧客へ商品を即時配送する「ハイパーローカルデリバリーサービス」を展開するGrogersは2013年にハリアナ州・グルガオンに設立。同社は創業時はBtoB向けを主軸に事業展開を行っていたものの、その後BtoC事業への転換を行い、現在に至ります。注文受注から90分以内に配送可能というスピード重視のサービス提供を行っており、現在はデリーやムンバイ、バンガロールなどインドの主要都市を中心に27都市に展開しており、1日あたり平均6万もの注文数、受注の半数は自社ブランド製品が占めています。

2015年11月に実施したシリーズCラウンドでは、ソフトバンクが主導し1憶2000万ドル(約126億円)を調達、その後2018年3月に実施したシリーズEラウンドでもソフトバンクや既存米VCタイガーグローバルより6,150万ドル(約64億5750万円)の資金調達を実施。また、2019年5月に実施したシリーズFラウンドでは、ソフトバンクを始めとする既存VCより約2億ドル(約217憶円)の調達を果たし、ライバル企業であるBigbasketの資金調達総額である1億5000万ドル(約157億5000万円)を上回りました。食料品デリバリー新興企業の中でも極めて積極的な資金調達を行っています。

当初の予定では、2022年までにIPOを目指すとしていたものの、ロックダウン期間中の大幅な収益向上により、2020年末までの黒字化が見込まれる事から、IPOの実現を2021年末までにすると修正し、当初の予定よりも早める意向を示しています。

3.Hyperpure(ハイパーピュア)

運営会社     :Zomato Media Private Limited
Webサイト :https://www.hyperpure.com/
設立年         : 2018年(Zomatoが買収後、リブランディングを実施)
本社             :ハリアナ州グルガオン(Zomato)
CEO             :Dhruv Sawhney(Wotu Technologies Pvt Ltd/引き続き事業責任者として)

Hyperpureはレストラン紹介および宅配事業を展開しているユニコーン企業・ZomatoのB2Bフードテック部門であり、Zomatoが提携する飲食店向けに食品素材提供プラットフォームを展開しています。同サービスは、無農薬野菜や抗生物質を含まない安心な肉をレストランに供給しています。

元々Hyperpureは、2015年に元Paypal幹部のDhruv Sawhneyによって設立されたWOTU(We Organise The Unorganised)により、バンガロールを拠点としてB2B向け食料品プラットフォームサービスを開始しました。買収企業であるZomatoは、2017年に同社の提携先レストランに対し衛生基準の監査テストを行った所、わずか20%のレストランのみが合格だった事を受け、改善の一環として安全な食材提供を行う事を目的に、Hyperpureの買収へ踏み切りました。2018年にHyperpureはZomatoにより買収され、買収後は大幅なリブランディングを行い、現在のサービス形態となっています。

なお、Zomatoにより買収される前には、WOTUは事業拡大を目的にKae Capital、Mumbai Angels Network、Claris Capitalなどから資金調達を行っていました。ちなみに、WOTU設立者であるDhruv氏は引き続きHyperpureの事業責任者を務めています。

Zomatoは現在Hyperpureの提供地域を18都市に拡大し、今後2年間でインド全土での更なるサービス拡大を計画しています。また、注文を受けてから食品を供給するまでのエコシステムの強化のため、Hyperpureの倉庫に関しても、2020年末までにインド国内に20カ所の倉庫を追加する予定で、同社幹部によると推定5億5000万円の投資を行う予定だと述べています。

4. Ninja cart(ニンジャカート)

運営会社     :Ninjacart
Webサイト : https://www.ninjacart.in/
設立年         :2015年7月
本社             :バンガロール
CEO             :Thirukumaran Nagarajan

B2Bの生鮮食品サプライチェーンを展開するアグリテック企業「Ninjacart」は2015年にバンガロールを拠点に設立。インド全土の農場から仕入れを行い、零細商店であるキラナや小売企業に対し、野菜や果物の配送事業を展開しています。

安全かつ鮮度の高い農産物の配送を目的に、同社は自社アプリを介して収集した農家の収穫カレンダー(供給)と顧客の購買データ(需要)を基に導いた独自のアルゴリズムを用いた独自のサプライチェーンを構築しています。
この独自サプライチェーンにより、農場から店舗まで12時間以内提供を可能としており、1年を通じ99.88%の高い配達精度を誇っています。

同社は現在インド7都市にて事業展開しており、44,000以上の農家から1日あたり1400トンもの野菜や果物などの生鮮食品を60,000店のキラナや企業等へ配送を行っています。
前項で述べたように、同社はロックダウンの影響を受け、現在はToC向けビジネスへの新しい事業展開も行っています。

2019年4月には米大手ヘッジファンドであるTiger Globalより1 億ドル(約10億5000万円)の資金調達を行った後、同年12月には、世界最大のスーパーマーケットチェーン・ウォルマートとインドEコマース大手・FlipkartよりシリーズCラウンドで1000万ドル(約11億円)の資金調達を行っています。

(参考)Amazon Fresh/Amazon Pantry(アマゾンフレッシュ/アマゾンパントリー)

(※米国企業のため企業概要は省略)

国内プレイヤーとしては無視できない米国のネット通販大手Amazonは2013年6月にインド進出を果たしました。インドでもすでにEコマース市場でプレゼンスを高めている同社は、2019年8月より生鮮食品デリバリーサービス「Amazon Fresh」を開始しました。現在はバンガロールを始めとするインド6拠点にて展開しており、現在はインドにおいて主力サービスのひとつとなっています。インドでは、5000種類以上の果物や野菜、乳製品、肉類、アイスクリームなどを午前6時から深夜0時までの配達可能時間にて2時間配送を可能としています。

また、同社が展開する食料品配達サービス「Amazon Pantry」は2019年11月に40都市でサービスを開始しています。ローンチよりロックダウン前まではサービス提供可能地域は110都市だったものの、ロックダウン後の現在は全国300以上の都市で食料品の宅配サービスを提供しています。同社は今後もインドにおける食料品デリバリー事業の強化を積極的に行っていく方針を示しています。

生鮮食品型

1. Fresh to home(フレッシュ・トゥ・ホーム)

運営会社     :Freshtohome Foods Private Limited
Webサイト :www.freshtohome.com
設立年         :2015年8月
本社             :バンガロール
CEO             :Shan Kadavil、Mathew Joseph

バンガロールを拠点とする生鮮品のオンラインマーケットプレイス・Fresh to homeは、「100% Fresh, 100% Natural」を掲げており、保存延長を目的とした化学薬品や抗生物質を一切使用しない、純粋で新鮮な食肉・魚介類の提供を行っています。

同社はインド国内約1,500人の漁師や農家から直接魚や野菜の仕入れを行うことにより、独自のサプライチェーンを構築しています。また、バンガロールを始めとするインド10都市にて事業展開を行っており、65万人の顧客を抱え、毎日14,000件の注文を受け、20トンの生鮮食品の処理を手掛けています。

同社は国内での事業拡大およびIoTやAIの活用によるコールドチェーン強化を目的に、2019年5月にはCE Venturesが主導するシリーズAラウンドで1100万ドル(約11億5500万円)、Iron Pillarが主導するシリーズBラウンドにて2000万ドル(約21億円)の資金調達を実施しました。

2. MilkBascket(ミルクバスケット)

運営会社      :Doorstep Retail Solutions Pvt Ltd
Webサイト :milkbasket.com
設立年         :2015年
本社             :ハリアナ州グルガオン
CEO             :Yatish Talavdia, Anurag Jain, Anant Goel, Ashish Goel, Ekwe Chiwundu Charles

牛乳・生鮮食品のハイパーローカルデリバリーを展開する「Milkbasket」は、2015年グルガオンを拠点に設立。インド独特の生活習慣に基づき、毎朝7時に新鮮な牛乳配送を行うミルクデリバリーを中心に展開していたものの、事業拡大に伴い現在は日用品や卵・野菜、その他生鮮食品の提供も行っています。
同社はインド主要7都市・13万世帯以上にわたってサービス提供を行っており、同社の収益の70%以上が非乳製品から得ており、商品のSKU(最小管理単位)は9000点以上に上っています。現在はコールドチェーン構築及びバンガロールを含む6都市の農村部における集荷センター開設など、当該事業強化を図っています。
また、同分野の強化及び他都市展開を目的に、2019年7月にバンガロール拠点のオンラインストア「PSR Supply Chain」の企業買収を行うなど、今後も企業買収を積極的に行っていく方針を示しています。

同社は2019年6月にUnilever Venturesが主導する最新ラウンドで1050万ドル(約11億円)を追加調達しており、現在までの調達総額は約3200万ドル(約34億円)に上ります。

尚、2020年8月現地メディアによると、リライアンス・インダストリーズ(RIL)が支援するJioMartがオンライン食料品配達サービスへのプッシュの一環として、同社の買収を協議中と報道されています。

SKU(Stock Keeping Unit)
受発注や在庫管理を行う際に使われる用語で、商品の在庫管理をするために必要な最小識別単位を指します。品目をデザインやサイズ、色などで細分化して分類します。

3. Zappfresh(ザップフレッシュ)

運営会社     :DSM Fresh Foods Pvt. Ltd.
Webサイト :www.zappfresh.com
設立年          :2015年
本社              :ハリアナ州グルガオン
CEO              :Deepanshu Manchanda, Shruti Gochhwal

ZappFreshは、ハリアナ州グルガオンを拠点にするDSM Fresh Foods Pvt Ltdが展開する、農場や漁場から直接肉や魚介類提供を行うオンラインプラットフォームです。
同ブランドは「Farm to Fork(ファーム トゥ フォーク)モデル」を重視しており、農家や漁業より直接新鮮な肉や魚介、そしてすぐに調理可能な肉製品を仕入れており、鮮度の高い食材を即日レストランや消費者へ提供を行っています。

同社は提供エリア拡大を目的に2018年3月に2度目となるラウンドを実施しており、インドの消費財企業であるDabur Indiaの副会長Amit Burman氏が当該ラウンドを主導し、20クロールルピー(約300万ドル/ 約3億3000万円)の資金調達を実施しています。

現在、同社の注文数は1日あたり2000~2500を記録しており、インド現地の金融メディア・Moneycontrolの2020年8月報道のニュースにて、創設者であるManchanda氏は、他都市へのサービス拡大やテクノロジーの強化を目的に、現在100クロールルピー(約10億円)の資金調達を検討していると語っています。

※Farm to Fork(ファーム トゥ フォーク)とは、欧米より始まった食システムの事で、原料となる肉や魚、野菜を取り扱う農場や農家・畑から、直接レストランや消費者へ鮮度の高い食材の提供を行う食システムを指します。

4. Licious(リシャス)/ニチレイが出資

運営会社     :Delightful Gourmet Private Limited
Webサイト :https://www.licious.in/  ※企業HPがないためLiciousのHPを記載
設立年         :2015年7月
本社              :バンガロール
CEO             :Abhay Hanjura 、Vivek Gupta

食肉・魚介類の流通・宅配サービス事業「Licious」を展開する「Delightful Gourmet Private Limited」はバンガロールを拠点に2015年に設立されたスタートアップです。

同社はインドでFSSC22000食品安全システム認証を取得した食肉・魚介類の流通ブランドで、地産地消を基にしたコールドチェーンの構築と情報技術を活用した需要予測を行い、注文から120分以内の商品配送を実現しています。
現在はバンガロールをはじめとするインド7地域に展開しており、2019年4月時点では1日平均6,000件の注文を受け、毎月90%のリピート率を誇ります。

2018年12月に実施したシリーズDラウンドでは、株式会社ニチレイが主導し、2500万ドル(約26憶4329万円)の資金調達を果たしました。資金調達により、Liciousは新たに主要都市を中心にインド全土における事業展開及び製品・サプライチェーン拡大を行っています。

次回は「Licious」を運営するDelightful Gourmet社への出資によりインドへの事業展開を推進するニチレイ社が、いかにしてインド事業への足掛かりを掴んだのか、その出資に至るまでのストーリーに迫ります。当該事業責任者であり、現在バンガロール駐在員事務所長を勤める丸山様へのインタビューを実施し、貴重なお話をお聞きすることができましたのでぜひご期待ください。

       

参照元データを見る

参考元データ

 

(1)市場規模、CAGR、市場成長背景(March 04, 2020記事)

India’s $3.6B Online Grocery Market: Insights by Category, Platform, Region and Company (2014-2024)

https://www.globenewswire.com/news-release/2020/03/04/1994880/0/en/India-s-3-6B-Online-Grocery-Market-Insights-by-Category-Platform-Region-and-Company-2014-2024.html

Indian Online Grocery Market Outlook (2019-2023) with Historic Analysis (2016-2019)

https://www.businesswire.com/news/home/20190729005605/en/Indian-Online-Grocery-Market-Outlook-2019-2023-Historic

 

(2)ロックダウン中の予測データ(22 May’20記事)

Online Grocery May Record $3 Bn In Sales In India In 2020 Thanks To Lockdown Demand

https://inc42.com/buzz/online-grocery-may-record-3-bn-in-sales-in-india-in-2020-thanks-to-lockdown-demand/

(3)市場成長背景に関して(March 17, 2020記事)

Online Grocery Market: Overview & Future in India (2020)

https://tradebrains.in/online-grocery-market-india/#Key_Factors_Influencing_the_Growth_of_Online_F_G_Industry_in_India

 

Online Grocery May Record $3 Bn In Sales In India In 2020 Thanks To Lockdown Demand

https://inc42.com/buzz/online-grocery-may-record-3-bn-in-sales-in-india-in-2020-thanks-to-lockdown-demand/

 

India’s online grocery market may clock $3 billion sales in 2020(May 22, 2020記事)

https://tech.economictimes.indiatimes.com/news/internet/indias-online-grocery-market-may-clock-3-billion-sales-in-2020/75875861

 

ニンジャカートのロックダウン中の取り組み

1)Coronavirus: Ninjacart initiative is connecting farmers and consumers through Zomato, Dunzo, and Swiggy

https://yourstory.com/2020/05/coronavirus-ninjacart-farmers-zomato-dunzo-swiggy-fresh-produce-startups

2)Coronavirus: How Ninjacart is ensuring a steady supply of vegetables and fruits even during lockdown

https://yourstory.com/2020/04/coronavirus-ninjacart-ensuring-steady-supply-lockdown

 

Zomato Looks To Exit Online Grocery Business As Food Delivery Recovers

https://www.bloombergquint.com/technology/zomato-looks-to-exit-online-grocery-business-as-food-delivery-recovers

Bigbasket

Alibaba deepens India push with BigBasket investment(February 04, 2018記事/アリババより出資)

https://www.thedailystar.net/business/alibaba-deepens-india-push-bigbasket-investment-1529596

 

BigBasket gets $50 million more from Alibaba(Apr 09, 2020記事/2020年追加出資)

https://economictimes.indiatimes.com/small-biz/startups/newsbuzz/bigbasket-gets-50-million-more-from-alibaba/articleshow/75057565.cms?utm_source=contentofinterest&utm_medium=text&utm_campaign=cppst

 

BigBasket joins the unicorn club with $150M in fresh funding from Alibaba, others(29th Mar 2019記事/過去買収)https://yourstory.com/2019/03/bigbasket-unicorn-funding-alibaba-mirae-cdc-7jkdtk2lnu

 

Grofers

Grofers receives $70 Mn Series F tranche from Softbank at $567 Mn valuation

(August 19, 2019/ソフトバンク出資・注文数データ・プライベートブランド等)

https://entrackr.com/2019/08/grofers-70-mn-series-f-softbank-567-mn-valuation/

 

Grofers Partners With 600 New Brands To Offer More Discounts(10 Aug’20記事/提携関連ニュース)

https://inc42.com/buzz/grofers-partners-with-600-new-brands-to-offer-more-discounts-during-sale/

 

Grofers advances IPO lisiting target to 2021-end(Jul 26, 2020/IPO関連)

https://economictimes.indiatimes.com/markets/ipos/fpos/grofers-advances-ipo-lisiting-target-to-2021-end/articleshow/77181390.cms?utm_source=contentofinterest&utm_medium=text&utm_campaign=cppst

 

https://economictimes.indiatimes.com/small-biz/startups/newsbuzz/amazon-expands-pantry-to-110-indian-cities/articleshow/69581178.cms?utm_source=contentofinterest&utm_medium=text&utm_campaign=cppst

 

http://timesofindia.indiatimes.com/articleshow/76709123.cms?utm_source=contentofinterest&utm_medium=text&utm_campaign=cppst

 

From 350 to 1,000 restaurants in 4 months: how Hyperpure by Zomato is changing the way restaurants work(29th Apr 2019)WOTUの実績・ZOMATO買収

https://yourstory.com/2019/04/hyperpure-zomato-b2b-farm-to-fork-model

 

Here’s why Zomato decided to launch Hyperpure(May 02, 2019)ZOMATO買収の理由

https://www.moneycontrol.com/news/business/startup/heres-why-zomato-decided-to-launch-hyperpure-3924061.html

 

B2B Marketplace For F&B Products WOTU Raises Funding From Kae Capital(22 Oct’16)WOTUの設立情報及び資金調達

https://inc42.com/flash-feed/wotu-kae-capital/

 

Zomato to launch 20 Hyperpure warehouses in 18 cities by next year(30 Apr 2019)今後の展開(倉庫拡大等)

https://www.livemint.com/companies/start-ups/zomato-to-launch-20-hyperpure-warehouses-in-18-cities-by-next-year-1556565626985.html

 

Ninjacart

[Funding alert] Flipkart and Walmart jointly invest in Ninjacart

https://yourstory.com/2019/12/funding-alert-flipkart-walmart-invest-ninjacart

 

Agritech Ninjacart Bags $10 Mn From Flipkart, GEC3 For Expansion(14 Jan’20記事/共同出資に関して)

https://inc42.com/buzz/agritech-ninjacart-bags-10-mn-funding-from-flipkart-gec3-for-expansion/

 

Ninjakartの配送方法などについて

https://yourstory.com/2019/03/startup-ninjacart-tech-enabled-supply-chain-farmers-yrlcfr3a40

 

Exclusive: FreshToHome Is Raising $16.2 Mn From Ascent At $244 Mn Enterprise Valuation(07 Aug’20 記事/資金調達)

https://inc42.com/buzz/exclusive-freshtohome-is-raising-16-2-mn-funding-from-ascent-at-244-mn-enterprise-valuation/

 

With $11 Mn Funding, FreshToHome Ready To Add Mega Fish Farms, Organic Vegetables To Its Basket

https://inc42.com/startups/with-funding-freshtohome-expands-to-offline-retail-adds-vegetables-to-the-basket/

 

India’s FreshToHome raises $20M to grow its fish, meat, vegetable and milk e-commerce platform

https://techcrunch.com/2019/08/26/indias-freshtohome-raises-20m-to-grow-its-fish-meat-vegetable-and-milk-e-commerce-platform/

 

MilkBasket

Milkbasket raises $10.5 million in funding led by Unilever arm(June 5, 2019記事/投資・収益内訳)

https://www.financialexpress.com/industry/sme/milkbasket-raises-10-5-million-in-funding-led-by-unilever-arm/1598187/

 

Milkbasket Plans To Raise $50 Mn To Expand Into Medicine Deliveries(06 Sep’19記事/薬配送事業の資金調達)

https://inc42.com/buzz/milkbasket-plans-to-raise-50-mn-to-expand-into-medicine-deliveries/

 

Milkbasket raises $5.5 million in Series-B funding, round led by Inflection Point Ventures(June 22, 2020/世帯数・商品数など最新実績)

https://www.cnbctv18.com/startup/milkbasket-raises-55-million-in-series-b-funding-round-led-by-inflection-point-ventures-6178171.htm

 

Reliance Industries may buy Urban Ladder, Milkbasket: Report(17 Aug 2020記事/Jioによる買収可能性)

https://www.livemint.com/companies/news/reliance-industries-may-buy-urban-ladder-milkbasket-report-11597639602306.html

 

Micro-delivery startup Milkbasket acquires PSR Supply Chain(July 09, 2019/PSR Supply chain買収)

https://tech.economictimes.indiatimes.com/news/startups/micro-delivery-milkbasket-acquires-psr-supply-chain/70142727

 

Exclusive: JioMart to acquire micro delivery player Milkbasket(13 Jul, 2020記事・同上)

https://www.techcircle.in/2020/07/13/exclusive-jiomart-to-acquire-micro-delivery-player-milkbasket

 

Zappfresh

Dabur’s Amit Burman leads Rs 20 crore investment in fresh meat brand Zappfresh(Mar 20, 2018記事)過去の資金調達

https://economictimes.indiatimes.com/small-biz/startups/newsbuzz/daburs-amit-burman-leads-rs-20-crore-investment-in-fresh-meat-brand-zappfresh/articleshow/63366215.cms?utm_source=contentofinterest&utm_medium=text&utm_campaign=cppst

 

Zappfresh plans to raise Rs 100 crore in a fresh round(Aug 03, 2020記事)今後の資金調達等

https://www.moneycontrol.com/news/business/startup/zappfresh-plans-to-raise-rs-100-crore-in-a-fresh-round-5639691.html

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監修者からのコメント

生鮮食料品においてD2Cブランドの構築で飛躍するのは新興国ならでは

公共交通機関も未整備であり、大都市圏においては交通渋滞も深刻なインドにおいては、食料品の買い出しも一苦労であり、ネットスーパー型と生鮮食料品型の両方の食料品デリバリースタートアップが大きく成長してきました。中でも、生鮮食料品の流通において“一定以上の品質を約束する”ことをフックに消費者の支持を得て、“強力なブランドを構築する”ことに成功して大きく成長しているスタートアップが存在していることは新興国ならではだと感じられます。バンガロールで生活をしている私と家族も、「食肉の購入ならLicious」「鮮魚の購入ならFreshtoHome」、そして当記事には載っていませんが「野菜・果物の購入を考えたらGourmetGarden(https://gourmetgarden.in/)」と言った形で、ほぼ他の選択肢を考えずに自動的にそれらのサービスからオーダーするようになっています。日本をはじめとした先進国においては、どんなスーパーやコンビニでお肉や野菜を購入しても、一定以上の品質は約束されていますが、コールドチェーンも未整備なインドではそうもいかず、一般的な店頭で手に入る生鮮食料品の品質や安全性に大きなばらつきがあります。そのような中で、これらの生鮮食料品デリバリー企業が急成長しているのは「このブランドなら大丈夫」という安心感を与えられているからに他ならず、その裏には品質管理のための大きな企業努力が隠されています。インドにおいては、経済成長に伴って食の品質や安心に対する消費者の要求は年々高まっており、今後もこれらの企業がたゆまぬ努力により成長していくことが期待されます。

村上 矢

監修者:村上 矢

野村證券グループの東京及びNY拠点にて一貫してIT/インターネット領域のスタートアップを担当。多くの企業をIPOへと導く。2014年にインドへと移り、現地にてスタートアップ立ち上げを経験。2016年にIncubate Fund Indiaを設立し、ジェネラルパートナー就任。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校 政治学専攻、歴史学副専攻 卒

Incubate Fund Indiaは創業初期のインド企業への投資に特化したベンチャーキャピタル。日本で200社を超えるスタートアップ企業をサポートしてきたインキュベイトファンドの投資哲学とノウハウを活かしてインド企業への投資と成長支援を行なっている。これまでに15社のインド企業への投資を実行。日本人投資責任者がインド現地に常駐する稀有なファンドとして、投資だけでなく日印間の企業連携などへも積極的に貢献している。

法律面からのアドバイス

             

厳格化するインドEコマースの食品ビジネス規制

インドでは食品ビジネスを行う環境を整備するため、州ごとに異なる関連規制をOne Nation, One Food Lawの名のもとに一本化する取り組みが行われてきました。その一環として食品安全基準法(The Food Safety and Standards Act)が2006年に制定され、食品安全基準局(Food Safety and Standard Authority of India : FSSAI)がインド全土での食品規格、安全及び衛生管理を管轄すると規定されました。詳細については食品安全基準規則2011及び様々な関連規制(regulations)に定められています。

食品を扱うEコマースの増加に伴い2017年にはEコマース食品ビジネス事業者の事業のためのガイドラインが公開されました。調理済フードデリバリーだけでなく本稿で紹介されている食料品デリバリーもこのガイドラインに従うことが義務付けられています。また2018年にZomatoの配達員が顧客の商品を開封した動画が拡散され、食の安全に関する苦情が殺到したため、FSSAIはEコマース食品ビジネスに関する規制を厳格化しました。Eコマースのウェブサイト上での商品の表示方法や賞味期限の残存期間、訓練を受けた者のみが配達を担当することなどの規定が追加されております。

この他FSSAIは2018年に”Clean and safe meat”という掛け声のもとで食肉を販売するEコマース企業のサプライチェーンに対する第三者監査を義務付けました。屠畜場、食肉加工所、倉庫、流通などのそれぞれについてチェックリストがあり、冷蔵品及び冷凍品の温度管理や衛生状態などの様々な項目に対してFSSAIの規定が満たされているかどうかチェックされます。このように消費者の安全や懸念事項を考慮してより厳格な安全基準が頻繁に導入される分野ですので、FSSAIのサイトで最新の動向を確認することが重要です。

AsiaWise Groupでは、今後もインドのEコマース関連規制の最新動向を情報提供して参ります。

田中陽介

アドバイザー:田中陽介

外資系メーカー知的財産部、特許事務所を経て、2019年AsiaWise Groupに加入。2010年より東南アジア、南アジアを拠点都市、医療機器、情報通信技術分野の特許調査や権利化をする一方で、新興国におけるテクノロジーの社会実装、デジタルエコノミーの動向を調査。京都大学工学修士(電子工学)シンガポール国立大(知的財産コース修了)

 
AsiaWise Groupは、法律、知的財産権(IP)分野のサポートを提供するアジア発のクロスボーダー・プロフェッショナル・ファームです。インド(グルガオン・バンガロール:Wadhwa Law Office)に加えて日本(東京:AsiaWise法律事務所)、シンガポール(AsiaWise Cross-border Consulting)にオフィスがあります。最近では日本企業のDX分野のサポートに注力しています。