"Focus" Indian Startup

スタートアップのインド戦略

Vol.06 : 世界一の食大国インドへのニチレイの新たなる挑戦


 

1.  ニチレイ、日系企業として先行事例となるインドスタートアップ”Licious”への出資

2018年12月、インド・バンガロールを拠点とする食肉・魚介類の流通・宅配サービス事業“Licious(リシャス)”を運営するスタートアップ企業Delightful Gourmet Private Limited(ディライトフルグルメ社)は、シリーズDラウンドにて2500万ドル(約26億4329万円)の資金調達を果たしました。このラウンドには株式会社ニチレイがリード投資家として主導し、1500万ドル(約17億円)を出資しており、既存投資家である3one4 Capital、Bertelsmann India Investments、Vertex Ventures Southeast Asia and India、UCLA、Sistema Asia Fundも同ラウンドに参加しています。この資金調達により、Liciousは新たに主要都市を中心にインド全土における事業展開及び、商品やサプライチェーンの拡大を行いました。

ニチレイ社のホームページによるとDelightful Gourmet社を互いに長期的な関係性を築く「ストラテジックパートナー」と位置づけ、互いのビジネスに寄与するとしています。つまり、ニチレイ社はDelightful Gourmet社が持つコールドチェーン構築や購買履歴データに基づくデジタルマーケティング手法のノウハウを得る事で、新たなビジネスへの可能性を模索すると共に、Delightful Gourmet社はニチレイ社の持つ高い衛生管理技術や肉の加工技術などの領域に期待をするとしており、互いの強みを最大限に活かし共に成長・貢献ができる関係性を構築していく予定です。

 

■Liciousについて

運営会社  :Delightful Gourmet Private Limited
Webサイト :https://www.licious.in/about-us(※企業HPがないためLiciousのHPを記載)
設立年      :2015年7月
本社          :カルナータカ州バンガロール
共同代表者 :Abhay Hanjura・Vivek Gupta

「Licious」はバンガロールを拠点に2015年に設立されたスタートアップDelightful Groumet社が展開する食肉・魚介類の流通・宅配サービス事業のブランドです。同社は安全と品質を第一に掲げており、FSSC22000食品安全システム認証*1を取得した食肉・魚介類の流通ブランド。「Farm to Fork(農場から食卓まで)」に基づくビジネスモデル、そして、「120分以内に新鮮な商品をお客様のもとへ届ける」をコンセプトに、地産地消を基にしたコールドチェーンの構築と顧客データと情報技術を活用した需要予測を行い、インドにおける新たな食肉・魚介の流通拡大に取り組んでいます。現在はバンガロールをはじめデリーNCRやムンバイ、チェンナイ、ハイデラバード全域を含むインド7地域に展開しており、2019年4月時点では1日平均6,000件の注文を受け、毎月90%のリピート率を誇ります。


*1:FSSC 22000:食品安全マネジメントシステム(FSMS)認証(ISO 22000)
FSMSとはFood Safety Management System の略。食品安全マネジメントシステムで安心・安全な食品を消費者に届けるために、食品安全を脅かすハザード(危害)を適切に管理する仕組みによる保証を目指したもの。グローバル化した社会で通用する食品安全規格として、ISO 22000(食品安全マネジメントシステム-フードチェーンの組織に対する要求事項)やFSSC 22000(食品安全システム認証22000)などがあります。

2.  バンガロール駐在員事務所長・丸山氏へのインタビューとその背景

ニチレイ社のインド進出事例は、日系企業がインドのスタートアップと連携してインド進出への足がかりを得たという点で大変貴重な事例であると考えており、また、コールドチェーンをはじめとした社会インフラが未整備なインド、そしてEC(電子商取引)という同社にとって新たな事業分野への参画は、これまでにない異例の挑戦であったと考えられます。今回の記事では、今後インド進出を検討される日系企業にとってヒントとなる機会を得るべく、Liciousとの出会いや投資の最終意思決定に至るまでの経緯、その中で同社が直面した課題、そして、コロナ禍における両社の動きなどについて、インド事業の推進を主導されたニチレイ社の経営企画部でありバンガロール駐在員事務所長である丸山氏にお話を伺いました。

丸山氏はLiciousへの出資後も、引き続きインド事業責任者としてDelightful Gourmet社(以下便宜上“Licious”で統一)の拠点であるバンガロールへ駐在員として派遣されました。2020年1月に当地にて駐在員事務所を立ち上げ、今後の具体的な取り組みに向けてまさに動き始めようというタイミングで、新型コロナウィルスの影響を受け、2020年8月現在は日本へ一時帰国をされています。Liciousとはオンラインでのコミュニケーションを中心に業務を行っている状況の中で、今回のインタビューについてもテレビ会議システムZoomを使ってお話を伺う時間を頂戴いたしました。(聞き手は弊社代表の田中)

3.  ニチレイのインドスタートアップ”Licious”への出資とその軌跡とは?

■丸山氏の紹介

丸山洋平氏/株式会社ニチレイ 経営企画部 バンガロール駐在員事務所長
〔丸山氏・略歴〕
2002年 株式会社ニチレイ入社 低温物流事業部 船橋物流センター(冷蔵倉庫業の実務に従事)
2005年 ニチレイグループの持株会社体制への移行により株式会社ロジスティクス・ネットワーク 船橋物流センターに転籍
2007年 株式会社ロジスティクス・ネットワーク事業管理部(コンプライアンスの実務に携わりながら海外要員育成プログラムに参加)
2009年 株式会社ニチレイロジグループ本社 海外事業推進部に転籍(海外子会社の管理業務、フランス企業のM&A業務に従事)
2010年 Nichirei Holding Holland B.V.に異動(オランダ駐在、欧州子会社の企画管理業務)
2015年 株式会社ニチレイロジグループ本社 経営企画部に異動(2016年にニチレイ本社の事業開発研修に参加)
2017年 株式会社ニチレイ 経営企画部に転籍(Liciousへの出資を担当)
2020年 株式会社ニチレイ 経営企画部 バンガロール駐在員事務所に異動

 

■インタビュー対談記事

(1)  出資までの軌跡(前編:インド市場調査~Liciousとの出会い)

――インド市場への足掛かりとして当初はレトルトカレーでの進出を検討していたものの、結果的に事業化は厳しいと意思決定されたと理解しています。最終的にLiciousへの出資という形でインド進出が実現したのはどのような背景があったのでしょうか?

当時(2018年初)インドへの進出可能性を探るため、高い健康意識を持つインド人消費者向けに、動物性フリーでヘルシーが売りの当社商品「Friendly Diningシリーズ」のレトルトカレーを持ってインドに渡ったんですが、結果は全然だめでしたね。ホテルのシェフやケータリング会社にサンプルを渡してもなかなか前向きなフィードバックを得られませんでした。一方で、この調査を通じて、新鮮でかつ加工されていない食品こそが健康的であるというインド人の「健康観」に気づけたことが大きな成果となりました。

そのような調査結果を得たのと同時期に、幸いにも知人からの紹介で、ちょうど資金調達に向けて動いているLiciousと出会いました。なので、結果として「レトルトカレーがダメだったから次はどうしよう」と攻め手を探しあぐねることなく、同時にLiciousへの投資検討も始まったという状況でしたので、幸いにもインド進出やインドにおける事業開発への動きがしぼむ事はなかったですね。

その後、2018年4月に日本で開催中のスタートアップイベント等を理由にちょうどLiciousの共同創業者が日本に滞在している時に、そのタイミングでニチレイ本社に来てもらい、同社についてプレゼンをしてもらいました。そのプレゼンを聞いて、ECサイトを通じて単に食肉・魚介類の販売を行っているだけでなく、情報テクノロジーを駆使して販売する仕組みを構築しているという事実を知り、私を含む事業開発グループにはすごく響きましたね。「こういった情報テクノロジーの活用がニチレイに足りていない部分だ」と感じました。そこからグループ全員で本格的に調査を開始したというのが始まりですね。

――2018年4月、ニチレイ本社でLiciousの共同創業者と実際に会った時、Licious側もニチレイ社に対してはすでに関心を持っていたのでしょうか?

当時はそこまで強い興味は持っていなかったと思います。Licious側も我々と同様に、知人からの紹介でニチレイを知ったと聞いています。この初回の打ち合わせの後、実際にLicious側のオペレーションを見るためにすぐにバンガロールへ渡りました。その後、Licious側がもう一度来日し、ニチレイの加工場や冷蔵倉庫、設備などを見学してもらい、そこで彼らもニチレイの事を詳しく知ったのではないかと思います。私たちに興味を持ってくれたとしたら、この時だったのではないかと思いますね。

――バンガロールへLicious側のオペレーションを見学しに行った時の印象はどうでしたか?

プレゼン資料等で現場の写真を事前に見ていたので、その通りだなと感心しました。また、Liciousの加工場に行く前にローカルの食肉市場を見学させてもらいましたので、余計にLiciousの衛生管理のレベルの高さを感じましたね。デリバリーセンターについては全然イメージと異なりましたね。ニチレイが日本で運営しているような物流センターと異なり、雑居ビルの2階や3階を借りて、そこに冷凍機を突っ込んでデリバリーセンターに仕立てている、という感じでした。こういう部分は日本では考えられないと感じましたが、逆にそれが斬新で、「限られたもの、あるものを使って、出来る範囲でコールドチェーンを自分たちで作り上げているのはすごい」と感心しましたね。

――なるほど。私の経験上、これまでインド視察に訪れた多くの日系企業が当初はとても驚かれるんですよね。例えば、製造業の方だと「こんな製造現場では一緒にやっていけるイメージがわかない」とネガティブな印象を持たれる企業様も少なくありません。ニチレイ社の場合はイメージ以上に現場がきちんとオペレーションをしている領域とやはりそうではない面、その両面があって、ただ、日本との違いが必ずしもネガティブに働いたという感じではなかったんですね。

そうですね。特に加工場については彼らがゼロから作り上げていて、最初から国際認証であるFSSC22000を取得しているんですね。この認証を前提に作りこんでいるので、加工場については我々から見てもすごいと感じました。例えば、食材をカットする人、その人(カットする人)をモニタリングする人が別々にいますし、各作業のラインがきっちりと分かれています。作業アイテムによって、作業着やまな板の色が分かれていたり、ミスが起きないような様々な仕組みを作りこんでいたり、それを人が管理して、温度管理もきちんと行っていた点など・・・、創業者二人のこだわりなんですね。とにかく彼らは「品質第一」だったので、そのこだわりをきちんとオペレーションに落とし込んでいるのが凄いと思いました。しかも、創業者は二人ともバックグラウンドが食品ではないので、そういったところも驚きましたね。

(2)  出資までの軌跡(後編:経営陣へいかに「納得」してもらうか)

――Liciousへの出資を承認してもらうにあたり、かなり苦労をされたのではないかと思います。最終的に経営陣からの承認が得られるまで、どのような課題や苦労がありましたか?

そうですね。苦労した点を3つほど挙げるとすれば、一つ目は「経営層の中でインドの具体的なイメージがなかった事」。出資を検討していた当時、まだニチレイはインドとのビジネスが何もなかったので、経営層の中にインドという国のビジネス上のイメージがほとんどなかったんですね。あったとすれば、メディアで一般的に報道されている「不衛生で」「新興国で」というようなインドのマイナスイメージ。「インドはよく分からない」という雰囲気が漂っていたんですが、そこは実際に私達が出張した時の様子、現地で出会った人や場所など、見聞きしたことを写真と文章に書き起こして事細かく説明していくことでしか乗り越えられなかったですね。

二つ目は「スピード感の違い」。スピード感が全然合わず、両者間での調整に苦労しました。そもそも、4月に出会って出資の意思決定をするまで、Licious側からは2~3か月ぐらいのスピード感を期待されていました。最初はそれを無理に合わせようとして、社内調整を図ってはいたものの、途中でどう考えても無理だという判断に至りました。そこで、インド現地に訪問したときに、Licious側に事情を説明すると共に「出資したい前向きな気持ちはある」と伝えました。彼らからは「期間を延長したら必ず出資してくれるのか?」など色々言われましたが、前向きな気持ちを示しつつ、密にコンタクトをとり続ける事で、何とか状況を理解してもらい、無理のない期間を設定してもらいました。スピード感の違いについてはこうして乗り切りましたね。

そして、最後は「事業計画の見方」。日本だと、いくら成長するとしても年に5~10%成長すればいい一方ですけど、インドのスタートアップは毎月そのくらい伸びていて、年間の成長率で見るとものすごい事業計画を作ってくるじゃないですか。

――そうですね。日本側からすると「これは過剰に評価しすぎじゃないか」という風に感じますよね。

事業計画については細かな質問を受けたら、ひとつひとつLiciousに聞いて答えを返して、何度も何度も繰り返して質問が出なくなるまでやる。そこは近道やテクニックはあまりないような気がしていますね。各社、それぞれの意思決定の仕方や判断基準があると思うので、意思決定者の質問に可能な限り丁寧に応えていくしかないと思います。

――なるほど。非常にご苦労されたのではないかと思います。実際に私がこれまで見てきた事例でも、インド側が日本側からの細かい質問に対して対応できなくなったり、スピード感が合わずにそのまま破断となるケースも見てきました。ただ、出資に至るまでの期間が長期化してもきちんとコミュニケーションが続けられていたのは、丸山さんを中心とした事業開発部メンバーの方々の「出資を実現したい」という想いやその本気度が相手に伝わっていたのではないでしょうか。

具体的な出資交渉に至るまでに、お互いの会社を訪問して、ビジネスミーティングを重ねていましたので、そのなかで我々の想いは伝えていましたが、ビジネスミーティング以外でのコミュニケーションも重要だったと思います。彼らが来日していた時は終日一緒に行動していましたので、移動の車中や、夜の飲み会では、プライベートなこともいろいろと話していました。その中でお互いの理解を深められていたので、交渉を続けられることができたと思っています。
また、Licious側の事業計画シートが綿密で、ロジックがしっかりしていたこともプラス要因でした。我々の質問に対してロジカルな回答が返ってこなければ、我々も自信を持って(経営陣へ)説明できなかった。なので、彼らがちゃんと事業計画を作りこんでいたというのは凄いと思います。我々のシリーズまでに様々なVC(ベンチャーキャピタル)が入っていますので、これまでの経験があるからではないかと。とにかくすごい作りこみでしたよ!

――中国や東南アジアで展開している事業モデルでいうとスーパーやコンビニなど外食チェーン関連がメインであるのに対し、インドではECということで全く違う業態で、まさに新規事業への挑戦であったと思います。そういった点での最終決定に至るまでの難しさはありましたか?

最初は既存事業とのシナジーを描いてみたりしたものの、飛び地のビジネスをやるのが事業開発グループとしてのミッション。そう考えると、短期的なシナジーはないという説明をしてしまう方がスッキリしました。将来的にニチレイがインドに進出するための足がかりとしてLiciousへの投資は意味があると説明はしましたが、短期的にシナジーがあるかと言われた時にはそこは無理には描かずに長期的な視点で絵を描き、説明をしました。

(3)  「何としてもLiciousへ出資したい」そう感じた背景

ディライトフルグルメ社の共同代表者Abhay Hanjura(左)とVivek Gupta(中央)と丸山様(右)
写真はニチレイ社HPより抜粋

――これまで投資の承認を得るまでのプロセスについてお話を伺いました。そこで出資案件を主導された丸山様の当時の想いについてもう少し聞いてみたいのですが、現場のオペレーションや事業計画の作りこみを目の当たりにして「何としてもLiciousへ出資したい!」という思いは当初から強かったのですか?

もともと私の中にインド進出への想いがあったわけではありません。インドにレトルトカレーを売り込みに行った時も、私が発案したわけではありませんでした。事業開発グループのメンバーとしてインドの調査を進める中で、たまたま私の知り合いを通じてLiciousを紹介してもらったので、Liciousに関しては私がリードして進めることになったというだけです。ですが、検討を進めていくなかでLiciousのビジネスモデルへの興味が深くなり、創業者の人間的な魅力にも惹かれて、次第に「何としても出資したい」という気持ちになっていきました。

Liciousは創業者だけでなく、チームもよかったですね。創業者の二人がそれぞれのチーム(商品開発、生産管理など)に専門的なバックグラウンドを持つ人を引き抜いてチームを作っているんです。元ホテルのシェフである商品開発担当や元食品メーカーの調達担当、品質保証やシステム担当、財務担当がいて、創業者が中心となって説明しながらも専門的な話になると各チームリーダーがちゃんと出てくる。その中で感じたのは「創業者二人の理念がチーム全員にすごく伝わっている」ということ。各チームリーダーが創業者と同じ理念を持って業務に取り組んでいるのが分かったんですね。創業者と各チームリーダー間の信頼関係を現地で凄く感じました。なので、信頼できたのだと思います。

 

(4)  コロナ禍の状況下における今後の見通し

――新型コロナウイルスによる影響で、事業だけでなくコミュニケーションの取り方にも影響が出ていると思います。また、インドのスタートアップは一般的に意思決定が早く、どんどん失敗しながら前へ進む所謂“アジャイル型”の企業が多い中で、ニチレイ社のような大手企業とはかなり経営スタイルが異なる点もあるように思いますが、共に事業を行っていく中で感じている課題などはありますか?

今私が日本にいるという事もあり課題はいろいろあります。コミュニケーションに関していえば、スピード感はいまだに全く異なります。Liciousが速いときもあれば、こちらが待たされることもあります。そこは私が間に入って調整するしかありません。バンガロールに滞在していた時はLiciousの事務所内にデスクを構えていて、聞きたい事あればすぐに聞ける環境でしたが、今はメールベース、以前ほどスピード感のあるコミュニケーションがとれません。物理的に離れてしまうとこういった問題があると感じています。コロナ渦中でのLiciousの大変さは分かっているので、多少レスポンスが悪くなったとしても、あまり無理は言わないようにしています。この状況でのコミュニケーションはやはり難しいですね。
事業に関しては、バンガロールで駐在員事務所を立ち上げたのが2020年1月ですし、コロナの影響もありますので、まだまだこれからという状況です。共に事業を行っていく中での苦労はこれから経験することになるだろうと思っています。

――なるほど。まさにこれからというタイミングでロックダウンになってしまったのですね。現時点での方向性として、ニチレイ社の技術(衛生管理・安全管理・鮮度分析など)が今後どのようにLiciousの中で活かされていくのか、この状況下において、もしくは、コールドチェーン等のインド特有の課題において何か実現していきたいことなどがあれば教えてください。

今回のコロナでLiciousだけに限らずEコマースがぐっと伸びていて、需要が高まっている状況で、急遽それに見合う供給体制が求められています。まずはそのあたりで何かお手伝い出来る事があればと思っていますが、今の状況ではなかなか具体的に進めていくのが難しく、オンラインだけでのコミュニケーションには限界があるように感じています。

コールドチェーンについては、サプライチェーンの上流部分でのサポートができるのではないかと思っています。Liciousがこれから事業を拡大していく中で、小さなトラックによる短距離輸送がこれからは大型トラックによる長距離輸送になるかもしれない。商品を一時保管するためのストックポイントも、今は小さな倉庫で対応していますが、これからは 大きな冷蔵倉庫が必要になるかもしれない。物量が増えて、各輸送の線が太く長くなる時には何か出来る事があるのではと感じます。逆にニチレイ側においてはLiciousが持っているインドの消費動向や顧客データを使って何ができるかを考えています。

インタビュー中に笑顔でお話下さる丸山様(左)

――ありがとうございます。最後に、現在インドへの進出を検討している日系企業に向けてぜひメッセージをお願いいたします。

あくまでも私の経験談ですが、インドスタートアップの方は非常にオープンだと思います。インドでやりたいこと、知りたいことを説明すれば、誠実に答えてくれます。また、お酒を交えたコミュニケーションを好む人も多いです。ビジネス面でもコミュニケーションの面でもオープンマインドでいることは大事かもしれません。

それから、ちょっと本題から逸れた話になりますが、インドでの手続きは時間がかかります。駐在員事務所の設立、VISAの取得、現地に赴任してからの諸手続き、住居の手配など、いろいろな手続きがありましたが、想像以上に時間がかかりましたので、余裕をもったスケジュールを立てておいた方が良いと思います。私の場合、見込みが甘かったせいで会社にも家族にもいろいろと迷惑をかけてしまいました。

まずはインドに行ってみることが大事だと思います。私たちは限られた情報でインドを一括りにしてしまいがちですが、インドは広大で多様です。行ってみないと分からないことだらけです。まずは行ってみることをお勧めします。

――丸山さん、本日は大変貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました!