D : インド会計の基礎と監査制度の概要
(文責:田中啓介 / Global Japan AAP Consulting Pvt. Ltd.)
インド会計の基礎と気をつけるべきポイント
インドにおける会計処理は、2013年インド新会社法(The Companies Act, 2013)とインド勅許会計士協会(ICAI : The Institute of Chartered Accountants of India)が公表している会計基準および解釈を含む以下3つの規定に則って実施されています。
- 2013年インド新会社法(The Companies Act, 2013)
- インド会計基準(Indian Accounting Standards)
- インド会計基準解釈(Indian Accounting Standard Interpretation)
インドに進出している日系企業にとって、そもそも複雑な会計処理が求められたり、日本の会計基準と比べて大差を感じる状況は稀で、また重要性の観点からも連結決算時に会計基準差異(GAAP調整)が発生するようなケースは比較的少ないと感じております。一方で、事業モデルや取引スキームによっては創業費、のれんの償却、その他複雑な会計処理を要する取引が発生した場合においては、会計基準差異が発生する可能性がありますので留意が必要です。インド会計税務に関してより経理実務に近いコラムを以下にいくつかご紹介させていただきます。
コラム:インド法人設立初年度に気をつけるべき経理実務の実態を理解する
コラム:インドの減価償却費にかかる3つの法規定とその経理実務について理解する
コラム:製造業社が工場完成までに直面する経理実務の実態を理解する
さて、世界的には国際会計基準IFRS(International Financial Reporting Standards)への移行が進む中で、インド企業省(MCA : Ministry of Corporate Affairs)も2015年にインド版IFRSである「Ind AS」を公表しました。現在、当該Ind ASは、上場企業、もしくは、純資産が25億ルピー以上の非上場会社およびその持株会社、子会社、ジョイントベンチャー、関係会社は強制適用となっていますが、その他の企業は任意適用となっています。詳細については以下のリンク先をご確認いただければと思います。
インドの監査制度の概要
インドではすべての会社が、開業登録をした勅許会計士(Practicing CA : Chartered Accountant)もしくは監査法人(CA firm)を監査人として選任し、 毎年会計監査(法定監査:Statutory Audit)を受けることが義務付けられています。監査人の任期は原則5年を1期とし、監査法人の場合にのみ最大2期(10年)を任期とすることができます。なお、新会社法において監査人の独立性(Independency)を担保するために以下のような監査人としての非適格要件の範囲拡大が規定され(新会社法第141条3項)、さらに非監査業務提供の禁止が明記されました(新会社法第144条)。
監査人選任にかかる主な非適格要件
- 当該会社の役員または従業員、従業員の協力者または被雇用者
- 当該会社または子会社等の株式または持分を有する者
- 当該会社、その子会社、その親会社またはその関連会社との間で何らかの取引関係を有する者
- 親族が当該会社の取締役または主要な経営者として雇用されている者、など
禁止されている非監査業務
- 投資アドバイザイリーサービス
- 内部監査
- マネジメントサービス
- 記帳代行サービス、など
また、上場企業または払込資本金1億ルピー以上または総売上10億ルピー以上または負債総額5億ルピー以上の公開会社は、独立取締役(Independent Director)を含む3名以上の取締役から構成される監査委員会(Audit Committee)を組成しなければなりませんが、インドに進出している日系企業のほとんどが非公開会社(Private Limited Company)であるため、当該コンプラインスは適用対象外である場合が多いように思います。具体的な監査手続きや監査人の責任、粉飾決算事例、また、その他の監査制度やインドの勅許会計士(CA)の試験制度については以下のリンク先をご確認いただければと思います。