F-31 (b) : インドの株主選任にかかる名義株主と完全子会社化について
(文責:安本理恵 ・奥晋之介/ Global Japan AAP Consulting Pvt. Ltd.)
非公開会社を設立する場合には、株主の要件として最低2者を株主を選任する必要があります(インド会社法第3条(1)(b)項)。当該要件を満たすために、外国法人(例:日本本社)と併せて、そのグループ会社に株式の一部を保有させるケースが一般的です。しかしながら、そのようなグループ会社が存在しない場合には、ノミニー(名義)株主を別途選任し、株式の一部(例:1株、0.1%)を名義株として保有してもらうことで、インド現地法人を(実質)完全子会社として設立することができます。
例)日本法人A社の完全子会社の株主構成 | |
A社 | 999株(99.9%) |
ノミニー(名義株主) | 1株(0.1%) |
合計 |
1,000株(100%) |
1. ノミニー株主を選任する場合の法人設立後のコンプライアンス
ノミニー株主がいる場合、法人設立後30日以内に、株主とノミニー株主はFORM MGT-4 & 5を通じてインド現地法人に対してそれぞれ宣誓書を提出します。インド現地法人はこの宣誓書を受領後30日以内に、EフォームMGT-6をROC(会社登記局)に報告登記をする必要があります。(※下図参照)
2. インド法人を(実質)完全子会社とするメリット
実質完全子会社とすることで、親会社は議決権行使の方法にかかわらず、常に子会社に対する完全な統制が可能となります。また、完全子会社のみ、インド国外で臨時株主総会を開催することができます。(通常はビデオ会議の場合を除き、インド国外での開催は認められていません)
いずれにしても、定時株主総会については、基本的には登記住所市内での開催が義務付けられています。(2022年現在、ビデオ会議開催の緩和策あり)
3. ノミニー株主についての注意事項
ノミニー株主は、株主名簿に記載された株式所有者(=Registered Owner)であって、同時に当該株式から生じる受益権を保有していない者と定義されます。ノミニー株主は議決権を有し、株主総会において定足数に算入されます。(インド会社法第2条(55)項および第89条)
株主総会開催にあたって、非公開会社の定足数はインド会社法で株主2名とされているため、株主本人またはその代理人2名の出席が必須となりますが、名義人であるノミニー株主は代理人を立てることができず、必ず本人が出席しなければならないと解釈される点には注意が必要です。(インド会社法第103条(非公開会社における株主総会定足数))なお、法人株主の場合には株主総会に出席する代理人を任命することが出来ます。(インド会社法第2条(55)項、第89条および第103条)
執筆者紹介About the writter
2014年より北インドグルガオン拠点の現地日系企業で法務や総務、購買等を中心とした管理業務を経験後、インドの法務および労務分野の専門性を深めるべく2018年に当社に参画し、南インドチェンナイへ移住。現在は会社法を中心とした企業法務や、労働法に基づく人事労務関連アドバイス、インドの市場調査業務を担当。2023年3月に退職。