B-11-1 : インド人ってどんな人?〜9 Quqestions〜
(文責:田中啓介 / Global Japan AAP Consulting Pvt. Ltd.)
皆さんはインド人に対してどのようなイメージを持っているでしょうか?今回は9つの質問をもとに、私なりのインド人に対する理解を言語化してみたいと思います。なお、私はチェンナイに10年に住んだ後にバンガロールに引っ越して1年在住、という状況のため、かなり南インドに偏った経験にもとづいた内容になってしまいますが、独断と偏見を恐れずに「インド人ってどんな人?」について考察を述べてみたいと思います。異論・反論大歓迎です!それではいってみましょう!
1. インドの驚くべき多様性: 想像を超えるダイバーシティとは?
インド、その名を聞いただけで多様性に満ちた文化や宗教、風習を思い浮かべる人も多いでしょう。この国は、8割をヒンズー教、14%がイスラム教徒、そして残り6%がキリスト教、シーク教、仏教、ジャイナ教という多彩な宗教背景を持つ人々で構成されています。そして、ヒンズー教の中にはカーストという独自の階級制度が存在し、地域ごとにも異なるコミュニティがあります。
私がこれまでに経験した中でも、インド人との出会いは常に驚きの連続でした。面接に裸足でやってくる人、30センチもの長い髭をたくわえる男性、面接には当然のように父親が同席するケースなど、日本の常識からは考えられないような状況に遭遇します。しかし、それぞれには彼らの宗教や文化に根差した深い理由があるのです。
また、インド人同士であってもコミュニケーションが取れないことも多々。というのも、インド国内には460もの言語があると言われていて、特に南インドでは州ごとに公用語が異なります(北インドでは比較的ヒンディー語を話すエリアが多い)。主要な公用語として英語とヒンディー語を含む17言語がインドのルピー札紙幣にも記載されていて、英語とヒンディー語が表面に、残りの15言語が裏面に表記されています。私もチェンナイに移住をした当時、チェンナイがあるタミル・ナードゥ州の公用語タミル語の勉強をしていましたが、飛行機で50分の隣町バンガロールに初めて出張で行ったときにほとんど誰もタミル語を話していないことに気づいて(バンガロールがあるカルナタカ州の公用語はカンナダ語)、一気に学習モチベーションが失せたことをよく覚えています。ただ、州ごとに公用語が違うため、インド人同士であっても英語でコミュニケーションを取っている人が比較的多い点は、南インドが生活やビジネスがやりやすい一面と言えるかもしれません。
日本企業がインド人材を採用する際に直面する課題には、主に言語、食文化、家族の価値観の違いがあります。特にインド人が日本に赴任するケースでは、英語のコミュニケーションの難しさや食文化の違い、そして家族から遠く離れた地での生活、さらに、日本独特の企業カルチャーは彼らにとって大きな負担となります。アニメ等に代表される日本の文化に強い興味を持ったインド人でない限りは、日本で生活をし、日本で仕事をするのは決してサステイナブルなスタイルとは言えません。
何事もそうですが、やはりお互いの歩み寄りが大切です。採用活動を進める際、日本企業は、インド人が企業に対して何を期待しているか、彼らにとって居心地のいい職場とはどのようなものか、彼らの人生を考えたときに日本にはどれぐらい滞在ができそうか、やむを得ない事情でインドへ帰国することとなった場合にどのようなキャリアパスを描いてあげることができるか、を考えておく必要があります。また、インドでは転勤という文化はあまり根付いていないとされています。その背景には、地域ごとの文化や食習慣、母語の違いなどが影響していると考えられます。採用や人材配置を進めるうえで、インドの文化や風習を深く理解し、それを尊重する姿勢が必要です。
2. 仕事を通して見るインド人の心: 彼らの動機は何?
インドの若者たちの多くは、成功の道のりを特定のパターンで考える傾向があります。それは、良い大学に入学もしくは留学をし、有名な大企業や外資系企業に就職すること。そこでの経験を積み、専門性を高め、その結果としての高い給与を得ることが目指されるのです。ご家庭の事情によりますが、この「高い給与」を目指す背景には、自分のためだけではなく、家族や祖父母、親戚までもを養うためであるケースも多く、その責任感は非常に強いと感じることが多々あります。
例えば、インドではソフトウェアエンジニアは非常に高く評価される職種のひとつとなっています。多くの親が、子供にエンジニアとしての道を推奨しており、私の知り合いのソフトウェアエンジニアももともとは獣医になりたいと思っていたようですが、獣医の給与水準が低いことを理由に親の意向でエンジニアの道を選ばざるを得なかったそうです。また、アメリカのIT企業に勤務する親戚の成功例が引き合いに出され、家庭内でプレッシャーを感じる若者も少なくありません。
また、日本と比較するとフリーランスや個人事業主として独立して働くインド人エンジニアはとても多い印象ですが、安定した収入を得るのは難しく、その結果、企業に就職し直すことを選ぶ人も少なくありません。実際、私たちが採用活動を進める中でも、フリーランスを辞めて就職したいと言って応募をしてくる人は比較的多いように思います。また、コロナ禍以降は突然のレイオフや、給料の支払いが遅れるなどの問題に直面した経験を持つインド人も多く、安定した企業での雇用(ジョブセキュリティ)を求める声は高まっている印象です(以前、弊社に入社した従業員が、初めての給料を給料日に支払っただけで、泣きそうな顔をして感動してくれた従業員もいました。以前の会社では給料日に給料が支払われたことが一度もなかったんだとか)。
なお、結婚や家族の病気などを理由に、急にまとまったお金が必要になった際、従業員から金銭ローンの相談を受けるのもインドではよくあります。このような相談があった場合、インドでは比較的リクエストに応じる企業が多いと思います。弊社でも、勤続◯年以上であれば月額給与の◯ヵ月分を最大◯ヵ月間で返済可能、といったポリシーを設定して、無利子での従業員ローンをサポートしています。
3. インド人とのコミュニケーション: 一歩先を行くための秘訣は?
インドは多様性に溢れた国。宗教、言語、食文化など、その多様性は人々の考え方や性格にも現れています。私の独断と偏見にもとづき、インド人とのコミュニケーションをスムーズに行うためのポイントを以下にまとめてみました。
1. 話の聞き方、割り込み方
インド人は自分の意見をストレートに表現することが得意で、話が外れることもしばしば。そのため、対話を効率的に進めるためには、割り込んで軌道修正したり、話の中心に戻すことが大切です。しかし、それをする前にまずは相手の意見に理解を示し、話を楽しんで聞いているという姿勢を示すことが必要です。
2. 感情的にならずにロジカルに
異なる意見や考え方が出た場合、すぐに反論するのではなく、まずは理解を示します。その上で、自分の意見が異なる理由を、感情的にならず、淡々と論理的に説明することが大切だと感じます。
3. インド人の強みを理解する
彼らは異なる背景や文化の人々を受け入れる優しさ・懐の大きさと合わせて、悪気なくストレートに伝えられるコミュニケーション能力の持ち主です。また、彼らのトラブルへの耐性は驚くほど強く、失敗を引きづらず、困難な状況にも果敢に、前向きに取り組みます。
4. 期待値の調整
インド人は期限やコミットメントに関する考え方が異なることがあります。例えば、税務申告期限やクライアントへの提出期限など、日本人が重要視する期限であっても、自分が直接的な影響を与えていない原因(同僚の作業遅延、クライアントからの情報提供不足、システムエラーなど)に対しては「私のせいではない」「だって仕方ないじゃない」と考える傾向にあります。外部要因を鑑みたフレキシブルなスケジューリングや期待値の調整は過度に期待してはいけません。
5. コミュニケーションツールの使い分け
WhatsApp:インド人とのコミュニケーションはこれなしには語れません。関係性を発展させたいインド人と出会った場合はとりあえずWhatsAppでつながっておくが吉。フォローアップやリマインダーが必要な場合にも有効です。Linkedinは自分のプロフィール用に使われる傾向にあるので、自分のLinkedinもちゃんとアップデートしておきましょう。
メール:情報共有を目的として使用。あまり返信は期待できないので、粘り強くフォローアップが必要。
テレビ会議:明確なアジェンダがあるビジネスミーティングにのみ利用。
電話:複雑な内容や、メールだけでは誤解を生む可能性のある事項について説明するのに利用。
対面:個人的に仲良くなるためにはこれしかありません。特にランチやディナーなど、カジュアルな場を設けることで、ビジネスの土台となる個人的な関係性を築くことは必須です。相手の感情を理解する上でも有効と言えるでしょう。
4. マネジメントの舞台裏: インドのリーダーはどう統率する?
インドは日本とは異なる独特の文化と価値観を持つ国です。ビジネスの文脈で言えば、インドはトップダウンの組織構造が比較的に顕著と言えるでしょう。では、インドのリーダーたちはどのようにして統率をとっているのでしょうか?
1. トップの立ち居振る舞いがカギ
インドのビジネスシーンでは、トップの行動や態度、そして身だしなみまでもが他のメンバーに大きな影響を与えると感じます。リーダーの人間的魅力や多様性への理解、優しさと厳しさのバランスが、組織全体のモラルやコミュニケーションの質を向上させる要素となるように思います。
2. 明確な指示と的確なフィードバック
日本のようにボトムアップの社会では、部下が上司の期待を察知・忖度して仕事を進めることが一般的かもしれません。しかし、インドのビジネス文化では、明確な指示が不可欠。部下が期待値を100%で捉えることは難しいため、リーダーとしては部下は60%程度しか理解していないであろうことを前提として、細かいレビューとフィードバックを繰り返すことが求められます。
3. フィードバックがモチベーションの源
インドの従業員にとって、トップや上司からのフィードバックは自らの成長やモチベーション向上のための最大の要因となります。良質な人間関係の構築や、リーダーの期待や価値観をしっかりと伝えることで、部下のモチベーションを継続的に高めることができると考えます。
4. マネージャーへの指示
トップダウン文化が色濃く残るインドでは、独自の判断で行動するマネージャーは少ないと感じます。大枠のミッションや方針は上層部から与えられるべきであり、新しい取り組みや改善の提案はボトムアップのアプローチを最初から期待するのではなく、それを促すための上層部からの的確かつ明確な指示・調整・承認が必要です。マネージャーが自ら考え、判断ができるようになるまでは、粘り強いレビュー&フィードバックを繰り返す必要があります。
5. 自尊心の強い従業員への対応
インドの従業員は、良くも悪くも自尊心が強く、自己評価が高い傾向があります。そのため、彼らの期待に応えるためにも、明確な指示出しと、成果に対する適切な評価・フィードバックは極めて重要です。また、「褒める」と「叱る」の黄金比は「3:1(ロサダの法則)」と言われますが、褒めるのが苦手な日本人は、褒めすぎかなというぐらいに褒めてちょうど良いのではないかと感じます。
5. グローバルに挑むインド人材: 彼らの秘密の武器は?
近年、インド出身のリーダーたちが世界のトップ企業や政界でも注目されるようになりました。GoogleやMicrosoft、そして最近ではIT企業のみならずシャネルやスタバ、イギリスの首相職と、インド出身のトップ人材が多岐にわたって活躍しています。そういったインド人たちが持つ独特の能力や資質には、どのようなものがあるのでしょうか?
1. インターパーソナルスキルの高さ
多様な文化や宗教、カースト、格差が混在するインド社会で生きてきた多くのインド人は、対人能力や異なる個人とのコミュニケーションスキルを磨くことが半強制的に求められてきたのではないかと思います。慶應義塾大学環境情報学部教授である安宅和人氏も指摘しているように、AIの発達にともなって、他者とうまく関わる能力、すなわち「インターパーソナルスキル」が今後ますます重要になってくると考えます。
2. アクティブな意見発信
インドの教育や職場環境は、意見を積極的に発信する文化が根付いてるように思います。グループワークやブレインストーミングの際、インド人は自分の考えや意見を恐れずに発信します。この自発的な参加意欲や意見の発信力・オープンネスは、グローバルな場でのビジネス展開においても大きなアドバンテージだと思います。
3. 英語スキルの高さ
言わずと知れたインド人の強みですが、一定の所得層以上の家庭に生まれたインド人の多くは、幼少期から学校教育で英語を学びます。そのため、英語を流暢に話すインド人は少なくありません。まくしたてるように話すインド英語が聞き取りにくいと言う日本人もいますが、大丈夫です。すぐに慣れます。むしろ、何度も何度もしつこく分からないと言っても嫌な顔ひとつせず伝えようとしてくれるのもインド人です。
4. グローバルな事業展開への適応性
インド企業やインド人材は、欧米諸国との繋がりだけでなく、アフリカや中東など新興市場への進出を積極的に進めています。世界中にフットプリントを持つインド人の人的ネットワークやフットワーク軽くかつスピード感のある行動力は、日本企業が異なる文化や市場に適応する上での大きな武器となります。
6. インドビジネスの礼儀正しさ: あなたが知らない小さなルールとは?
日本とインド。これら2つの国は文化や習慣が大きく異なりますが、特にビジネスシーンでの礼儀やマナーは注目に値します。日本では応接室やタクシーでの上座・下座、名刺交換のマナーなど、独特のビジネスエチケットが存在します。しかし、インドのビジネスマナーは少し違うのです。
1. カジュアルでパーソナルな接触
インドのビジネスエチケットは日本と比べてカジュアルであり、パーソナルな関係性を重視します。ビジネスの話を始める前に、まずは一緒に食事を楽しむことや家族や食文化、お互いの交友関係に関する話題でお互いのことを知り、個人としての関係性を深めることが大切です。
2. 右手のエチケット
インドの伝統的な習慣として、右手を使って握手をしたり、物やお金を渡したりすることが礼儀とされています。左手を使うことは一般的には好ましくないとされているため、自身が左利きである場合には特に配慮が必要です。
3. ディワリギフトの文化
インドにはディワリギフトという贈り物の文化があり、これは日本のお歳暮・お中元に似た習慣と言えます。日本ではお中元は今の時代には合わない虚礼であるとして廃止を発表する企業も増えていますが、インドでは今もこのような贈り物を通じて、ビジネスパートナーとの関係を深める文化が残っています。
4. トップダウン社会とのコミュニケーション
インドはトップダウン型の社会であり、上下関係を重視します。しかしながら、だからこそ、それを感じさせないだけのトップのコミュニケーション能力やインターパーソナルスキル、人間的魅力が重要になっているように思います。仕事の際は威厳を持って指示を出す一方、オフの時は友達のようにフレンドリーに接することで従業員からの信頼が得られるのではと考えています。
5. 感情的にならないこと
インドのビジネスシーンでは、トラブルや遅延は日常茶飯事とも言えます。しかし、そのような状況でも感情的になることは避けるべきです。度量の大きいトップとしての威厳を持ち、冷静に問題を解決する姿勢が求められます。この点、インドで仕事をしていると日本人である私はついイライラしてしまうのですが、ある種自分の器・度量を試されているような感覚になります。
7. インドの採用風景: 他とは一味違う採用のカギとは?
採用のフィールドにおけるインドの特色は他の国と大きく異なります。一見魅力的なレジュメを持つ候補者も多いですが、その背後に隠れる現実と企業側の取り組むべきポイントについて考察していきます。
1. 高い内定辞退率の背後には…
インドの採用市場は候補者側に有利な状況が目立ちます。面接には気軽に参加するものの、内定後に入社直前で辞退するケースが多いのです。日本企業の知名度は必ずしも高くなく、また、内定を獲得した後も入社直前まで引き続きより良い条件の企業を探し続けるのが一般的です。この挑戦を克服するためには、内定後であっても企業自体の魅力をしっかりとアピールし続けると同時に、入社するまでにランチ会をアレンジしたり、個人的な関係性を継続的に築いておく必要があります。
2. 企業の魅力を言語化
インドの優秀な人材に興味を持ってもらうためには、会社の魅力をしっかりと言語化することが重要です。自社がどういったビジョンを持っているのか、成長のマイルストーンや職場環境、インド人にとっての魅力的なキャリアプランなど、具体的に伝えられるポイントを明確にしておくことが大切です。例えば、米国企業に就職したインド人が多くの企業でそのトップや経営メンバーになるケースは多いですが、この“アメリカンドリーム”のように、我々日本企業もどのような“ジャパンドリーム”を候補者に示すことができるか、その可能性も含めて言語化しておく必要があると思います。
3. レジュメの背後を見抜く
インド人材の採用において、レジュメだけを信じるのはリスキーです。候補者がどのようなチーム構成で働いていたのか、レジュメに記載されている業務のうち具体的にどの部分を担当していたのか。現場の作業レベルに落とし込んで、可能な限り具体的な質問をぶつけ、担当していた業務の理解度が本物かどうかをしっかりと確認することで、候補者がどのような役割を果たしていたのか、またその実績が本当に個人のものなのかどうかを確認することができます。職務内容によっては、その場で実務テストをさせたり、事前にLinkedinなどのSNSを調べたり、外部業者を使ったバックグラウンドチェックを実施することで、本人の発言との整合性を取っていくことも有効です。
8. インド人材の海外挑戦: 何が彼らの強みで、何が課題?
インド人材が世界で活躍をしている現在、彼らの強みと課題について考えることはグローバルでビジネスを行う上で欠かせません。インド人材の海外赴任は、多くのメリットとともに一定の課題もあります。本記事ではその要点を詳しく検討していきます。
1.海外赴任をするインド人材の強み
文化的背景: インドの商習慣や文化的背景を理解することで、特に中東やアフリカにおいて、インド系企業・印僑との関係構築が容易になります。
英語のスキル: ホワイトカラー職種の多くは英語をネイティブレベルで話すことができ、欧米諸国だけでなく世界中のビジネスパーソンと臆することなく対等に議論ができます。これはグローバルなビジネス現場において大きな強みです。
優秀な人材の絶対数: 人材の層が厚く、特定の国・文化・ニッチな領域に強い興味を持つインド人材の絶対数も他国よりも比較的に多いため、自社が期待する優秀な人材をリーズナブルな価格で発掘することができる可能性が高いことも大きな魅力です。例えば、肌感覚として日本で働きたいと思うインド人の割合%は少ないですが、絶対数で考えるとかなり多いはずです。
2. 海外赴任をするインド人材の課題
食事・言葉・家族との距離: 例えば、日本での生活は特に食事や言葉の面で大きなストレスを感じることが多いと思います。また、家族と離れることに対する負担も考えられます。私の知り合いで、厳格な菜食主義で知られるジャイナ教徒のインド人は、日本に移住したとき食べるものがなく(毎日白米と野菜を塩につけて食べていました)、日本語も話せず、かなり苦労をしていました。彼の場合は肉・魚含めて日本食を食べるようになり、日本語も習得したので課題を乗り越えられたようです。今ではすっかり日本の生活に馴染み、なか卯の親子丼が大好物です(笑)
文化的制約: 多様でオープンな関係性が当たり前のインド人にとって、特に日本の商習慣や企業文化、忖度を求められるクローズな関係性はとても特殊で、ときには窮屈に感じられると思います。
高い昇給率を求める若者: インドでは毎年の昇給率(10%前後)や、転職時の昇給率(20〜30%程度)が比較的に高いため、その期待値を前提に人事部門が適切にコミュニケーションを取り、キャリアプランや人事評価制度が設計されていない場合には、早期離職の原因になると考えられます。
3. 日本企業が取るべきアプローチ
駐在員モデル: 日本企業が自社の社員を海外赴任させる際に一般的な駐在員モデル。優秀なインド人材の海外赴任を成功させるためには、彼らにも同じような仕組みが必要です。海外赴任中も家族に安定した社会保障を提供できる仕組みや、家族帯同を認める仕組み、また、インドに帰国した際にも引き続きリモートで勤務してもらえるような仕組み、つまり、インドに現地法人を持たない企業はEORを活用して、駐在員モデルを設計することも一案です。
キャリアステップの提供: 日本企業側がインド人材にとっての魅力的なキャリアパスをしっかりと設計し、中長期的に、インドに帰国をすることになったとしても、日本での勤務を継続したとしても、彼らにとって魅力のあるキャリアステップを提供することが必要です。
福利厚生の充実: 優秀なインド人材の定着を促すためには、福利厚生も重要です。特に、結婚をして家族を持ち始める20代後半からは、給与だけでなく、福利厚生の充実や、中長期的に安定した職場環境(ジョブセキュリティ)やキャリアステップの選択肢を充実させることも大切になります。
9. リモートワークとインド人: 彼らの適応力は高い?
近年、多くの国々でリモートワークが一般的となりつつあります。アメリカのIT業界では、リモートワークが標準になりつつあるという報道も目にします。しかし、インドという多様な文化と家族の強い絆が根付く国において、このトレンドはどのように受け入れられているのでしょうか。
1. 家族との結びつきの影響
インドの家族文化は強い絆で結ばれており、家族の健康状態や家庭の状況は個人の職業に大きな影響を与えることが多いと感じます。従業員が家族の病気やその他の個人的な事情で突然仕事を休んだり、辞めたりするケースは少なくありません。しかし、リモートワーク制度を積極的に導入することで、家族との時間を確保したり、種々の困難に対応しやすくなるため、従業員の定着率を高める大きな要因になり得ると感じています。
2. リモートワークの課題と適応
確かに、インド人はリモートワークに対する適応力や活用力が高いと言えます。しかし、副業を隠れて行ったり(Moonlighting:月の光が出ている間に小遣い稼ぎ)、同時に複数の企業でフルタイムの仕事をしているケースも確認されており、リモートワークを過度に悪用するケースもあるようです。最低限のルールの明確化や成果ベースの評価が必要となるでしょう。リモートだからこそ、トップやマネージャークラスの精緻なレビュー&フィードバックが今まで以上に重要と感じます。
3. オフィス文化とリモートワーク
インド人にとって、オフィスは単なる仕事場所以上のものとして認識され始めているようです。つまり、同僚とワイワイ楽しみながら仕事をしたり、ランチを一緒に食べたりすることで、仕事上の連携において土台となる“関係性”を深める場としてオフィス文化が重要になるのです。弊社でも、リモートワークを推進したことによって従業員間の関係性や連携が希薄になったと感じたため、毎週の出社日数を週2日から週3日に増やし、かつ、毎週水曜日を全員出社日に変更しました。この変更に対しては、意外にも社内からは多くの前向きなフィードバックが寄せられたのは嬉しい驚きでした。
さいごに
皆さん、いかがでしたでしょうか?私の限定的な経験にもとづく偏見ばかりの内容だったかもしれませんが、「インド人ってどんな人?」について9つの質問からいろいろと考察をしてみました。皆さんが持たれていたインド人のイメージともし違っていた部分があれば、ぜひぜひ教えていただきたいです。インドでビジネスをするには、まずは相手を知ることから。顧客としてのインド人、従業員としてのインド人、ビジネスパートナーとしてのインド人、いろいろな関わり方があるとは思いますが、この記事が皆さんの参考になれば嬉しく思います。
執筆者紹介About the writter
京都工芸繊維大学工芸学部卒業。米国公認会計士。税理士法人において中小企業の税務顧問として会計・税務・社会保険等アドバイザリーに約4年半従事、米国ナスダック上場企業において国際税務やERPシステムを活用した経理部門シェアード・サービス導入プロジェクトを約3年経験後、30歳を機に海外勤務を志し、2012年から南インドのチェンナイに移住。2014年10月に会計士仲間とともに当社を共同設立。これまで200社超の在印日系企業や新規進出企業向けに市場調査から会社設立支援、会計・税務・人事労務・法務にかかるバックオフィスアウトソーシングおよびアドバイザリー業務を提供。また、インド人材のリモート活用にかかる方法論および安心・安全なスキームの導入支援を積極的に行っている。