Indian Personnel & Labour

人事労務

B : 日本人駐在員がインド赴任前に知っておくべきインドの基礎情報と雇用について

 

【インド人の一般的な特徴と価値観についての考察】

 

“インド人”と言っても、日本の約9倍の広さの国土に13億人を超える人口が住み、多宗教かつ多言語、所得格差のあるインドにおいて、インド人をひとことで語るのは簡単ではありません。まさに「多様性」の象徴とも言えるのがインドという国であり、そんな多様性を当たり前のように受け入れることができるのがインド人の特徴とも言えるかもしれません。さて、ここでは私が知っている南インドのインド人を中心に、仕事の観点から、インドに進出する日系企業や日本人起業家が知っておくべき主なインド人の特徴と価値観3点について考察を述べてみたいと思います。

 

1. 柔軟な行動力

まず、私が最初にお伝えしたいインド人の特徴は、前向きかつ柔軟な行動力に長けていることです。人によってそのスピード感にはかなり個人差がありますが、いずれにしても追い込まれたときの行動力は爆発的なパワーを発揮します。仮に仕事でミスをしたとしても、気負いすることなくリカバリーすることに全力を注ぐことができ、急場しのぎに“なんとか”します。裏を返すと、追い込まれなければ、、、という話もあり、なぜミスが起こってしまったのかの反省や改善策をあまり考えない傾向にあるので“計画性が無い”という一面もあるように思います。なお、インドには古くから伝わる「Jugaad(ジュガード)精神」というものがあります。Wikipediaによると「独創的な方法による間に合わせ」や「ハック」などと説明がされ、昨今アメリカでは経営技術のひとつとして書籍も出版されていますが、インフラの未整備や貧困、カースト制度など、今もなお社会課題を多く抱えたインド社会の中で、臨機応変に生き延びてきたインド人の知恵や創造性のことを指し、インド人をマネジメントする経営者として理解をしておく必要があります。なお、インド人の計画性の無さへの考察については、私のインドブログ「INDIA GO!」の過去記事「「トゥーミニッツ」の裏にある引き算の発想の欠如」をぜひご覧ください。

「トゥーミニッツ」の裏にある引き算の発想の欠如

 

2. 上司への忠誠心

次に、仕事をしていてよく感じるのが、日本以上に職場における上下関係に対する意識が強いことです。社会に根深く残る階級社会の中で育ってきたインド人だからこそ、会社の中での階級も尊重するのだと思いますが、良くも悪くも上司が言うことは“絶対”とみなされる傾向にあります。社長や上司が部下に対して的確に指示を出し、正しく伝わっているかどうかを確認し、定期的に進捗状況をフォローアップしていけば、業務をスムーズに進めることができます。しかしながら、うっかり指示を忘れていたとしても、部下が自ら率先して業務を実行してくれることを期待してはいけません。また、うっかり間違った指示を出してしまってもそれに対して疑問を抱かずにそのまま作業を進めてしまうことがあります。なお、業務が遅れていたり、ミスが発生してしまった場合には、どうすればこの問題を乗り越えられるかを一緒に考え、その上でまた的確な指示を出すことを優先する必要があります。逆に、感情的に怒ったり、ミスを一方的に責めたりすると、インド社会で本来経営者が持っているであろうと期待されている人間性や品格に疑念を与えてしまい、私がいちばん大切だと思う職場環境の安全性や安心が失われてしまうかもしれません。また同じミスが起こらないようにするためにどうすればいいかを部下と一緒に考え、むしろインド人の強みである柔軟かつスピーディーな行動力の力をお借りして、前向きに改善していくことに注力するのが得策だと思います。

 

3. 人間関係を構築する力

最後は、お互いを認め合いながら人間関係を大切に育めるインド人の人間的魅力です。私には南インドのインド人しかわかりませんが、弊社拠点があるチェンナイやバンガロール、ハイデラバードでこれまで付き合ったインド人は基本的に温厚で優しく、会社の同僚とも家族のようにウェットな関係を築きます。会社のロゴ入りTシャツも喜んで着てくれ、愛社精神も感じます。インド独特の世間体を気にする文化を感じることはありますが、冒頭で述べたように、多様性を当たり前のように受け入れることができる懐の大きさと、他人のわがままを許す代わりに、自分もわがままに生きることの居心地の良さをみんなが共有しているという点で、彼らの人間関係はとても健全に感じます。一方で、上述のとおり会社では上下関係に対する意識が強いため、社長や上司が同じ目線まで降りて部下と一緒に対等に話ができる場を意識的につくっていくことは大切で、例えば、従業員の誕生日会や新入社員歓迎会、社員旅行、ランチ会、勤続表彰など、従業員と一緒にインド料理を食べながら雑談ができる機会をつくると喜ばれます。これからのウィズコロナ時代で、どのようにして社員旅行や誕生日会に代わるイベントを会社が企画できるかも大切になってくるように感じます。

 

以上3点、南インドで出会ったインド人の特徴について述べました。デリーやグルガオン、ムンバイに住むインド人はまたかなり違った特徴を持っていますが、ここで述べた特徴はインド人として共有できる部分が多いはずです。ぜひインド赴任前にこれから付き合っていくインド人とどのように信頼関係を構築していくべきをイメージするための一助となれば嬉しく思います。

 

【インド人の採用および雇用契約を締結する時に注意すべきポイント】

 

ここからはインド人の採用および雇用契約を締結する時に注意すべきポイントについてご紹介したいと思います。採用方法としては、主に(1)人材紹介会社からの紹介、(2)求人・求職サイトNaukri.comなどの活用、(3)友人・知人からのリファラル採用、などが主な選択肢になりますが、書類選考後の面接のアレンジをしても実際に面接に来ないケースや、内定を出したにもかかわらず入社せずそのまま連絡が取れない、ということも起こり得るため、十分に余裕をもった採用スケジュールを組んでおくと同時に、候補者プールを2〜3名確保しながら採用活動を進めていくことが重要です。また、人事担当者を通じて継続的にフォローアップができる体制を取れない場合には、必ず人材紹介会社を通じて採用活動を行なった方がいいように思います。

なお、採用プロセスの中でインド転職市場の前提としていくつか知っておくべき情報を以下にご紹介します。また、雇用後に思っていたようなパフォーマンスが得られなかった場合には、試用期間中に雇用を継続すべきかをどうかを判断する必要がありますが、一般的には3ヶ月から半年程度の試用期間(Probation Period)を設定します。

 ■ 2〜3年で転職するのが当たり前(ジョブポッピング市場)

 ■ 転職時に前職の給与の最低でも20〜30%Upが通例

 ■ 雄弁で自信家が多めだがメールやレポートが書けない傾向あり

 ■ 退職までの通知期間は1〜3ヶ月(高ポジションは長い傾向)

 ■ 内定を出しても現職からの給与Upで引き留めによる辞退のケースあり

 ■ 経歴詐称は多い(オファーレターには詐称が発覚した場合の取消や解雇を明記)

 

具体的なインド人との面接時の対応方法や、オファーレターによる内定通知から雇用契約の手続き、また、退職や解雇する場合の手続きについては、以下リンク先をご覧ください。また、州ごとの労働法に基づき、会社の規模や事業形態に応じて企業が整備すべき就業規則や各種規定、労務コンプライアンスが規定されているため、それらについても以下のリンク先の記事をご覧いただければと思います。

B-11 : インド人の英語と面接時のエピソード集

B-12. (執筆中)インド人の雇用契約と雇用後の各種手続きについて

B-13. (執筆中)インド人の退職および解雇手続きについて

B-14. (執筆中)インドの労働関連法規で理解しておくべきポイント(タミルナドウ州、カルナタカ州、テランガナ州の事例)

 

【日本人駐在員がインドに赴任する際に確認しておくべきポイント】

 

日本人がインドに駐在する際には、駐在員ご本人のビザの取得、赴任後のFRRO(Foreigner Regional Registration Office)における外国人登録、税務番号PANの取得や個人の銀行口座開設、アパートの賃貸契約など、やらなければならないことがたくさんあります。赴任をしてから生活が落ち着くまでに最低1〜2ヶ月はかかると見込んでおいた方がいいでしょう。なお、ビザについては、駐在員として赴任する場合には雇用ビザ(Employment Visa)を取得することになりますが、帯同するご家族は帯同ビザ(Dependent Visa)を、その他に出張者や投資家、起業家などはビジネスビザ(Business Visa)など、渡航目的に合わせて適切なビザを取得することになります。外国人登録についてはインド入国後14日以内に実施する必要がありますが、2017年度にe-FRROが導入されて手続きが電子化されたことに伴い、FRRO当局の事務所までわざわざ出向く必要がなくなったため、従来よりも手続きが楽になりました。外国人向けアパートの詳細に関しては以下リンク先の記事をご覧ください。

C-17 : 外国人向けの住宅・アパートの特徴と賃貸契約時に気を付けるべきポイント

 

また、日本人駐在員がインド法人に出向するにあたり、日本本社の人事部門は(1)駐在員の給与支払スキームおよび個人所得税の納税スキームをどうするか、また、(2)日印両国における社会保険について、保険料が二重払いとならないよう日印社会保障協定に基づき、インド側の社会保険制度への加入を免除とするための手続き、を理解しておく必要があります。なお、給与の支払スキームおよび納税スキームについては、源泉徴収課税および代理人PE課税の観点から、駐在員の給与をインド法人が全額負担するのかどうか、そして、どのように所得税をインド政府に納税するかを決定する必要があり検討すべき事項が多くあるため、より詳しい情報については以下リンク先の記事をご覧ください。

B-15. (執筆中)日本人駐在員の給与支払スキームの検討と整備すべき書類

B-16. (執筆中)日印社会保障協定の押さえておくべきポイント

人事労務

B-11 : インド人の英語と面接時のエピソード集

(執筆中)インド人の雇用手続きおよび給与明細について

(執筆中)インド労働関連法規の基本的理解と各種コンプライアンス(タミルナドウ州、カルナタカ州、テランガナ州の事例)

(執筆中)インド人の退職および解雇の手続き

(執筆中)インドに赴任する日本人駐在員の給与支払スキームの検討と整備すべき書類

(執筆中)日印社会保障協定について理解しておくべきポイント