A-9. インドLLPの設立後のコンプライアンスについて
(文責:木内達哉 / Global Japan AAP Consulting Pvt. Ltd.)
本記事では、有限責任事業組合(LLP:Limited Liability Partnership)の設立後に必要となる手続きをご紹介します。株式会社はCompanies Act, 2013に基づくコンプライアンスが必要となるのに対し、LLPはLimited Liability Partnership Act, 2008に基づくコンプライアンスが必要となります。LLPの手続きは、株式会社と比べると大幅に緩和されています。
設立後に必要な手続き
LLP設立後には下記の手続きが必要になります。
- 出資金の送金証明書(FIRC : Foreign Inward Remittance Certificate)の入手
- 資本割当に関するRBIへの報告(FCGPR)
- 物品サービス税(GST:Goods and Service Tax)の登録
- 輸出入コード(IEC : Import Export Code)の取得
- プロフェッショナル税(PT : Professional Tax)の登録
- 創業費用(Preliminary Expense)の精算
上記の各手続きは株式会社と同じになります(※詳細は「A-2.インド現地法人の設立後のコンプライアンスについて」をご参照ください。)
年次手続き
LLPは最低2名の指定社員(Designated Partner)によって設立されます。LLPは株式会社と異なり、所有と経営の分離がなく、パートナーが出資して所有権を持ち、自ら経営するため、有限責任でありながら株式会社ほどの厳しいコンプライアンスは求められません。
具体的には、株式会社のように定時株主総会や取締役会は必要ありません。しかしながら、下記の通り登記や税務申告が必要となります。
必要な申告 | フォーム名 | 提出期限 | 株式会社の場合 |
RBI Filing | FLA Return | 翌年度7月15日 | FLA Return |
ROCへの財務報告 | Form 8 | 翌年度10月30日 | Form AOC-4 |
ROCへの活動報告 | Form 11 | 翌年度5月30日 | Form MGT-7 |
税務申告 | Form ITR-5 | ※下記参照 | Form ITR-6 |
※LLPの税務申告期限について
LLPは、売上額が年間400万ルピーを超えた場合に勅許会計士による監査が必要となります。監査の有無、および移転価格税制の対象となる取引の有無により、LLPの税務申告期限は下記の通り異なります。
ケース | 申告期限 |
1. 監査が不要の場合 | 翌年度7月31日 |
2. 監査が必要で、かつ移転価格対象取引がない場合 | 翌年度9月30日 |
3. 監査が必要で、かつ移転価格対象取引がある場合 | 翌年度11月30日 |
移転価格取引が発生した場合、株式会社と同様にForm 3ECBなどの移転価格文書が必要となります。
執筆者紹介About the writter
木内 達哉 | Tatsuya Kiuchi
東京大学経済学部卒。IT業界での営業職を経て、経営企画室にて予算管理や内部統制整備、法務コンプライアンス業務、また、財務経理部にて海外子会社の経理業務などを含む幅広い経営管理業務に約10年従事。2018年より南インドに移住し、インド会計・税務コンサルタントとして日系企業のインド進出を支援している。2022年7月に退職。
東京大学経済学部卒。IT業界での営業職を経て、経営企画室にて予算管理や内部統制整備、法務コンプライアンス業務、また、財務経理部にて海外子会社の経理業務などを含む幅広い経営管理業務に約10年従事。2018年より南インドに移住し、インド会計・税務コンサルタントとして日系企業のインド進出を支援している。2022年7月に退職。