Entry Into India

インド基礎概論

A-4. インド駐在員事務所・支店の設立条件・要件および設立前に確認すべき事項

(文責:安本理恵 / Global Japan AAP Consulting Pvt. Ltd.)

駐在員事務所の概要

駐在員事務所の主な役割は、インド市場における本社の代表事務所として機能することで、認められている活動範囲は下記に限られており、独立して商業活動をすることはできません。

駐在員事務所に認められている活動

  • インドにおける親会社・グループ会社の代理店業務
  • インドでの輸出入の促進
  • 親会社・グループ会社とインド企業との技術・資金面での協業の推進
  • 親会社とインド企業とのコミュニケーション窓口としての活動

但し、法律事務所のインドでの駐在員事務所設立は認められていません。

したがって、インドでできる活動は市場調査、情報収集、親会社とその製品に関する情報提供などに限定され、原則、経費はすべて親会社からの送金で賄う必要があります。

当初は一般的に3年間に限り事務所設立の許可を受けることができ、3年毎に更新をすることができます。ただし、ノンバンク・ファイナンス・カンパニー(NBFC)や建設・開発分野の事業体の場合は、有効期間は2年であり、これらの分野(インフラ開発事業体を除く)については、延長は認められません。有効期間が満了した場合には、駐在員事務所を閉鎖するか、合弁会社・現地法人化しなければなりません。

支店の概要

本国で貿易やサービス提供事業を行っている外国法人のみが、インドでのビジネス拡大を目的にインドに支店を開設することができます。支店には親会社が従事する下記の活動が認められていますが通常は製造、小売りに関連する活動は認められていません。

支店に認められている活動

  • 商品の輸出入
  • 専門的なサービスまたはコンサルタント業務の提供
  • 親会社が従事している研究業務の遂行
  • インド企業と親会社または海外グループ会社との間の技術的または財政的な協力関係の促進
  • インドでの親会社の代理店業務及びインドでの購買・販売代理店業務
  • インドにおける情報技術サービスの提供およびソフトウェア開発
  • 親会社・グループ会社が提供する製品の技術サポート業務
  • 外資系航空会社・運送会社の代理店業務

また、インドで行った活動によって得た利益は、インド政府への納税を条件に、親会社へ送金することができます。

駐在員事務所および支店の設立条件・要件

1.事業内容

1999年外国為替管理法(FEMA:Foreign Exchange Management Act)により、外国法人の主要な事業が100%自動認可ルート(Automatic Route)での外国直接投資(FDI)が認められる内容である場合には承認取引者カテゴリー1銀行(AD Category-1 Bank)が設立申請の事前承認をすることができます。事業内容が100%自動認可ルートで認められていない分野に該当する場合には、インド準備銀行(RBI: Reserved Bank of India)の事前承認が必要となります。

以下の場合は、RBIの事前承認は必要ありません。

  • 銀行で、銀行規制法(Banking Regulation Act, 1949)の規定に基づく必要な承認を得ている場合。
  • 保険会社で、1999 年保険規制開発庁法の規定に基づく必要な承認を得ている場合。
  • 100%FDIが許可されている経済特区(SEZ)に支店を設置する場合。

以下の場合、RBIは承認をするうえでインド政府との協議が必要となります。

  • パキスタンで登録された外国企業が申請する場合。
  • バングラデシュ、スリランカ、アフガニスタン、イラン、中国、香港、マカオで登記された法人がジャンムー・カシミール州、北東地域(North Eastern Region)、アンダマン・ニコバル州にLO/BO/POを設立することを希望する場合。
  • 事業が防衛、電気通信、民間安全保障、情報・放送に属する場合。
  • 非政府組織(NGO、非営利組織(NPO)、外国政府の機関・省庁による申請。

2.財政の健全性

駐在員事務所

  • 外国法人が、本国で過去3年間に連続して利益を計上した実績を持っていること
  • 最低50,000米ドルの純資産を持っていること

支店

  • 外国法人が、本国で過去5年間に連続して利益を計上した実績を持っていること
  • 最低100,000米ドルの純資産を持っていること

ただし、外国法人が上記の財務条件を満たしていなくても、その法人の親会社が同条件を満たす場合には、そのような親会社からLetter of Comfort(LOC)を発行することで申請を認められる可能性があります。

執筆者紹介About the writter

安本 理恵 | Rie Yasumoto
2014年より北インドグルガオン拠点の現地日系企業で法務や総務、購買等を中心とした管理業務を経験後、インドの法務および労務分野の専門性を深めるべく2018年に当社に参画し、南インドチェンナイへ移住。現在は会社法を中心とした企業法務や、労働法に基づく人事労務関連アドバイス、インドの市場調査業務を担当。2023年3月に退職。

インド基礎概論

A-1 : インド現地法人の設立手続について

A-2. インド現地法人設立後のコンプライアンスについて

A-3. インドでのJV・合弁会社の設立時に注意すべきポイント

A-4. インド駐在員事務所・支店の設立条件・要件および設立前に確認すべき事項

A-5. インド駐在員事務所・支店の設立手続について

A-6. インドの支店・駐在員事務所 設立後のコンプライアンス

A-7. インドLLPの設立条件・要件および設立前に決定すべき事項

A-8. インドLLPの設立手続について

A-9. インドLLPの設立後のコンプライアンスについて

A-10. 日系企業のインド進出状況と今後の動向