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その他企業法務

G-36. インドにおける契約締結時の留意点

(文責:安本理恵 / Global Japan AAP Consulting Pvt. Ltd.)

インドで事業を行う上で、顧客や取引先、従業員、入居先等、様々な相手と様々な契約を結ぶことになります。

英語がビジネスの場で共通言語とされており、契約書は通常英語で作成します。インドが長らくイギリスの植民地であった事が影響してコモンローの法体系が採用されていますが、現状に合わないまま古い法がそのまま継続して使われている現象も暫しみられます。ここでは、一般的にインドで契約を結ぶときに留意したいポイントについてご紹介します。

契約を結ぶにあたって

合意が必要なことは不明瞭な点を残さず、すべて書面にするのが基本です。様々な状況を想定し、契約の目的や相手方に期待すること、またこちらの権利については全て出来る限り詳細に明記しましょう。

また、逆に「とりあえず言ってみる」精神で驚くような条件を提示してくる相手もいるかもしれませんが、感情的にならずに淡々と交渉しましょう。

当事者

例えば会社の場合従業員、パートナー、取引先等、契約にはどのような当事者が含まれるのか、または含まれないのかについて明記しましょう。

契約の解除・終了について

契約の解除方法・条件について、トラブルの元になりやすいため明確にしておきましょう。例えば、通達方法はEメール、クーリエ、送り先住所まで明記し、少なくとも契約違反があった場合において、一方的に解除ができるよう明記しておくのがおすすめです。

競業避止義務(non-compete)

競業避止義務を相手に課す場合、1872年インド契約法(The Indian Contract Act, 1872)を根拠に、契約期間の間は有効とされますが、契約が終了した後は基本的に無効とされます。

また、この点は商業契約だけでなく、雇用契約においても適用されますが、一般的に契約書上で競合避止義務を課すことは慣習として行われています。

損害賠償(Indemnity)

相手側に契約違反があった場合に金銭的な補償を受ける権利については、金額または金額の算出方法まで合意しておくことをおすすめします。逆に、損害賠償義務が課される側である場合は賠償金額上限の設定をしておきます。

但し、法的には、損害賠償を受ける権利が認められるには実際の損失を証明する必要がある点、また、契約書に明記して合意していたとしても、インド契約法により、基本的に契約違反による間接損害(Indirect damages)に対しての賠償は認められない点には注意が必要です。

紛争解決方法(Dispute resolution)

インドでは訴訟件数に対して裁判官が不足しているため、裁判になった場合かなり長い時間がかかることが通常で、20年以上続く裁判も存在します。訴訟にかかるコストを考えると、出来る限り避けたいところです。

日本企業とインド企業の契約では、インド法を準拠法とし、第三国のシンガポールを中立地として仲裁(Arbitration)を行う方法が双方に比較的受け入れられやすい選択肢として一般的です。

また、シンガポール国際仲裁センター(SIAC: Singapore International Arbitration Center)はインドに事務所を構えており、仲裁が行われているため、SIACを紛争解決の拠点として選択するケースも良くみられます。

SIAC India Representative Offices:https://www.siac.org.sg/about-us/about-us/siac-india-representative-offices

印紙(Stamp duty)

印紙が必要な場合、その額、またどちらが(または双方が)印紙代を負担するのかについて明記しておきましょう。

執筆者紹介About the writter

安本 理恵
安本 理恵 | Rie Yasumoto
2014年より北インドグルガオン拠点の現地日系企業で法務や総務、購買等を中心とした管理業務を経験後、インドの法務および労務分野の専門性を深めるべく2018年に当社に参画し、南インドチェンナイへ移住。現在は会社法を中心とした企業法務や、労働法に基づく人事労務関連アドバイス、インドの市場調査業務を担当。

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