F : 会社法およびカンパニーセクレタリー実務の概要
(文責:田中啓介 / Global Japan AAP Consulting Pvt. Ltd.)
【57年ぶりの大改正となった2013年インド新会社法】
2014年4月から施行されたインド新会社法(The Companies Act, 2013:以下「インド会社法」という)は、1956年施行の旧法から実に57年ぶりの大改正となりました。すべての企業に居住取締役の要件が追加されたことや、監査人ローテーション制度の導入、キャッシュフロー計算書の作成義務づけ、また、一定の条件を満たす企業にはCSR活動への拠出義務づけなど、さまざまな改正が行われましたが、この記事では現在のインド会社法の規定の中から日系企業が理解をしておくべき基本的な実務についてご紹介をしたいと思います。
日系企業や日本人起業家がインドに進出する際に採用されるもっとも一般的な進出形態は「非公開会社(Private Limited Company)」ですが、非公開会社の設立に際してインド会社法の観点から事前に理解をしておくべきことは、以下の通りです。
なお、インドへの進出形態に関しては以下リンク先の記事に詳しくご説明していますのでご覧ください。また、2020年2月6日付でインド企業省(MCA : Ministry of Corporate Affairs)が発表した改正により、新しい法人設立手続き用の電子フォーム(Form SPICe+(INC-32))が導入されました。従来の法人設立手続きに加えて、新しい電子フォームを使った設立プロセスについても以下リンク先の記事に詳しくご紹介をしておりますのでご覧ください。
[A]. インド進出の基礎と進出形態の概要
さて、設立時に作成する「定款(MOA:Memorandum of Association)」には、事業の目的や付随する事業活動、授権資本や当初出資株主などに関する情報が記載され、「付属定款(AOA:Articles of Association)」には当初取締役や取締役会の運営規定、年次株主総会や臨時株主総会の運営規定、株式の種類や議決権、配当、株式譲渡、清算などの手続きについて最低限必要な一般規定のみが明記されます。定款の1ページ目に記載された「事業の目的(The Objects)」に含まれていない新しいビジネスを始める場合や、授権資本を変更する場合には、定款MOAの変更が必要となり、そのためには株主総会を開催し、株主からの承認を得る必要があります。
なお、付属定款AOAに規定されていない手続きについては、原則、インド会社法の規定に則る、ということになりますが、ジョイントベンチャー/合弁会社などのケースにおいては、合弁パートナーと合意をした会社運営上のルール(例えば、投資計画や定款の変更、重要な契約の締結および解除などは株主全員の承認がなければ可決できない、など)をAOAの中に追加的に明記して運用するのが一般的です。