A-1-2. 非公開会社の株式等の有価証券の電子化について
2023年10月27日付のインド企業省発出の通達 (*1) によって、非公開会社(*2)に株式等の有価証券を電子化することが実質義務づけられました。対応期限は、2023年3月末の会計年度末日から18ヶ月以内(なお、会計年度末日が2023年3月末以降となる場合には、その会計年度末日から18ヶ月以内((*3))となり、ほとんどの既存企業は本年9月末までに対応が必要となります。
<当該通達の要約>
当該期限までに一部の適用対象外となる非公開会社(*2)を除いて、以下の対応が求められています。
- 当該期限以降は電子化された株式等の有価証券のみ発行すること
- 当該期限までに既に発行されている全ての株式等の有価証券の電子化を推進すること
また、適用対象となる非公開会社の株式を保有する株主に対しては、当該期限までに保有済みの株券が電子化されていない場合には、以下の影響があります。
- 新株の引き受けができない
- 保有している株式の譲渡ができない
<大まかな手続きの流れ>
上記のとおり、非公開会社側で手続きが必要なものと株主側で手続きが必要なものに分かれます。所要期間については、非公開会社側の手続きには約2〜3ヶ月程度であり、株主側のDemat Accountの開設については、3〜4ヶ月程度の期間を要します。
非公開会社側の手続き:
- 付属定款の変更(必要に応じて)
- RTAの選任
- NSDL/CDSLへの登録
- ISINの取得
- 会社登記局への登記(PAS-6:年2回)
*上述の手続きを進めるために取締役会決議が必要となります。また、1の付属定款の変更を行う場合には、株主総会決議も必要となります。
株主側の手続き:
- PANの取得(必要に応じて)
- DPでのDemat Accountの開設
- 保有している株券の電子化請求
*Demat Accountの開設には株主のPANが必要な場合があります。また、法人が株主の場合には、当該法人でのDemat Account開設を承認する旨の取締役会決議抜粋等が必要となる場合がございます。
– 用語集 –
・RTA( Registrar and Transfer Agent ) = 株式等の管理サービスを行うSEBI(インド証券取引委員会)登録業者
・NSDL (National Securities Depository Limited)/CDSL(Central Depository Services Limited) = インドの証券保管所
・ISIN(International Securities Identification Number)= 証券識別コード
・Demat Account = 株式の保有や各種取引を行うために必要な口座
・DP(Depositary Participant) = Demat Accountを扱う銀行や証券会社等の機関(RTAがDPのライセンスを持つ場合もある)
・ISIN(International Securities Identification Number)= 証券識別コード
– 注記 –
*1 インド企業省からの通達はこちらをご参照ください。
*2 政府系会社と小規模会社(払込済資本金が4000万ルピー以下または前事業年度の売上が4 億ルピー以下で持株会社・子会社に該当しない会社)は適用対象外となるが、日本企業の子会社であるインド現地法人は全て適用対象となる。
*3 新規設立企業については、最初の会計年度終了から18カ月以内と捉える見方もありますが、実態として新規設立企業のその他の登記業務にどのような影響が出るか不明瞭です。
執筆者紹介About the writter
学生時代に2015年~2018年の3年間、在ベンガルール日本国総領事館にて在外公館派遣員として勤務。その後、インド大手ITサービス企業の日本法人に入社し、製造実行システム導入の構想策定プロジェクトへの参画や提案活動に従事。インド進出日系企業の支援に関わりたいとの想いから、2022年に当社に参画し、再びベンガルールへ移住。現在は会社法を中心とした企業法務や労務、インド市場調査業務を担当。
インド基礎概論
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