Transaction Scheme & Cases

取引スキームや進出事例

H-48. インドの保税施設および保税制度について

(文責:田中啓介 / Global Japan AAP Consulting Pvt. Ltd.)

1.従来から一般的に利用されている優遇制度

基本的に、インドには外資企業を優遇する制度はありませんが、輸出を促進するための制度がいくつかあり、その中でも特に一般的なのが(1)経済特別区(SEZ : Special Economic Zone)(2)保税倉庫(FTWZ : Free Trade Warehouse Zone)、また、(3)輸出指向型企業(EOU : Export Oriented Units)などがあります。

1.経済特別区(SEZ : Special Economic Zone)

SEZはいわゆる「みなし外国地域」と呼ばれ、一定の条件を満たす企業に対し、最大15年間の法人税免税や輸入関税免税などの優遇制度を導入しています。

優遇対象となるのはSEZ開発企業もしくはSEZ入居企業となりますが、日系企業が一般的に利用するのは入居企業としての便益を享受することとなります。

従来は課税対象となっていた配当分配税が廃止されたり、最低代替税については課税対象となること、また、2020年4月1日以降に製造活動を開始する企業においては上述の免税措置が適用されない、など昨今ではSEZのメリットを享受できる企業が限定的になってきている印象があります。

2.保税倉庫(FTWZ : Free Trade Warehouse Zone)

FTWZも同様に「みなし外国地域」として認められるエリアで、一定の条件を満たす企業については輸入関税を保税したまま長期保管や検品、外装ラベル添付等の物流加工プロセスを行うことができます。

3.輸出指向型企業(EOU : Export Oriented Units)

EOUがSEZやFTWZと比べて大きく違うのは、EOUは特定の場所に制限されずインド国内どこでも設置することが可能な点、そして、認可条件およびステータスの維持条件がある点です。EOUとして認定された企業は保税倉庫としてのステータスが付与されるため、場所を問わず「みなし外国地域」となりますが、上述の2つの条件については注意が必要です。

つまり、(i)認可条件として、製造に必要な設備等に対して1000 万ルピー以上投資額が必要であり、標準都市圏より 25km 以上離れた場所において製造拠点を設立する(※拠点が工業団地内にある場合などは例外)などがあり、さらに、(ii)ステータス維持条件として、認可後3年以内に製造を開始し、かつ、製造後5年間の通算外貨取引純損益がプラスである必要があります。

2.新たに導入された民間製造保税施設

民間製造保税施設(PBF : Private Bonded Facility)は、1962年関税法第58条および第65条の規定をもとに、2019年10月に関税当局が公表した通達、および、2020年7月にインド間接税当局が発表した「よくある質問集(FAQs)」により、比較的最近になって制度が明らかになったものです。

具体的には「単一申請認可フォーム(single application cum approval form)」を通じて当局からライセンスを事前取得することで、原材料や資本財の輸入にかかる基本関税およびIGSTの課税を当該物品の出荷時まで繰り延べることができるものです。

この新しいスキームは、輸入原材料への依存度が高く多額の運転資金を必要とする製造業者や、輸出取引対するコミットメントが難しい企業、また、進出地域周辺にSEZやFTWZなどの「みなし外国地域」となる特区が存在しなかった企業にとって、輸入時の基本関税やIGSTの課税を、原則、無期限に繰り延べることができるので、比較的利用しやすい優遇制度となっています。

なお、当該施設において保管された物品にかかる輸入関連書類一式、そして、全ての活動やオペレーションについて厳格に記録保管することが求められ、かつ、それらの物品が施設から拠出されてから最低5年間保存しておくことが求められます。また、通常の税務申告とは別に、毎月翌月10日までにForm Bによる月次申告を実施する必要があります。

もっとも、SEZやFTWZのように法人税や関税が免税されるものではなく、また、PBFにおいて製造や何らかのオペレーションが実施されない場合においては、90日を超えて保管をすると15%の利息支払義務が発生する点には注意が必要です。

取引スキームや進出事例

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H-45 : フランチャイズ契約による小売取引(セブンイレブンの進出事例)

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H-48. インドの保税施設および保税制度について